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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2008/11/28
  • 出版社: 文藝春秋
  • サイズ:20cm/450p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-16-327640-3

紙の本

悼む人

著者 天童 荒太 (著)

聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。七年の歳月を費やした著者の最高到達点!善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】【直木賞(...

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悼む人

税込 1,781 16pt

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商品説明

聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。七年の歳月を費やした著者の最高到達点!善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】

【直木賞(140(2008下半期))】全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼を巡り、夫を殺した女、人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる。聖者なのか、偽善者か? 「悼む人」は、誰なのか? 7年の歳月を費やした長編小説。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

天童 荒太

略歴
〈天童荒太〉1960年愛媛県生まれ。86年「白の家族」で野性時代新人賞、96年「家族狩り」で山本周五郎賞、2000年「永遠の仔」で日本推理作家協会賞を受賞。ほかの著書に「あふれた愛」など。

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書店員レビュー

ジュンク堂書店明石店

「その人は、誰を愛し...

ジュンク堂書店明石店さん

「その人は、誰を愛したか。誰に愛されたか。どんなことで人に感謝されたことがあったか」この想いを胸に人々の死を悼んで放浪する人物、静人を中心とした物語です。末期癌を患っている彼の母巡子等、他の登場人物のそれぞれの心の内の変容が、濃厚に描かれており、感動します。と、同時に人の死を軽重をつけることはどうなのだろうと静人を通じて考えさせられます。

みんなのレビュー447件

みんなの評価3.9

評価内訳

紙の本

覚えて、いて。

2009/01/06 11:04

20人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る

日々テレビやラジオや新聞が伝える、凄惨な事故や事件。加害者の名前は心に残る事もあるが、被害者の名前は余り記憶に残らない。さらには、被害者の凄惨な「死」は記憶に残っても、その人の「生」は心に留められない。亡くなった方にしてみれば、記憶して欲しいのは「死」だろうか。否、誰かを愛し誰かに愛され、誰かから感謝され誰かを感謝した、輝く「生」であるに違いない。その生を心に留める「悼むたび」を続けるのが本作品の主人公、坂築静人である。偽善の気持ちも企み無く、他人の死を心から悼めるのか。誰の為にでもなく何の利益も目的とせず、ただ純粋に故人を悼む者。静人はそういう旅を続ける青年である。非常に深く、興味深いテーマだ。

ではその静人の「悼み」を、故人を偲ぶ人々が必ずしも感謝し喜ぶかというと、そうでもない。というか、そうでは無い事の方が多いのだ。故人の何を知ってるのか。とって付けたような哀悼の意など、偽善にしか見えない。そんな行為をして何がしたいのか、誰が喜ぶのか。静人は、とかく遺族からは受け入れられない事の方が多い。では、静人の行為は無意味な事なのだろうか・・・。人の「命」は、いつか終わりを向かえる。しかしその人の「人生」は、続いていく。誰かの心にその人がある限り、その人の人生は続いていくのだ。人がこの世を去る時の一番の願い、それは「覚えていて欲しい」なのかもしれない。

作者の天童荒太さんは、この作品を書くのに7年かかったという。そしてその間に10冊もの創作ノートを作ったとの事。また一人一人のキャラクタを一から作りこんでいったそうだが、主人公の静人に至っては、自ら人が亡くなった現場を廻り、キャラクタを作り上げたのだとか。そして「静人日記」を作り、メディアで報道される故人の中から毎日一人選んで、その人を悼む日記を毎日書き続けた。本作品を書き終えた今でもその日記は書き続けているというから、この作品への深い深い思い入れを感じる。そしてそれが見事に、作品に表れていた。

人が全てを脱ぎ捨て去った後に残った姿を描かせたら、天童氏はやはりピカ一である。そこに残るものは決して美しくはない。ドロドロとヘドロが渦巻くような風景だったりもする。しかし不思議と、それが人間なんだろうと納得できてしまう。やはり凄まじい、筆致の持ち主である。本作品も読みながら、何か重たいものが体に埋め込まれたように感じる。しかしそれは決してこれまでの作品に感じたドロドロとしたものではなく、逆に清廉な何かを胸に詰め込まれたようである。この感覚は過去作品には無かったように思う。もしかしたら氏はこの作品で、新しい場所へと上がっていったのかもしれない。

しかし重い。1ページ1ページがあまりに重い。あらゆる者にとって喜びであり恐怖であり、全てである生死。それをテーマに書き上げた作品であるから、それも当たり前なのかもしれない。だから、あなたがいかな速読の達人だとされても、一言一句かみ締めるように踏みしめるように、読まれる事をお勧めしたい。そう、静人が続ける「悼む旅」の、その足取りのように

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紙の本

直木賞受賞作品。

2009/02/14 21:44

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る

直木賞受賞作品。

日本全国の見知らぬ死者を悼みながら旅する人を通して、人間が生きている証はどこにあるのかを考えさせる作品です。

本書では、生きている価値がないと思われる人や殺されて当然と思われる人も「悼み」の対象となります。

なぜか?

