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〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)
著者 小林 英夫 (著)
17世紀から19世紀末までの「清朝封禁の地」から、日本帝国の解体、そして戦後の東北復興まで。日本にとって、満洲とはなんだったか、真摯に問う。日本人のためのまったく新しい中...
〈満洲〉の歴史 (講談社現代新書)
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商品説明
17世紀から19世紀末までの「清朝封禁の地」から、日本帝国の解体、そして戦後の東北復興まで。日本にとって、満洲とはなんだったか、真摯に問う。日本人のためのまったく新しい中国東北史。【「TRC MARC」の商品解説】
17世紀以降の変遷、20世紀・傀儡国家の壮大な実験と挫折を、第一人者が解く──日本人のためのまったく新しい中国東北史。13~19世紀の「清朝封禁の地」から、20世紀の「満洲国」の成立と消滅へ。近代日本が中国東北の地に抱いた野望はなぜ挫折したのか。第一人者によるまったく新しい満洲入門が誕生。
13~19世紀の「清朝封禁の地」から、20世紀の「満洲国」の成立と消滅へ。 近代日本が中国東北の地に抱いた野望はなぜ挫折したのか。第一人者によるまったく新しい満洲入門が誕生。【商品解説】
目次
- 第1章 19世紀初頭までの満洲
- 第2章 東アジア激動の中の満洲
- 第3章 奉天軍閥と対立する日本
- 第4章 「満洲国」の時代
- 第5章 「満洲国」は何を目指したのか
- 第6章 満洲に生きた人たちの生活と文化
- 第7章 消滅した「満洲国」が遺したもの
- 第8章 満洲の記憶とその変容
著者紹介
小林 英夫
- 略歴
- 〈小林英夫〉1943年東京生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。著書に「日中戦争」「満洲−その今日的意味」など。
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紙の本
五族協和という美辞麗句の空しさ
2018/10/01 19:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
類書に山室信一「キメラ」がある。これは名著であるがいささか歯ごたえがありすぎる。それに比べ、本書の歴史の語り口は軽快で読みやすい。「満州」入門書としてはお勧めだ。
経済学者による歴史本とあって、軍国日本によって支配される以前の「経済的」キーアイテムが「大豆」であったことを明快に示唆。このポイントは重要で、他書ではあまり触れられていない。小規模の労働集約型農業しか慣れていない日本人が入植しても経験・技術において先んずる先住の中国人に優位する農業経済を築くことはできない。机上で企画立案することに慣れている役人の視点が行き届かないところだ。植民地経済政策論の大家・矢内原忠雄が満州視察後、日本人による入植が絶望的であると警告していた。しかし、こういう慧眼ある人の言葉に耳を傾けることなく、政府及び軍部は、満州を中心とする中国大陸における権益拡大が日本の経済に大きく資するもの、そして五族協和の美辞麗句をちりばめて、侵略を進めていくことになる。また彼らは、奉天軍閥の張作霖・張学良による政治を前近代的なものと貶めていたが、実態はもっと進歩的なもので重工業推進等の特徴もあった、と著者は強調する。もちろん自動車や航空機等、欧米のキャッチアップ段階のものであったが、奉天軍閥政治でもとにかく推進していた。つまり、満州の近代化は日本の助けなしにも着々と進み得た可能性が高いという事。一方、日本も中国との戦争が泥沼化しおまけに対米戦にまで踏み込み、経済成長どころではなくなった。満州において日本が進めようと目論んだ重工業化計画も、結局は絵に描いた餅にすぎなかった。
ただし、石原莞爾が主導した満州産業開発5か年計画で示された統制経済はそれなりに目を引くものがある。ただし、彼らはこの計画を遂行する上で、日本が向こう10年は平和を維持する事が条件とみていた。石原は単なる戦争バカではなかったかもしれない。日本は226事件を契機に更なる軍国主義化と石原らの与する統制経済の道を突き進む。しかし歴史の皮肉で石原本人の謀略による満州事変のあと、二匹目の泥鰌を狙った武藤章らの主導した盧溝橋事件を皮切りとする日中戦争の泥沼に足をすくわれ、5か年計画は修正しながらもさらに予実が大きく狂うことになる。
