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商品説明
庵堂家は代々、遺体から箸や孫の手、バッグから花火まで、あらゆる製品を作り出す「遺工」を家業としてきた。長男の正太郎は父の跡を継いだが、能力の限界を感じつつある。次男の久就は都会生活で生きる実感を失いつつあり、三男の毅巳は暴走しがちな自分をやや持て余しながら長兄を手伝っている。父親の七回忌を目前に久就が帰省し、久しぶりに三兄弟が集まった。かつてなく難しい依頼も舞い込み、ますます騒がしくなった工房、それぞれの思いを抱く三兄弟の行方は?第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【日本ホラー小説大賞大賞(第15回)】庵堂家は代々、遺体からあらゆる製品を作り出す「遺工」を家業としてきた。父の跡を継いだ長男とそれを手伝う三男。都会暮らしの次男。久しぶりに兄弟全員が集まったとき、かつてなく難しい依頼が舞い込み…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
真藤 順丈
- 略歴
- 〈真藤順丈〉1977年東京都生まれ。「地図男」でダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞してデビュー。「RANK」でポプラ社小説大賞特別賞、「東京ヴァンパイア・ファイナンス」で電撃小説大賞銀賞を受賞。
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紙の本
遺族の悲しみを昇華する聖職
2009/04/20 12:57
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
庵堂家の家業は「遺工師」。
死体のすべてを使って、日用品や袋物などを作り出していきます。
(クジラの解体を思い出しました)
叔父の経営する葬儀社と結託し
遺族からの依頼で、遺工を作りだすのは長男の正太郎。
正太郎は数日間のほぼ徹夜作業をものともしないのですが
一般社会には適応できそうもありません。
三男・毅巳(たけみ)は汚言症で暴力的な若者。
兄を手伝い、遺体を引き取り、遺族に遺工を届けています。
次男の久就(ひさのり)は家業になじめず、
東京で働く、気の弱い青年。
彼が父の七回忌に出席するため帰省し、家業を明らかにし、
家族や兄弟の秘密や関係性を語っていくリーダビリティがうまい。
グロテスクな描写になりがちですが
どこかユーモアを含み、職人芸として読ませます。
遺族だけではなく、死んだ人の満足や信頼にも応えたい、
というのは、もはや職人でしょう。
「有機的な死」として昇華させる筆力がすばらしい。
また毅巳の汚言もどこかで尽きるかと思えば
最後まで暴力さを失わず、これはこれですごい技。
紙の本
たしかに達者です。これほどの内容を明るく読ませる、っていうのは容易ではないのに、それを達成している。そこさえ除けば、ホラーというよりは任侠映画みたい・・・
2009/11/27 19:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まったく存在に気づかなかった本です。とはいえ、装丁は素晴らしい。私はソフトなハードカバー、っていうような造本がお気に入りで、その代表格が新潮社のクレストブックであったり、理論社のミステリYA!だったりするのですが、この本もその系統のものです。ただし、類書と大きく異なっているのが遠藤拓人のカバーイラストです。
私はあまり黒を使ったデザインが好みではないのですが、カバーイラストに圧倒されて、ま、いいか、なんて思います。このイラスト、何気に見ている分には綺麗で面白いなあ、結構細密だなあ、イラストっていうよりコミックス系かなあ、なんて思うんですがじっくり見るとかなりエグイわけです。おお、なんて思います。でも、これは捨てがたい味のもの。
デザイン担当は角川から独立した感のある高柳雅人。ちなみに、この絵から想像される中身はかなりおぞましいものなんですが、内容もズバリ。第15回日本ホラー小説大賞大賞受賞作なので、選評が出ているのですが、満場一致とはいえ、扱う世界のあまりの特異性に危惧の念を表明する人がいるのも事実です。
全18章のお話ですが、プロが絶賛しながらもどこか躊躇ってしまう内容を出版社のHPから引用すれば
*