「悼む人」は、死んだ人が、「だれに愛され、だれを愛し、だれに感謝されたか」、そこにその人の生きた軌跡を見出します。

人の生き死にに軽重はない、と口では言いながら頭のどこかでそういう思いがあるのも事実。

大切なのは、その人が「生きていた」という事実と、死後も「覚えていてくれる」ということ。

決して、宗教家ではない「悼む人」ですが、実は宗教の根本、本質を語っているように思えます。

その人を覚えていく、という行為は、神とか仏とかの存在を見出す前の人間の根本的な欲求から産まれる自然な感情だと思いました。

日常生活に追われている現代人。

私も含めほとんどの人が、時間に追われています。

本書を読んで、ジャンルが全く違うけれども、社会思想家のドラッカー先生の言葉を思い出しました。

「なにをもって人に覚えられたいか?」

龍.

http://ameblo.jp/12484/

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紙の本

痛み悼まれ痛みを悼む。

2009/06/30 12:59

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

悼む人と呼ばれる男がいる。彼は訪れ得る限りの日本全国の地を旅して廻り、全国不特定多数の「亡くなった場所」を訪れ、個人の縁者に「彼(彼女)が誰を愛し、誰に愛され、どう感謝されたか」を縁者に尋ねて周るという。名前は坂筑静人。彼が訪れる先々ではときに感謝され、歓迎され、時に偽善者とののしられ、拒絶され、しかし彼はただただ静かに流れる川のごとく静かに淡々と死者の生きていた証を心に刻み悼む旅を続ける。
彼はなぜこのような旅を続けるのか? 彼をただ死者を悼むだけの無謀な旅に駆り立てたのはなんだったのか?

「悼む人」となった彼の生い立ちはしかし一般的だ。幼少期の愛する祖父の死もいつしか思い出として消化され普通に青春を過ごし就職をした。しかし普通の青春を謳歌し医療系の企業に勤め、仕事先のうちボランティア活動で小児病棟を受け持つうちに救えぬ命に消耗していく。同じ医療を目指す親友の死に衝撃を覚えつつも仕事に追われるうちその悲しみは薄れ行き、一周忌すら忘れてしまったという己の過失が引き金となっていよいよ彼は思いつめ、悼み旅する今に至る、らしい。
どれほど深くその人と関わろうと、どれだけ人から愛されようと、人は会わずにいれば疎遠になっていくし死んでしまえば自然と忘れ去ってしまう。命の価値は平等かもしれないが、だとしたらこの人を悼んだらあの人は悼まずにいてよいものか?どこまでその人を知れば悼みきることが出来るのか? その思いが家族を振り切ってまで彼を旅に出させた。
何年と旅を続けるうちに悼み続けるコツ・・・自分の中での線引きを獲得していった彼だが、仏の生まれ変わりとすら崇められていた男の悼み先で一人のワケアリな女性と出会う。彼女こそが彼に救われ愛し愛されていたと信じた妻であり、神仏の存在を否定する彼の狂気により夫殺しを強要された被害者であった。そして彼女の方には夫の首が付きまとうという・・・。

そもそも『悼む』とはどういう意味であろうか?辞書を引くと「いたむ(痛・傷)」と同源、人の死を悲しみ嘆く。と出てくる。
では悼むとは心の痛み、辛いこと、哀しい(悲しい)ことなのだろうか?

人間は生きている限り死が付き纏い、その可能性、程度の差はあれいつどこでどのように死ぬのか解らないひ弱な生き物だ。だから「私」は死にたくないともがき、愛する人に執着し、死なないで欲しいと切に願うのだが、死は非情なまでに必ず訪れ、いつしかその悲しみも記憶の中から徐々に消えていってしまう。
日々膨大な情報を新しく抱え込む記憶からは古いもの・薄いもの・遠いものから消えていき、日々新しい人々との出会いと別れを繰り返す私たちはそうすることでどうにか思いに折り合いをつけ、正気を保っていられるともいえる。
彼、悼む人が長く苦しい悼みの旅から学んでいったことはそうした「コツ」である。
死を恐れ続けていては「杞憂」その文字通り萎縮して一歩も外に出ることすらままならない。死と別れを悲しみ恐れ続けていては新たな出会いすら恐れてしまう。己に出来ることと出来ないこと、己に縁があるのか無いのか、どこまで関係できるのか出来ぬのか。

