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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.12
- 出版社: 毎日新聞社
- サイズ:21cm/181p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-620-31899-8
紙の本
散歩の学校
著者 赤瀬川 原平 (先生)
路上観察の先生による定番から穴場まで37コース、計214553歩の東京あちこち観察記。【「BOOK」データベースの商品解説】東京タワー、吉祥寺、銀座、東大、アメ横…。路上...
散歩の学校
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商品説明
路上観察の先生による定番から穴場まで37コース、計214553歩の東京あちこち観察記。【「BOOK」データベースの商品解説】
東京タワー、吉祥寺、銀座、東大、アメ横…。路上観察の先生・赤瀬川原平による、定番から穴場まで、36コースの東京あちこち観察記。課外授業「伊豆大島」も収録。『毎日新聞』連載「散歩の言い訳」を加筆・修正して書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
赤瀬川 原平
- 略歴
- 〈赤瀬川原平〉1937年神奈川県生まれ。武蔵野美術学校中退。画家、作家。「父が消えた」(尾辻克彦名義)で芥川賞を受賞。著書に「老人力」「超芸術トマソン」など。
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紙の本
散歩の極意がつまった一冊!
2009/04/24 10:32
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
リビングの窓から見える山々が、ここ数日で一変しました。もうそれは新緑そのもの。
いきいきと、やわらかく、そしてやさしい。
この時期ならでは美しい景色…。
心弾み、よりいっそうお出かけ心がくすぐられるわけ、です。まぁ、私の場合は、年中お出かけ心がくすぐられておりますが、この原平さんの本を見つけたときには、ムムムと思ったのです。またしても、ここに入りたい学校があったと…。
毎日新聞の夕刊に連載中、原平さんの散歩話が一冊の本にまとめられたもの。「これで連載の約三分の一だ。いずれ二冊目、三冊目も出るのか、それは世の中次第だ。」とあって、そりゃ、そうだと思いつつ、私は二冊目も三冊目も待ってるよとエールを送る。
まずは東京タワーから、それからアメ横、谷中、吉祥寺、日比谷公園、隅田川・水上バス…と続き、最後は渋谷・ハチ公前。ここまでで36箇所。
これ以外に課外授業で伊豆大島編がある。
それにしても、原平さん目線の東京散歩は実に楽しい。
東京タワーを前に「やはりでかい。巨大な建造物の前に立つと、人間は偉い、という感慨に一瞬ひたる。よくやった、と思う」。しかし東京タワーが、それが感動として定着しないで逃げてゆく…、それはなぜか???
「谷中は、おいしい煮物みたいな町だ。」この一文だけ、谷中の雰囲気がぱぁ~っと胸中に広がっていく。かなり昔に出かけたことのある朝倉彫塑館の和室からの眺めが不意によみがえる。
隅田川・水上バス、その名もヒミコ。知らなかったなぁ、乗ってみたいなぁ~。松本零士さんデザインの涙のしずくをイメージした形、そして船内放送は「銀河鉄道999」の星野鉄郎やメーテルの声…なんて聞くと、わぁ~と心がはやります…。
「駱駝は見かけなかったが、ゆらゆらしたのでは象がよかった。河馬もいい。こういう巨大動物は何か挫折したときふと来て、じーっと見ると最高だと思う。その感じは映像では無理で、動物をナマで見てこその感動だとつくづく思った。」上野動物園編を読みながら、思い出したことが一つ。
かつて横浜に住んでいたとき、横浜中央図書館に行った帰りにたまに寄っていた野毛山動物園。あそこで象を見るのが楽しみだったなぁ~。
…とまぁ、いつものごとく、一つひとつに心を揺さぶられつつ、読みました。^^
この学校には休み時間もあって、そこにはこんなことが書いてありました。
「そもそもこの宇宙は、重力、電磁気力、強い力、弱い力、という四つの力で成り立っている。
いや宇宙のことまでここで持ち出すことはないが、弱い力、弱い理由というのは無視できない。人生は、弱い力の働きがなかったら、すかすかになる。強い理由だけで動く生活は、どことなく味気ない、だからなんとなく、どことなく、ちょっとした気持ちで散歩に出るのだ。」
わっ、ここで人生が出てきた。さすが原平さん!
続いてこうありました。
「散歩するのは必ず外だ。人間は外があって生きている。外に思わぬことが満ちているから、それを思って中でじっと仕事もできる。ただの中だけではどうしても行き詰るのだ。」
以上が原平さんによる散歩の言い訳なのですが、私にとっては、なんともしびれる文章!散歩について、ここまで言い切った人、私はこれまでに知りません。
それぞれの散歩には、原平さんの文章のほかに、生徒の散歩メモも書き込んであります。しっかりデータ編のようで、こちらもじっくりじっくり読みました。それにしてもこの散歩に同行された生徒さん達、羨ましい限り、です。
散歩の極意がつまった一冊、でした。
紙の本
「路上観察者」の眼
2009/03/31 16:20
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:碑文谷 次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「散歩」と「学校」はフィットしない組み合わせだなと思いつつ読むと、著者は冒頭で、「散歩に出るのは、けっこう難しい。目的がないからだ。ウオーキングなら易しい。目的があるからだ」と散歩の難しさを自覚するように諭す。成る程散歩も学校で学ぶものか、散歩でもウオーキングでも大差ないという認識ではおちおち外出もできまいと、若干ユーウツ気分。が、10数行後に結論めいた一節が待っていてくれるー「・・・このように、散歩の言い訳は、言おうとすると難しくなる。(中略)いずれ外を歩き出せば、理由はいつの間にか蒸発している」。つまり、自分の中の世界は所詮たかが知れている、あれこれ難しいことは考えずに外へ出て「思わぬことにぶつかる、思わぬことにめぐりあう」ことが大事といわれて、納得する。
というわけで、著者と一緒に気楽に外を歩く。行き先は、「東京タワー」からスタートし、「アメ横」、「谷中」と続き、「渋谷・ハチ公前」までの東京36箇所と「課外授業」として付随の「伊豆大島」。同類の本は沢山あるのだろうが、「路上観察学会」を立ち上げた著者の眼は、それらと一線を画す。例えば「アメ横」には何でもあるが、「野菜と骨董屋はない」とか、「田園調布の家々には最近見かけなくなった勝手口が多く見られる」が「路上に猫はいない」ことにふと気づき、「猫を見かける町は、人間にとっても住みやすい」と高級住宅地の側面にさりげなく触れる。「羽田」では、「米軍も撤去をびびったらしい穴守神社の真っ赤な大鳥居」をわざわざ探し当てて満足したり、「代々木」は「踏み切り」が多く且つ「町の基本が斜めなのだ」と喝破する。
散歩などは自分の好き勝手に時空間をさまよえばよいものであろう。別に何も残らない「ヒマツブシ」であってはいけない謂れもなかろう。しかし”素直にモノを観る眼”が涵養されおれば、遥々外国で体験するまでもなく日常のありふれた散歩にも小さいが豊かな発見があるのだ、と勇気付けてくれる一冊である。