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紙の本
世論調査と政治 数字はどこまで信用できるのか (講談社+α新書)
著者 吉田 貴文 (著)
支持率は本当に必要か? その真の役割とは? 世論調査大国において、われわれは政治とどう向き合うべきなのか? 世論調査の作られ方、使われ方、活かし方、読み方を解説し、その功...
世論調査と政治 数字はどこまで信用できるのか (講談社+α新書)
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商品説明
支持率は本当に必要か? その真の役割とは? 世論調査大国において、われわれは政治とどう向き合うべきなのか? 世論調査の作られ方、使われ方、活かし方、読み方を解説し、その功罪を検証する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
吉田 貴文
- 略歴
- 〈吉田貴文〉1962年兵庫県生まれ。朝日新聞社史編修センター員。98年以降、主に世論調査センターで調査の企画・実施・分析に従事する。著書に「政治を考えたいあなたへの80問」がある。
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紙の本
世論調査の数字と政治家
2009/03/16 00:12
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近は、統計や社会調査での数字がいかにいかがわしいか、といった類いの本が少なくない。「数字がどこまで信用できるのか」とサブタイトルが付されている本書も似たねらいかと思ったら、内閣支持率といった調査の数字と政治家と関係が主軸にあり、政治情勢の解説の本にもなっている。著書は、朝日新聞で世論調査にもかかわっていたというが、それ以上に番記者もつとめた政治記者でもあった経験がこれを支えている。
世論調査の方法の変化(面接調査からRDDへ)や、回収率の減少などといった現状についても、最低限おさえてはいるが、こうした点についてはもっとくわしい本があるだろう。むしろ、選挙時におこなわれる新聞社の選挙予測調査の舞台裏、といった話の方が内幕ものを見るようで興味深い。正直、「これほどまでに大規模なものなのか」と驚いた。
本書の核は、世論調査の中でも、マスコミ各社を中心に繰り返し行われる「内閣支持率」調査にある。その各社での「聞き方」の差異や、内閣ごとの支持率変化のパターンなど基本どころをおさえつつ、小泉内閣以後、歴代内閣が今まで以上に内閣支持率を気にするようになってきたことを指摘する。旧来の自民党政権では、派閥の力学で総理大臣が決まる側面が強かったわけだから、世論調査の支持率よりも、派閥の議員数が重要だったわけだ。それは今でも変わらないにせよ、一般有権者への高い人気を背景に成立した小泉政権以降、派閥自身も内閣支持率を重要視せざるをえなくなったのである。小選挙区の導入により、その数字が選挙と直結しやすくなったからである。本書で時折挿入される、政治家自身や関係者の発言は、かれらどのように「数字」をうけとめているのか、を知る上で貴重で、たいへん興味深い。
支持率が下がってきたら、なんらかの対策をとるわけである。それは、低支持率に苦しんだ安倍・福田両政権はもとより、小泉政権も同様である。世論調査の数字さえも、「小泉劇場」の重要な役割を演じていたのである。一方の民主党も負けてはいない。岡田党首時代から、世論調査を意識的に参考にするようになったという。両者ともに、まるでマーケティングリサーチである。
ただ、世論の期待にそえば支持率が回復するか、というとそうでもないようだ。政治家は世論に追随して人気取りに堕するのではなく、それを主導するものでなくてはならない、とはよく言われることだが、言うほどには簡単ではないのだろう。世論調査にあらわれるという民意を政治家が尊重することはなんらおかしいことではない。むしろ民主主義の社会にあっては当然のことである。しかし、内閣支持率を注視し続ける内閣というのもどこか違和感が否めない。何なのだろう? 「政治家としての志がどこにあるのか」といったありきたりの批判はしたくない。なんだか、「鏡に写る自分をひたすら見つめている」という印象が残るのだ。他に見るべきものがあるのではないか。このあたりを改めて議論するのは、もはや世論調査の課題ではなく、政治思想・哲学の領分であろう。