生きていくうえで私たちは常に選択を迫られ、その選択に必要なのは境界・つまり線引きである。どちらを選ぶこともできないとき、どちらも失いたくないとき、どこまで相手の中に入っていってよいのか迷うとき、
人は苦しみ悩み立ち止まる。立ち止まってどこにもいけなくなってしまう。

数々の死を悼み、経験を積み、そういった線引きを悟ってしまったかのような彼、「悼む人」ですら、衝撃的な事情をもつ殺人事件を女の中に見てやはり心を乱す。
人間がいつか死ぬという絶対的運命を抱えている限りその事実に折り合いをつけていかなくてはならない。人と出会いふれあい親交を深めれば深めるほど別れは悲しく、裏切りに身を裂かれることもある。
けれど、悼む人は教えてくれるだろう。
人がこだわりや執着に苦悩するということ、それは人が誰かを愛して止まない動物であるという証拠だということを。

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紙の本

自分で本屋大賞を決めよう 第6弾

2009/03/31 23:42

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:redhelink - この投稿者のレビュー一覧を見る

 幼少期の“死”との出合い、モラトリアム期間での“死”との対峙、そ

れが悼む人の構成要素。



 何らかの理由で亡くなった多数の人を、亡くなった経緯ではなく、生前に



 “誰に愛され”

 “誰を愛し”

 “人に感謝された”



のかを聞き、その人を胸にとどめることをしている悼む人。



 正直に言うと、最初は面白みのない作品だと思っていました。ありふれ

た展開が“予想”されたこともあったと思います。



 しかし、ある人物がガンになり、死と戦い、そして受け入れていく流れ

辺りから、ありふれた展開が意味を持ちました。



 人の死と向き合う。



 自分が一度しか経験できず、そして認識できない“死”。私たちの祖先

や時の権力者が畏れていた概念。このテーマに改めて向き合う時間を提供

してくれたこの作品に感謝。



 私は恵まれているか、親しい人や知人の死にそれほど出くわしていま

せん。でも、その少ない経験はやはり辛かったです。内臓にダメージが出

るほどに。



 皆さんはそんな辛い死をさまざまな方法で乗り越える、あるいは向き合

っていると思います。ここで描かれている悼む人も、そんなありふれた人

なのかもしれないと考えさせられました。誰にでもありうるのだと。



 また、ガンになった人の配偶者の心の描写には思わず泣いてしまいま

した。人を愛するという行為の究極とも言える心には、憧れとそのような

ことが自分にもできるのかという問いを生みました。



 私は自分を形成する糧として、この小説を消化し続けたいです。

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紙の本

大切な誰かを亡くした方は読んでみて下さい

2009/03/22 10:22

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yoriko - この投稿者のレビュー一覧を見る

直木賞受賞作。
普段、直木賞をあまりあてにしていない自分ですが、受賞してくれて本当に良かったと思った作品です。

死者を「悼む」旅を続ける坂築静人と、彼をとりまく人たちの物語。

この本に感動するかどうかは、坂築静人という人物をフィクションとしても認められるか否かではないかと思います。
聖者なのか、偽善者なのか。偽善者にしか思えない人はいると思います。
入り込めないという方のご意見もわかります。なので、万人に読んでくれとは言えない作品なのかもしれません。

読みながら、静人の周りにいる人と同じようにあなたはきっと思います。
「こんなことをして一体何になるんですか?」
当然の質問です。

ただ、もしあなたが大切な誰かを亡くしていて、それがとても心に重かったなら、この本を一度読んでみて下さい。

「誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたか」
ただこれだけの質問なのに、なぜこんなにも心を打つのか。
読んで頂いて、その答えをあなたの中に作っていただければと思います。

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紙の本

主人公は読者自身かも知れない。

2015/05/06 21:08

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ooparts2000 - この投稿者のレビュー一覧を見る

・・・蛇口の先端に溜まった水が一滴ずつ落ちてくるような響きで、寂しい、寂しい、と聞こえる。
 蒔野抗太郎(まきのこうたろう)は残忍な殺人や男女の愛憎がらみの事件の記事を得意とする雑誌記者である。ふてぶてしく無神経、
心はすさんでいる。しかしそんな彼の心の内を表すような情景ではないか。

 彼は事件を取材している時に「悼む人」と出会う。彼は死因には関心が無く、生前、誰を愛し誰に愛されたか。何かをして人に感謝されたか
を聞いてまわる。それを胸のうちに覚えておくことを悼むというのである。冥福を祈るのでは無いのだ。なんなんだこれは。

