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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.9
- 出版社: 集英社
- サイズ:20cm/738p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-08-771255-1
紙の本
聖家族
著者 古川 日出男 (著)
異能の者を輩出しつづける青森の名家・狗塚家。平成X年現在、孫たちは三人。半ば人ならざる存在の長男・牛一郎。死刑囚となった次男・羊二郎。胎児と交信する妹・カナリア。「異能の...
聖家族
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商品説明
異能の者を輩出しつづける青森の名家・狗塚家。平成X年現在、孫たちは三人。半ば人ならざる存在の長男・牛一郎。死刑囚となった次男・羊二郎。胎児と交信する妹・カナリア。「異能の者」とは何か?「天狗」とは?「家族」とは?「故郷」とは?「日本」とは?排除され流亡せざるをえなかった者たちが、本州の果て・東北の地で七百年にわたり繋いで来た「血」と「記憶」。生の呪縛と未来という祝福を描く、異形の超大作。【「BOOK」データベースの商品解説】
異能の者を輩出しつづける青森の名家・狗塚家。排除され流亡せざるをえなかった者たちが、本州の果て、東北の地で700年にわたり繫いできた「血」と「記憶」とは…?【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」 | 9−135 | |
---|---|---|
聖兄弟 1 | 139−152 | |
地獄の図書館・白石 | 153−180 |
著者紹介
古川 日出男
- 略歴
- 〈古川日出男〉昭和41年福島県生まれ。「アラビアの夜の種族」で日本推理作家協会賞、日本SF大賞、「LOVE」で三島由紀夫賞を受賞。他の著書に「13」など。
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紙の本
奥の血道。
2008/11/18 15:52
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
東北地方―みちのくとも呼ばれるが、語源は道の奥、陸奥。東北は方角的に丑寅で鬼門、鬼が棲んでいると言われた。武家が幕府を開く時に、朝廷から代々征夷大将軍の称号を認定されたが、その初代は坂上田村麻呂。夷敵の地である東北を制圧した。福島県の田村郡は、その名にちなんで。東北は、源義経が逃亡先に選んだ、聖域、アジールでもある。鎌倉・室町時代に内外の交易で栄えた十三湊と安東氏とか。
この本は、東北地方を舞台にしたある血族の物語であり、東北のゲニウス・ロキ(地霊)の物語でもある。全体小説、あるいは大きな物語の復権を狙っているのだろうか。復権ではないか、新しさを感じるもの。きわめてスピーディーな文体、時制なんか構ってられるかというテンポ良い展開、繰り広げられる一種のスペクタル的世界は、読むものを魅了する。これほどまでページをめくるスピードが高速だった小説は最近ではなかった。
同地出身である作者は、東北弁、-正しくは郡山弁かも-方言を駆使している。作者と同郷であるぼくには、ひたすら懐かしい。土着的、猥雑な生的エネルギーに満ちあふれている。井上ひさしの『吉里吉里人』あたりを思い出す。フォークナーのアメリカ南部、「架空の土地ヨクナパトーファ郡」や中上健次の紀州ともダブる。東北地方の物語だが、そうであってそうではない。辿れば、遡れば、あなた自身の物語でもあることが理解できるはず。
ともかく一気に読みきることだ。細部は再読で味わおう。作者の真似をして朗読してみれば、文章の心地よいリズムが伝わる。
逃亡ロードノベル、伝奇小説、犯罪小説など、1冊でいろいろな味が楽しめるんで、読む人にとって評価が異なるだろう。
現在の日本の地方都市はどこも同じで、『ファスト風土化する日本』などといわれているが、ところがどっこい、コンクリートやアスファルトを一皮剥けば、埋もれていた魑魅魍魎が跋扈する。
いままで作者が発表していた作品は、この本を書くためのエチュードだったのかもしれない。
紙の本
すごい本です。物理的な存在感が違います。カバーの色がいいです。その紙質もいい。しかも角背でこの厚さ。そして内容の濃さ。一読、まさに古川得意のクロニクル、しかも今度は異能の一族・・・
2009/03/13 19:36
8人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
