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紙の本
1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)
著者 初野 晴 (著)
母を亡くし、心に傷を抱える女子高生・マドカが恋に落ちた相手—それは最強の騎士『サファイア』。ふたりの出会いは、忍び寄る狂気—社会の片隅でひっそりと息づく異常犯罪者たちから...
1/2の騎士 harujion (講談社ノベルス)
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商品説明
母を亡くし、心に傷を抱える女子高生・マドカが恋に落ちた相手—それは最強の騎士『サファイア』。ふたりの出会いは、忍び寄る狂気—社会の片隅でひっそりと息づく異常犯罪者たちから大切な人、そして愛する街を守るための戦いのはじまりだった。大人への道程にいる、いまだ“不完全”な彼女たちを待ち受ける、過酷な運命とは…。透明感ある文章で紡ぎ出すファンタジックミステリー。【「BOOK」データベースの商品解説】
母を亡くし、心に傷を抱える女子高生・マドカと、最強の騎士サファイア。ふたりの出会いは、忍び寄る狂気から大切な人、愛する街を守るための戦いのはじまりだった…。透明感ある文章で紡ぎ出す、ファンタジックミステリー。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
初野 晴
- 略歴
- 〈初野晴〉1973年静岡県生まれ。法政大学工学部卒。2002年「水の時計」で横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。他の著書に「漆黒の王子」がある。
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紙の本
1/2の彼に捧ぐ
2009/04/28 13:00
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「彼と経験した、受難と、智恵の戦いと、自己犠牲の物語・・・」
と、ヒロインが序章を締めくくってこの物語は始まる。つまり読者はヒロイン・マドカと彼女のナイト・サファイア、いうなればお姫様と王子様が結ばれてハッピーエンド・・・にはならないという悲劇を最初に提示される。これは残酷だ。
さらにいえば、受難、智恵、自己犠牲、これらを切り抜け辛酸を舐め、どうにかしてようやく生きているマイノリティ(少数派)が社会的弱者としてこの格差社会には確かに存在し、彼らの耐え切れぬほどの不満や苦悩は時に以上犯罪という形でモンスター化する。彼女たちが暮らし愛する街で起き、解決していくいくつかの物語は、そんなか弱きモンスターたちが起したマジョリティ(多数派)への反乱である。
母をなくし警察官を父に持つ傷心の、しかも同性愛癖のある女子高生マドカは挑発の美人に恋をするが、彼女は女装趣味の男子で、しかもマドカ以外には見えないお化けだったため大失恋。それでもサファイアと名づけた彼、もとい、彼女とコンビを組んで、マドカは学校そして街全体に蝕み始める異常犯罪に立ち向かっていく・・・。
そしてその「異常」犯罪には社会一般多数からともすれば異常とされる少数派、社会的弱者の影が、加害者側にも被害者側にも必ずあった。
弱肉強食の大人社会で正当な仕事と対価をもとめた未成年の裏派遣「もりのさる」。
目の不自由な少女が盲導犬を殺され、最後の目である祖父が事件の鍵となる悲劇「ドッグキラー」
一人暮らしの女性という弱者ばかりを狙う侵入者に日常を犯され自殺者まで出してしまう「インベイジョン」
援助に頼り細々と生きなければならない擁護施設と運営のために身を尽くす天気予測者ハロを巡る毒薬散布事件「ラフレシア」
美しいガラスの生成に使用する灰を作り出すための「あるもの」を得るため最悪の犯罪にまで手を染めた「グレイマン」
彼女たちの愛する街で起こる事件はきっと見えていなかっただけでずっと存在していた誰かの思い。誰かの苦悩のはけ口。彼らはマドカを苦しめ街を恐怖させ恐ろしい事件を起したけれど、それでもいつかは自然淘汰されてしまう存在だ。
弱肉強食のこの世界で「弱」者でしかなく、表の、明るい世界に存在する絶対多数の強者にはいずれ握りつぶされてしまう、消えるしかないか弱気抵抗者だ。サファイアが次第に消えていってしまったように・・・。
だからマドカは会いに行く。消えてしまったサファイアが「私」を待っているということを知っているから。
結末はベタな終わり方かもしれない。けれどサファイアが消滅する必然性、この流れは物語全体に貫く大きな流れの中で必要な結びだ。
哀しい物語かもしれない、痛い物語かもしれない。
けれど、彼女たちの出会いと別れと、再生にきっと誰もが心救われる。