 私もそうだったが蒔野も激しく混乱してしまう。悼む人は悪人であれ善人であれ等しく悼む。そこには宗教臭さも偽善も無い。
ただ誰を愛したか、誰から愛されたか、人に感謝されたかの3点を胸の内に覚えておくのである。接する内に蒔野の心は次第に変化が現れ始める。
氷が融けるように。最終的にあれほど嫌っていた父が自分を深く愛していたことを知ることになる。

 奈義倖世(なぎゆきよ)は愛する夫を殺し出所したばかりに悼む人と出会う。彼女は罪の意識に悩んでいる。夫は世間から「生き仏様」と呼ばれる
ほどできた人なのに、夫も心に大きな闇を抱えていたのだ。
 夫は自分と世間への復讐のために、妻によって殺されるという手段を選ぶが、まだ未練があるのか死後も彼女の肩に現れ語りかけてくる。
 幻覚なのか幽霊なのかわからないまま話は進むが、彼の死の間際の言葉の本当の意味を悼む人から知らされたときに彼女も罪の意識から救われる。

 悼む人の母は末期ガン。治療はもう効果が期待できないため、残された人生を有意義に過ごしたいと考える。シングルマザーとなる決心をした娘。
生きているうちに孫と会えるのか。出て行ったきり悼む人となっている息子と会えるのか。不安と死の恐怖。その気持ちをしっかり支えるのは夫、娘、
甥などの家族の愛である。最後は力強いうぶ声を聞きつつ、帰ってきた息子の腕に抱かれ満足して死を受入れることができた。

 最後まで読んで、実は一番救われたのは自分だということに気が付いた。仕事上の不安。将来の収入への不安。健康の不安。そういったものに
押しつぶされそうになっていた。そうなのだ、この物語の主人公は悼む人では無い。読者自身なのだ。3人の人生を、誰を愛したか、誰に愛されたか、
何かをして感謝されたのかという3つのフィルターを通して追体験することによって、読者が癒されていく物語なのだ。

 良く書きすぎだろうか。悼むことは、亡くなった人を「ほかの人とは代えられない唯一の存在として」覚えておくことだという。「覚えていて下さい!」
息子を喪った母親の悲痛な叫びが耳に残る。覚えているだけでもある人にとっては「救い」なのだ。

 母親が訪ねて来た雑誌記者に言う言葉がある。肝心なのはどう生きるかより「人に何を残すか。」ではないかと。
歳のせいなのか胸にズシンと来る言葉だった。読み手によってさまざまな受け止め方があるかもしれない。でもこれだけは言える。

「覚えてて。」
「うん、覚えてる。」

ここに救いがある。

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紙の本

未完成部分ありかもだが、それでもいい作品です。

2009/06/26 23:51

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

悼(いた)む人 天童荒太 文藝春秋

 女子高校3年生の目前で、彼女の親友女子高生が刺殺されるという衝撃的な場面から始まっていますが、この本を読み終える頃には、その場面は記憶から消えています。そのことを忘れてしまうほど、多種多様な死の有様(ありさま)が連続して描かれていくからです。
 薪野抗太郎(まきの)という男性記者が主人公にからんでいきます。主人公は、坂築静人くんです。「千の風に」が、この作品を手がける発想になったのだろうか。人間の性質の病巣を探求する作品で、主人公である坂築くんは、魅力的です。わたしの心は、「エバーグリーン」豊島ミホ著で東北地方、「おくり人」百瀬しのぶ著で山形県、この「悼む人」で、北海道の函館市と移ってきました。
 坂築くんの母について、癌の記述が長く、内容も病気の説明と解説であり、医学書を読んでいるようで疲れました。
 坂築くんには、生活感がありません。妻もこどももいないからでしょう。彼は、「ビルマの竪琴」に登場してくる水島上等兵のようです。他者との関係を扱ったものとして最近「悩む力」カン・サンジュン著を読みました。悼む人では、死者との関係を考えます。亡くなった人たちの霊が坂築くんを生かしています。
 正式な婚姻関係がない状況で、こどもを出産しようとする女性が登場します。彼女は、自分のことしか考えていません。生まれてくるこどもが、出生後味わう数々の苦しみは、彼女の脳にはありません。こどもの心は、深く傷つくことでしょう。
 作者には新聞記者か雑誌記者の経歴があって、過去に扱った事件を素材にして、本作品を構築したと推測しました。そしてそれは、過去の自分が関係者に対して侵した罪への償いになっていると、わたしは極端に解釈しました。
 霊魂として登場する朔也氏の存在は、ないほうがいい。作者は、物語の後半で行き詰まっています。
 親が子を思うほど、子は親を思ってくれない。結末付近の記述には、共感できませんでした。最後に自分が死ぬ瞬間を想像しました。

