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商品説明
北海道警察は、洞爺湖サミットのための特別警備結団式を一週間後に控えていた。そのさなか、勤務中の警官が拳銃を所持したまま失踪。津久井卓は、その警官の追跡を命じられた。一方、過去の覚醒剤密輸入おとり捜査に疑惑を抱き、一人捜査を続ける佐伯宏一。そして結団式に出席する大臣の担当SPとなった小島百合。それぞれがお互いの任務のために、式典会場に向かうのだが…。【「BOOK」データベースの商品解説】
拳銃を所持した警官の失踪、覚醒剤密輸入事件の偽装疑惑…。佐伯刑事たちは、それぞれの任務のため、警官としての信念と誇りをかけて疾駆する。「笑う警官」「警察庁から来た男」に続く、道警シリーズ第3弾。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
佐々木 譲
- 略歴
- 〈佐々木譲〉1950年北海道生まれ。「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、「武揚伝」で新田次郎文学賞を受賞。ほかの著書に「警官の血」など。
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紙の本
道警シリーズ、おもしろいです。
2009/11/22 21:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とら子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
道警シリーズを久しぶりに手に取りました。
相変わらず興味深く読みました。
メインの数人の真実と正義を求める姿勢が気持ちよいです。
シリーズ前作を読んでいないと楽しめないので、★4つにしました。
紙の本
「警官の紋章」とは「警察の紋章」ではない。警察権力の象徴ではない。組織の統制と団結力を象徴する代紋をさすのではない。それは市民生活の安全を守るために正義を貫こうとする名もなき警官たちの志をさしているのだ。
2009/02/02 16:59
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
警察官僚上層エリートの個人的な醜悪さを描く警察小説はよく見かける。エライ人イコールワルイ人と単純な図式だけにわかりやすく、これを叩きのめすたたき上げの警官の痛快な格闘ぶり、楽しく読める娯楽小説だ。
だが本当の悪はそうではないところに存在するのが現実ではないのだろうか。警察組織には特有の「倫理感覚」があって、それは手前勝手な論理に過ぎないのだが、その「倫理」に忠実であることが実は本当の悪行をなすことにつながる。この組織そのものの抜きがたい不正義体質をまるでノンフィクションのごとくにリアルに描き出し、著者は遠慮なくシリアスなメスを入れる。同時に優秀な現場警察官たち同士の寡黙な厚誼と不器用ではある彼らの正義追求の信念を讃える。いや警察組織だけではなく一般のサラリ-マン社会でも似たり寄ったりのところがあるものだから、読者としてはついつい共鳴するところが多い。このタイプの警察小説で、しかもミステリーとしても完成度が高く、ストーリー展開の緊張感が全編を貫く。こんな娯楽性もたっぷり盛り込まれている傑作を次々と発表できている作者となれば、今、佐々木譲は斯界の第一人者ではないだろうか。
北海道警察本部の警部が二年前に死亡し、交通事故扱いとされた。が、道警の裏金作りに絡む不祥事を告発する証言者であった彼に、上層部は偽証することを強要していた。組織の倫理と警察官の正義、折り合いがつかないまま板ばさみになった挙句の覚悟の自殺であった。父の死の事実を今知るにいたった日比野伸也(北見警察署勤務の警察官)が思いを秘めて、拳銃所持のまま姿を消す。冒頭50ページ弱のスタートから切れ味には格別のものがある。
北海道警察本部は洞爺湖サミットのテロ対策として特別警備結団式を一週間後に控えていた。道警本部長はもちろん、警視総監、各県警本部長、警察庁長官、国家公安委員長、内閣府特命サミット大臣、内閣情報官らが出席する大イベントである。サミット本番に向けた警備の試金石でもあり、絶対に不始末は許せない。日比野巡査の身柄確保、いざというときには射殺をも暗示する指令の下、道警あげての極秘捜査網が敷かれる。洞爺湖サミットといえばつい昨年7月のことだから、道警本部の緊張は実にリアルである。また大胆に洞爺湖サミットを背景にした構想力にも感服する。
津久井卓、二年前に上層部から射殺命令が下されながらも生き残り、不祥事暴露の証言をし、今冷や飯を食らわされている警官。彼は日比野伸也の追跡を命じられた。日比野失踪の理由がまったくわからない状況から捜索がはじまる。
佐伯宏一、二年前にでっち上げで殺人犯にされた津久井を救い、警察官の正義を貫いた警官。煙たがられている彼は今、当時未解決のまま放置された盗難自動車の輸出とその背後にある覚醒剤密輸入おとり捜査の真相を追っている。
小島百合、凶悪犯を瞬時の反射神経で射殺した腕と度胸を買われ、女性の特命サミット大臣を担当するSPに指名された。大臣暗殺が起こりうるとの情報に、もしかしたらビッグな手柄を立てられるかもしれないと気分は高揚している。
お互いに情報交換をするではなくそれぞれが任務を遂行するが、やがて、読者の予想通りに三人の軌跡は式典会場へと集中することになる。「八日前」から始まるストーリーは「七日前」「六日前」から「その日」(結団式当日)へと。緊迫感はいやがうえにも盛り上がる。ここまで引っ張っておいて、式典がつつがなく終わるきれいごとでは読者に申し訳がない肩すかしだろう。
狙撃!パニック!
勿論、昨年の洞爺湖サミットに関連してこれだけの事件はなかったのだが、著者のサービス精神は決して読者の期待を裏切らないのだ。これがフィクションの強みである。
警官の紋章を胸に刻んだ俺たちはおまえたち警察官僚とは資質が違うのだ。法のまっすぐな執行官として俺たちはおまえたちの超法規行為を許さない。不正義への怒りが志を同じくする男たちの厚誼へと昇華され、心地よい解放感にとってかわる。信念と誇りを持った警察官の本物の正義の遂行を高らかに謳い上げた傑作である。
蛇足ながらこの作品は『うたう警官』(変に改題されて『笑う警官』となっている)の事件についてもう一方の真実を明らかにする仕掛けがあること、津久井、佐伯という男の人物詳細が省かれていることから、『うたう警官(笑う警官)』 をまず読んでおいたほうが読書の値打ちは倍増します。