せんをたどってせかいいっしゅう （講談社の翻訳絵本）

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投稿者：wildflower　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

ひとふでがきの絵本「せんをたどって」シリーズ最新刊、2008年10月発行。
本書のほかに『せんをたどって』と『せんをたどっていえのなかへ』が既刊で
出ています。
著者はローラ・ユングヴィスト(Laura Ljungkvist)さん。
スウェーデン育ち、ニューヨーク在住でデパートなどの企業広告、デザイン
制作なども手掛けておられる方です。

ひとふでがきを辿る絵本というと単純ですが、さすが教育とデザインに
秀でた北欧スウェーデンの方です。
デザインも発想もとても斬新で楽しい絵本に仕上がっています。
タイトル文字がひとふでがきで書かれていますが、そのタイトル字から伸びる
一本の線が折れ曲がりながら表紙絵のくじらをかたどっていき、
そのくじらの泳ぐ海の波をかたどり、さらに先へと延びています。
なんとそれは１ページめくった裏表紙から中表紙、物語の最初へと、
ずっとずっとずーーーっと続いていきます。

　　　せんを　たどって　たびに　でよう。
　　　バスに　のろうか？　
　　　それとも　ふね？
　　　ヘリコプター？

　　　なにが　ぼくらを
　　　まって　いるんだろう。

１ページめに書かれた文字に添えられているのは、表紙から長く延びた線が
かたどっている気球の籠部分。
そしてそのままずっと次のページへと延びていきます。すると２ページめにはその線は波となり……

　　　ききゅうに　のって　せかいを　まわろう。
　　　ケニアに　アマゾン、オーストラリア、　　
　　　さいごは　うちゅうにも　いこう！

　　　ページを　めくって、あつい　たいようを　あびに……

その波から延びる線が、そのまま案内役のように伸びていきます。
ページをめくるとケニアの動物たち、グリーンランドのあざらしや白熊たち
サハラの駱駝たち、アマゾンのジャングル、スリランカの動物たちや
椰子の木、メキシコ、南極、ロシアのタイガ、オーストラリアそして
大都会ニューヨークから宇宙……延々とひとふででかたどっていくきます。
一本の線がカバー裏までとうとう途切れないということに、まずびっくりです。
（それだけでもさすがプロの技です）
線が描いたものの背景は、場所ごとにその地域がわかりやすい色合いに
シンプルにまとめられています。
ケニアは黄土色、ロシアのタイガは濃い緑。ニューヨークの夜は濃い紫。
そしてそれぞれの場所に、ガイド役のようなひとくちメモがついています。

オーストラリアのカンガルーの絵（もちろんひとふでがきです）の足許には
「カンガルーは、おすどうしで、ボクシングのような　けんかをする。ときには　あしも　つかう。」
と書いてありますし、アマゾンのジャングルのところには
「アマゾンにしか　はえて　いない　しょくぶつは　たくさん　あり、
　それを　つかって　いろいろな　くすりが　つくられて　いる」
グリーンランドには
「シロクマの　けの　したには　くろい　はだが　かくれて　いる。」

などなど。
へぇ！しらなかった～。　というような豆知識のような説明が
ひとことずつ、ページのあっちこちに散りばめられています。
お見せできないのが残念ですが、その絵と文章もバランスが絶妙です。
線に添うように文字の行もゆるやかにカーブしたりしています。

どれもがとても洗練されていて、見ているだけで溜息がでそうになります。
書かれている知識も正確で、地球を含めた太陽系の惑星のなかから冥王星が外れていますし、日本に関係する内容がちらりと含まれていて
日本の子ども（おとな）が読んでも親近感がわくようなしかけがあります。
「ニューヨークの　ちかてつを　ぜんぶ　つないだら、とうきょうから
　ほっかいどうまでと　おなじくらいの　ながさに　なる。」といった感じに。

ひとふでがきの本というアート主体の本のようにみえるこの絵本が
地球儀や地図、社会の教科書、そして宇宙や動物の図鑑の要素を
ぜんぶ一本の線につなぎながら、決して「お勉強」的な堅苦しさを
感じさせずに、やわらかく教えてくれるところに脱帽です。
世界各国で翻訳されているそうです。
前作２冊も、さっそく続けて読みたくなりました。


○著者のホームページ（英文）
　http://www.followtheline.com/

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投稿者：タタ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

線でみる世界。思っていたよりも、いい意味で単純でわかりやすく小さい子供でもれ買いできる内容になっています。