本書は、棄民として戦後困難な帰還の苦労を重ねた満州開拓民たちの悲劇にも触れる。詳細について記述した他の良書もあるので、本書をきっかけに多くの読者がそれらに読み進められることを望みたい。 日本の軍国化路線の蹉跌は、歴史修正主義者たちが政権を牛耳っている日本という今の国民にとって、等しく本当に耳の痛い歴史として真摯に学ばなければならない、と思う。そして今、勝者として君臨している世界の暴君・アメリカにもよく学んでもらいたいような気がする。
紙の本
朴正熙将軍と金日成と官僚と外交官。
2008/11/23 00:35
9人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「満洲帝国」における漢人-あの時代風にいえば「満」人官僚達について詳しく書かれているのは参考になる。しかし、朝鮮人については問題がある。朝鮮人は日本人と「満」人の中間の地位に置かれたのは書かれていても、朴正熙将軍が「満」軍少尉に任官したのは昭和19年だが、抗日聯軍が壊滅して生き残りは投降するか、ソ連領内に脱出したのは昭和15年。彼が配属されたのは華北に派遣された部隊だから、どうやって「討匪」行に参加出来るの?八路軍の事じゃないだろうね?それとも朝鮮戦争の話?謝介石のような台湾人の高官はいても、朝鮮人が「満洲帝国」で、どのぐらいの地位までつけたのか、書いてほしいものだ。この本には台湾人は出てこないけれど。
抗日聯軍には金日成よりも高い地位にいた朝鮮人もいたのに、それも触れないと。あまり突っ込み過ぎると民生団事件について書かないといけなくなるだろうが。
官僚、といえば内面指導について全然触れていないのは、何故だろう?「満洲帝国」で官僚制度について書くには必要なテーマなのに。
この著者が汪兆銘政権について書いた本は、なかなかよかったのに残念だ。その本にドイツ軍の保護占領下にあったデンマークが汪政権と一緒に「満洲帝国」を承認した、とあるが、「満洲帝国」を承認した国についても一つ書いた方がよかったのでは?日本軍占領下で「独立国家」になったフィリピンやビルマ、自由インド仮政府及びドイツ軍等の占領下にあった一応主権国家という事になっていたクロアチア独立国とスロヴァキア国にも通じるものがある。あんまり、そういうテーマで書かれた本はないから、誰か書いてほしいものだ。
紙の本
タイトル通り、「満洲」の歴史を、日露戦争から終戦まで書いた本です。
2009/02/07 22:06
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り、「満洲」の歴史を、日露戦争から終戦まで書いた本です。
太平洋戦争は、その真珠湾攻撃から始まり沖縄戦まで、戦史の中心となる出来事が多いため、たくさんの資料を見る機会があります。
しかし、満洲の場合、どちらかというとわき役的なイメージがあり、あまり詳しく知らない人も多いはず。
実際、歴史の教科書などでは、日本の傀儡国家として「満洲国」が成立した程度のことしか載っていません。
本書は、満州国の建国から崩壊まで、政治・経済・文化面から解説しています。
その中で、政治経済の中心となる組織は、「満鉄」と「関東軍」。
このふたつの組織を中心として国家が形作られています。
国家の理念は、「五族協和」。
日本、朝鮮、漢族、満族、蒙古族の協和を目指したのです。
しかし、実態は最も少ない日本人が常に優遇されていたようです。
理念と建前。満州国にかかわった政治家や軍人の中にも、大変優秀な人材は数多くいたので、もう少し計画的に国家運営ができていたら、あのような悲劇的な結末を迎えることもなかったのかもしれません。
理念を推し進める上で、武力を用いてもうまくいかないのは、古今東西共通しているのです。
龍.
http://ameblo.jp/12484/
紙の本
混沌とした (?!) 満洲のすがた
2009/03/05 20:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
従来の見方にとらわれず,さまざまな面から満洲国をとらえようとしている.張作霖,張学良などの奉天軍閥の再評価,日本から進出した農家や商人が商売上手な中国人に勝てずに失敗したこと,農業技術の革新ができなかったこと,最近の回想録の傾向など,いろいろ興味ぶかい.内容がさまざまなぶん感想もまとめにくいが,そういう道教的 (?) な世界だったということだろう.