出版案内で、完全に頁数を見落としていました。だから書店で実物を見たときの衝撃といったら大変なものでした。この本の凄さは読まないとわからないんですが、菊地信義装幀の外観だけでもなにかしら訴えるものがあることは伝わるでしょう。存在感のある赤、大きさの異なる「聖」「家」「族」の文字。
赤の色もですが、カバーの紙質が素敵です。印刷ではなくて紙そのものがもつストライプ模様。そして手触り。おまけに天地を含めた小口に浮かぶ怪しい模様、きっと意味があるんだろうな、なんて思い、地図かな、それとも記号かな、などなど悩みましたが全く答えが思い浮かびません。
カバー左端の言葉は
生まれちゃったんだよ、俺たち。
とさり気無い。でも、ちょっと虚無を感じます。次に引用する目次を見るだけでも、結構来ているのが分かります。ここだけ見ていると、あんたは西尾維新か桜庭一樹か、なんて思ったりもします。
扉一
狗塚らいてうによる「おばあちゃんの歴史」
扉二
聖兄弟・1
地獄の図書館・白石
聖兄弟・2
地獄の図書館・大潟
聖兄弟・3
地獄の図書館・郡山
聖兄弟・4
扉三
「見えない大学」付属図書館
扉四
記録シリーズ・鳥居
聖兄妹・1
記録シリーズ・天狗
聖兄妹・2
記録シリーズ・学府
聖兄妹・3
記録シリーズ・DJ
扉五
狗塚カナリアによる「三きょうだいの歴史」
です。いやあ、これ見ただけで震えませんか? 早速内容に入りましょう。
話ですが、代々、体術、というか殺人術に秀でた一族の現代に続く700年におよぶ歴史を描く古川得意のクロニクルです。その中心にいるのが狗塚カナリアです。といっても彼女は現代に生きる多産系の若い母親であることを除けば、表面は普通の女性です。強いて言えば二人の兄と微かながら霊感的に繋がっている、といえないこともない。でも流行の戦闘少女ではありません。
そして狗塚牛一郎、羊次郎が東北を南下します。その過程で一族の歴史が、様々な姿で浮かび上がります。そして妹の生活とクロスする。その仕方が、難しい。文章がひっかかる。重い。暗い。引き摺られ迷走する。でも、明らかに著者のコントロール下にある。まさに古川文学です。
読んだ印象では扉二、聖兄弟が東北を南下する章が最も力が入っているようですが、でもそれは扉五に繋がるわけで当然といえば当然。そういう意味では一瞬現れた、といった感じの秋と夏の父親、そして二人を誘拐することになる来栖冬子、容姿もよくわからない彼女も重要です。ヒップホップ三人組もなかなか楽しい。
それと日本の馬の歴史、その興亡について詳しい真大も不気味ではあります。そして巻末の初出に関する作者の言葉
この『聖家族』は流亡のメガノベルだ。誌面は次のように提供された。電子的な媒体であれ、誌面は誌面だった。「すばる」平成18年6月号、平成19年6月号、平成20年7月号。「小説すばる」平成18年4月号、7月号、10月号、平成19年7月号から9月号まで。「青春と読書」平成18年6月号から8月号まで、同年10月号から平成19年3月号まで。「WB(早稲田文学フリーペーパー)第9号。Web「古川日出男と聖家族」。Web「RENZABURO」。感謝する。これらは初出の記録だ。記録に載せられない原稿も、ある。この作品を以って、一作家である私の生涯の半分が終ったと、記憶が告げる。初稿の塔と異稿の塔に書き下しの塔と五つの扉が具わり、いま、たしかに聖堂は建った。
が凄いです。感動します。生きてて良かった・・・でも、「記録に載せられない原稿」って何? 初稿の塔、と、異稿の塔、って何がどれだけ違うの? なんて頭の中には?が
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です。最後に登場人物を列記すれば
狗塚らいてう:ヤシャガシマに暮らす祖母
狗塚真大:兄弟妹の父で学者。馬の歴史に詳しい。らいてう、に言わせれば狗塚家を滅ぼした男。
狗塚有里:兄弟妹の母。旧姓・坂倉。
狗塚牛一郎:体術に優れた長男で、弟とともに東北を移動する。
狗塚羊次郎:体術に優れた次男で未決囚。拘置所にいる。
狗塚カナリア:長女、四歳から七歳までと十一歳から十二歳まで何も喋らなかった兄思いの妹。
狗塚秋:カナリアの息子
狗塚夏:カナリアの娘
となります。年齢はあまり意味がありません。だって、登場人物はこの家族の年代史のなかで成長していますから。でもイメージでいえば祖母は80代、両親は50代、子供たちは20代、孫が2歳と5歳、でしょうか。そのくらいのアバウトさで読んだほうが疲れません。でもなんでこの本の名前が直木賞候補にあがっていなかったんでしょうか。私にとってはマリー・セレスト号の消えた家族並みの謎です。