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商品説明
外科医・三木達志は医療ミスを告白し、患者の遺族にみずから賠償金支払いを申し出た。これに究極の誠意を感じたライター・菊川綾乃は取材に乗り出すが、「あれは殺人だった」との手紙が舞い込む。不倫、自殺、テレビでの医師を使った心理実験、墜落願望。現代人の闇をえがく医療ミステリー。【「BOOK」データベースの商品解説】
医療ミスを告白し、遺族に賠償金の支払いを申し出た外科医。この話に究極の誠意を感じた女性ライターは取材を始めるが、「あれは殺人だった」という手紙が舞い込む。不倫、自殺、墜落願望…。現代人の闇を描く医療ミステリー。〔「糾弾」(朝日文庫 2012年刊)に改題,加筆修正〕【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
久坂部 羊
- 略歴
- 〈久坂部羊〉1955年大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。小説家、医師。著書に「廃用身」「破裂」「無痛」など。
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紙の本
医療ミスとは。
2008/11/30 09:25
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jis - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今は医療の問題が喧しい。最近も世間を騒がせている、救急たらい回しから始まって、がん難民の問題、医師不足から起こる医療所閉鎖、看護士問題にいたるまで、問題山積という状況だ。特に医療ミスがますます増えているともきく。病気になった時に頼りになる、医師が医療ミスを起こし、さらに隠蔽するという事態が起こったとしたら。私たち専門知識が無い患者・家族はどう対処すればいいのか。政治や行政レベルの話でなく、一市民が現実に遭遇した場合を考えると、なんともやるせない感情を抱く。
この「まず石をなげよ」は、医療ミスの問題を取り上げている。小説の形をとっているが、ノンフィクションと言っても通用するほどの迫力だ。現場を知っているのみが語ることの出来る臨場感でぐいぐい引き付ける。医師と患者の関係はいかなるものか。良心的な医師が実は、内面に途方も無く矛盾を抱えていたり、ほとんど犯罪者に近い思考に囚われていたりする。患者にしても、利己的に医師と対峙するのみで、完治しないのは、医師の力量不足だと最初から懐疑の念を持っている者も多い。お互いが信頼でき、情報を共有してこそが、病魔に打ち勝つ縁となる筈が、現実はどうであろうか。
物語は、ライターの菊川綾乃を先導役として進行していく。ある医師が登場し、患者が登場する。そこに興味本位のテレビ製作者が話に加わってくる。場面設定には、特別な仕掛けは無い。医療現場における混乱と人間関係のどうしようもない角逐、矛盾が、物語が進行するに従って噴出してくる。それぞれの人物が医療ミスという現代のテーマに痛切にかかわっていく。
話の筋は読んでのお楽しみであり、最後の緊迫した場面も楽しめる。この作家の強みである医師であり、作家であるという二面性が医師、患者の心理を余すところなく描ききる。単なる医療現場の矛盾を痛烈に批判するものでなく、そこに働く人間たちの生の生態を知らせてくれる。簡単には、医療ミスはなくならないが、何処にその原因があるのか、われわれに垣間見させてくれる。
紙の本
医療問題に真摯に向き合った「医療ミステリー」ではなかった。たんなるサイコサスペンス。
2009/02/11 23:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「それは医療ミスなのか、それともひそかな殺人か。恐るべき実態をあばく。衝撃のミステリー」
と装丁帯にあった。
私たちは医療とかかわらずには生きていけないのだが、現実には医師不足、看護師不足、患者のたらい回し、救急医療の不備、劣悪な労働条件、病院の閉鎖、手の回らない地域医療などなど日々いろいろな心配事の種が尽きないのがこの世界である。その中でも直接生命にかかわる医療事故を隠蔽する行為は断じて許されない。ただ一方でモンスターペイシェントといわれるような理不尽な人たちに悩まされているのも医療現場であり、またマスコミのいい加減な報道に振り回されることも多く、感覚的にこの問題をとらえることは非常に危険なことだと思っている。
著者は医療ミスを三段階で説明している。第一はだれが見ても明らかなミスで患者にもわかる、弁解の余地のないもの。第二は患者にはわからないが医療関係者には明らかなミス。隠蔽されやすく、内部告発で表面化する。第三は周りの医療関係者にもわからずその医者本人だけが知っているミス。これは内部告発もされない。そういうものだそうだ。
「外科医・三木達志は(第三のケースである)医療ミスを告白し、患者の遺族にみずから賠償金の支払いを申し出た。これに究極の誠意を感じたライター・菊川綾乃は取材に乗り出すが『あれは殺人だった』との手紙が舞い込む。不倫、自殺、テレビでの医師を使った心理実験、墜落願望。現代人の闇を描く医療ミステリー」
あえて辛らつに言わせていただこう。小説をこれほど不愉快な思いで読んだことはなかった。
三木達也の行為とその真意はなんだったのかという謎を解くミステリーだと思うのだが、読んでいる人には最後までよくわからない。この医師の別れた妻の異常な行動、医師に罠を仕掛けて隠蔽体質を無理やり浮かび上がらせようとするテレビのプロデューサーなどその過激な俗物ぶりが著者の見識というフィルターを通して描かれるのであれば、存在感があるのだが、どこかで著者はそういう狂気を是認しているところがあるため、何のために登場しているのかいっこうにわからない。あまりにもお粗末な筋立てである。医学界の隠蔽体質を告発する姿勢なのかと思えば、著者にその気はないようだ。無責任なマスコミの報道番組を批判するものでもない。
周辺の登場人物ならばまだしも三木達志という外科医自体の狂気も著者は是認しているところがある。あまりにも異様な存在であるから、医師に共通する性向をとりあげた医療ミステリーではなく、特殊な人間性にスポットをあてた質の悪いサイコサスペンスに近いものである。
医療問題を取り上げる場合にフィクションでもあり、どんな状況を描こうとかまわないが、どこかに生命の尊厳という視点とその現実に真摯に向きあう姿勢がなければならないだろう。そういう一本筋の通った矜持も持たず、ただ医者には怖い人がいるから気をつけようと叫んでいるだけでは、この作者は本当に現役の医者なのかしらと疑ってしまうのだ。