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- カテゴリ:一般
- 発売日:2008/10/01
- 出版社: 未来社
- サイズ:19cm/217p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-624-60109-6
紙の本
とんぼの目玉 言の葉紀行
著者 長谷川 摂子 (著)
あるときは故郷・出雲にはぐくまれた「母語」をみつめ、またあるときは言葉のイカダを組んで大海へとこぎ出す。戒名に心を奪われつつ、「さよなら」に別れを告げる一方で、共同翻訳の...
とんぼの目玉 言の葉紀行
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商品説明
あるときは故郷・出雲にはぐくまれた「母語」をみつめ、またあるときは言葉のイカダを組んで大海へとこぎ出す。戒名に心を奪われつつ、「さよなら」に別れを告げる一方で、共同翻訳の顛末を振り返る。若者と向き合い、その刺激をたっぷりと浴びながら、柳田国男や木下順二、宮沢賢治の遺した「言葉」に思いを馳せる毎日。【本の内容】
目次
- 流れるイカダ
- ボクの将来
- 私の領分は出雲弁 …私の母語1
- 旅伏山が暗んだ …私の母語2
- オカッツァンの話 …私の母語3
- あの世の名前
- 「さよなら」をめぐる小トリップ
- 『美術の物語』の翻訳チーム誕生まで …翻訳大旅行1
- 文体作りのすったもんだ …翻訳大旅行2
- フォルムとマチエールの解体 …翻訳大旅行3
著者紹介
長谷川 摂子
- 略歴
- 長谷川摂子(はせがわせつこ)
島根県生まれ。絵本・童話作家。東京外国語大学卒業、東京大学大学院哲学科中退。保育士として働いたのち、夫の長谷川宏氏とともに学習塾を営む。2004年『人形の旅立ち』(福音館書店)で第19回坪田譲治文学賞、第14回椋鳩十文学賞、第34回赤い鳥文学賞を受賞。絵本に『めっきらもっきらどおんどん』『きょだいなきょだいな』『みず』『おっきょちゃんとかっぱ』など多数。評論に『子どもたちと絵本』(福音館書店)、翻訳に『美術の物語』(共訳・ファイドン)。昔話に「てのひらむかしばなし」シリーズ(全10巻・岩波書店)。
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紙の本
「言葉を喰らう奇獣」の冒険譚
2009/02/08 16:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうか - この投稿者のレビュー一覧を見る
未来社のPR誌『未来』に連載されたエッセイ十九篇に、三篇を書き
下ろして一冊にしたもの。雑誌掲載時とはまた違った、「一冊」に
まとまってこその読み応えがあった。
「とんぼの目玉」というタイトルは、北原白秋の詩「蜻蛉の目玉」から
つけられたそうで、ふくらみのある、ふさわしい名づけだった。
「出雲弁」を母語として育った長谷川さんは、その豊かさを伝える
ために、昔話の出雲弁による語り聞かせをしている。言葉は相手がいて
発せられるものだから、「標準語」と「出雲弁」の会話だと、どこか
やはりちぐはぐになってしまう気がする。語彙やテンポ、発声など、その
言語空間が噛み合わない部分が、どうしても残る。
「昔話の語り聞かせ」というのは、とてもすぐれた試みだと思う。
聞く人が育った場所や時代の違いはあれど、なんとなく共有している、
あるいは共感できる、昔話自体が持つ力と、それを語る「出雲弁」の
響きのやさしさ、聞きなれない言葉が引き起こす興味、などなどが
相まって、初めて聞く者にも違和感なく、その世界に引き込み、存分に
味わわせることができるからだ。
ヘーゲルを専門とするお連れ合いの長谷川宏氏と、「勉強以外のことに
熱心な」塾を営む長谷川さんは、四人の子の母でもある。老若男女を
問わず、さまざまな人々の発することばを、昆虫採集するように、興味
津々に観察し、考え込む姿は、「言葉を喰らう奇獣」の生まれ変わり
なのではないかという、彼女自身の自己イメージを裏付ける。
塾で出会った子の言葉遣い、ゴンブリッチの『美術の物語』翻訳に
まつわる話、ハイキング先で見かけた墓石の戒名、さまざまな話題を
貫くテーマは「ことば」。
標準語しか知らない私にとっては、「出雲弁」を母語として育った
からこそ得られた長谷川さんの感性に、わくわくしているうちに
読了した一冊だった。