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紙の本

普遍をめざそうとして。

2009/11/03 19:39

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:浸透圧 - この投稿者のレビュー一覧を見る

各章、主要人物の動きと視点から物語は多角的に進む。
共感のあまり涙する章もあれば、一気に興醒めする章もあり。

ネックは奈義倖世の章。倖世と朔也に共感できないため、
作品に対する緊張感は、この章でぷっつり切れる。
この章の設定も展開も胡散臭い。そして下世話感がつきまとう。
破天荒な薪野の章のほうが、殺伐としてなお品性すら感じる。

最後に坂築巡子の章。命は「巡る」と暗示したげな名前だが、
彼女の言動はむず痒くも、真に迫る箇所もある。

倖世と朔也の章だけが作り事めいて浮いている。
両人と展開のうすっぺらさには苛立ちを覚える。
そんな倖世に主人公の静人が心奪われる展開も無理がある。
読者にとって魅力のない女が主人公をとらえるだろうか。
倖世の章以外は感極まるシーンもあっただけに残念。

ドメスティックバイオレンスの関係に愛が存在するという
この作家の立ち位置もいただけない。執着は愛ではない。
倖世のセリフで、「執着を離す愛もあるのですね」までくると、
なぜそんな下世話なところへ向うのかと呼び戻したくなる。

演歌の世界。この作品は懸命に普遍的な歌をめざしながら、
根底に流れるのは演歌なのだ。
そのあたりがのりきれない要因か。

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紙の本

物語に入り込めなかった

2009/02/16 22:35

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

 命を落とした人々を悼むために全国放浪の旅を続ける坂築静人。ふとしたことから彼と行動を共にすることになった奈義倖世には、夫殺しで服役していた過去がある。さらには静人の行動に興味を持った雑誌記者の薪野抗太郎、そして静人の母で末期がんに冒されている巡子。これは彼らをめぐる物語。

 400頁を超えるこの直木賞受賞作を読み通しても、私には静人の行動に気もちが近づくことがありませんでした。
 彼が見知らぬ人を悼むための手がかりとするのは雑誌や新聞の記事。つまり彼が悼むのは、事件や事故で命を落とした見知らぬ人々ばかりです。だからこそ、病気によって今まさに命がついえる日を迎えようとする実母のように、報道されることのない身近な死から彼は遠いところにいます。
 病気で死ぬ人よりも事件事故で落命する人を選択していくという彼の行動指針をどう解釈すればよいのかが私には分からないのです。
 彼はドラマチックでスキャンダラスな死をえり好みして放浪を続けているという事実が私にはどうしても生理的に受けつけないのです。

 おそらく作者は、日々報道される死が数字や記号に落とし込まれている気がし、その多くの死者に「顔」や「肉体」をもった人間としての存在を感じてほしいと考えてこの物語を紡いだのではないでしょうか。その出発点は必ずしも間違ってはいないと私も思います。
 しかし、必要なのは見知らぬ死者を悼む行為をとることではなく、私たち市井の人びとがそうした数値化されてしまった報道上の死を痛ましいと思う健全な心を持つことではないでしょうか。静人の行動は「悼む」という外形はとっているには違いありませんが、彼がそれを「痛ましい」と内面で感じている様子が伝わってこないのです。そこに私は生理的な不快感をいだいてしまうのです。

 また静人の随伴者として登場する倖世が夫殺しに至る経緯もさっぱり理解できません。
 殺された夫・朔也の豹変ぶりが現実離れしている上に、倖世に憑依し続けるさまがあまりに人智を超えているとしかいいようがないのです。

 その一方で私の心に残ったのは、闘病する母・巡子の終末期医療の詳細ぶりです。
 50代という若さで死期を迎える巡子の心の内は強く読む者の胸に迫ってくるのです。それは彼女のような平凡な人物こそが、今の私にもっとも近い存在であり、感情移入が容易な対象であるからでしょう。

 ひょっとしたら巡子の、そして彼女の夫・鷹彦と、二人の娘=静人の妹である美汐、この3人の家族の物語だけで、人の心を揺さぶる物語が十分に構築できたのではないでしょうか。
 静人や倖世、そして抗太郎という存在はむしろ物語の夾雑物にすぎなかったのではないか。
 そんな思いが残った読後感でした。

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2008/12/04 04:31

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2008/12/23 22:38

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2008/12/25 09:45

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2009/04/16 19:58

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2009/01/06 20:42

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2008/12/30 22:16

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