庵堂家は代々、遺体を加工して食器や家具、石鹸や皮革製品などを作り出す「遺工」を家業とする家系。長男の正太郎は家業を継ぎ、日夜寡黙に作業に打ち込む職人気質。次男の久就は、自らだけが父親の子どもではないという疑念を抱き、家業を避けて東京でコピー機の営業に就いている。三男の毅巳は、数年前から千葉県茂原市にある実家に戻り正太郎の仕事を手伝っている。
父親の七回忌を目前に控え、久就が久しぶりに実家に戻った。正太郎は先代の旧知と思われる老人から亡くなった妻の遺工を手がける忙しい毎日ながらも、弟が戻ってきたことで浮き足立っている。持病の汚言症が再発したまま恋人にプロポーズした毅巳が巻き起こす騒動など、七回忌を控えてますます騒がしくなってきた三兄弟の周辺。久就の疑惑と三兄弟が請け負った遺工の行方は……。
*
とあるように三兄弟の物語です。もう少し分かりやすく書くと
長男の正太郎は父親亡き後、家業を継ぎ、文字通り日夜寡黙に作業に打ち込む職人気質で、夜の明けるのにも気づかず仕事に没頭しています。芸術家によくあるタイプでその仕事の質の高さには定評があります。次男のヒサこと久就は、自らだけが父親の実の子どもではないという疑念を抱き、家業を避けて東京でコピー機の営業に就いています。
三男のタケこと毅巳は、数年前から千葉県茂原市にある実家に戻り正太郎の仕事を手伝っていますが、若いころから軽犯罪や暴力沙汰で明け暮れ、おまけに自傷癖があります。その悪癖は、今は落ち着いたものの、興奮すると心にもない罵声が口からこぼれ、周囲から誤解されています。ときに彼から罵倒されるのが恋人の越智美也子です。この話は三人の視点で描かれます。
で父親の家業というのが遺体加工業です。遺体を利用してものをつくり、遺族に渡して対価を得る。ま、ナチスや我が国自慢の帝国陸軍がおこなった事業を、あくまで職業として遺族のためにおこなう、というところがミソなのですが、やっていることは変わりません。その描写はあっさりしていて、単なるスプラッターではないところはエライのですが、読者の脳裏にはともかくその様が浮かぶ。
それは、それは、オゾマシイ。その雰囲気をじつによく出しているのが遠藤拓人のカバーイラストです。一見、明るくて楽しげ。色合いもそれなりに華やかな部分もある、でも良く見ると・・・。
他の登場人物を書いておけば、三兄弟のオジキで、四万木葬儀社の大柄な経営者・四万木がいます。仕事柄、正太郎に仕事を斡旋しているプロデューサー的存在で、遺体を加工してでも思い出にしたいといった奇特な遺族を見つけては、せっせと営業をします。とはいえ、あこぎなわけでも金に餓えているわけでもないところが、そんじょそこらのお坊さん・葬儀社タッグチームとは違います。
で、このお話のメインとなる依頼をしてくるのが美濃田です。暴力団豊島一家の十六代目組長で、妻・冨美との間に生まれた娘さおりを亡くしたばかりで、兄弟に無理難題を言ってきます。兄弟の父親とワケありの存在、というところが結構、昔懐かしい、といったもので、この話全体のトーンとピッタリあっています。そう、この話って、職業の点を除けば極めてオーソドックスなんです。人情のありかたなんかも。でもなあ、遺体加工ってのがなあ・・・
紙の本
第15回日本ホラー小説大賞受賞作品。
2008/12/28 12:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
第15回日本ホラー小説大賞受賞作品。
ホラー小説といっても、怖いとか恐ろしいといった類の内容ではないところが、斬新な作品です。
庵堂家は代々続く「遺工」の家。遺工というのは、死体から取り出した骨や皮を日常生活に使うものとして加工する技術者です。
死んだ人そのものを身近に置くことで、毎日が供養になるそうです。
この作品の最大の魅力は、その遺工作業の描写です。死体からものに変わる様子をリアルに描写しています。
その物語は、庵堂家の三兄弟が先代である父の7回忌を機会に、久しぶりに一堂に会すところから始まります。そして、厄介な仕事が入り3人がトラブルに巻き込まれ、最後は兄弟の出生の秘密が明かされます。
スピード感ある表現は、現代的な感覚です。
また、ホラーという割にはユーモアもあり、あっというまに読了してしまいました。
ただ、個人的にはもう少し、「遺工」という職業の意義や「兄弟愛」の部分にも焦点を当て、物語の最後でオチをつけてほしかったと思いました。
龍.
http://ameblo.jp/12484/