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商品説明
舞い込んだ不思議な仕事。墓前での奇妙な花宴。そこで依頼されたのは肖像画の修復。報酬は、桜を活けた古備前というが…表題作ほか、藤田嗣治の修復を依頼された佐月が偶然、十五年前に別れた恋人に再会する「葡萄と乳房」。暁斎の孫弟子らしき謎の絵師を探るうちに思わぬ真実が立ち現れる、書き下ろし「秘画師遺聞」の全三篇。北森ワールドに浸る絵画修復ミステリー傑作連作短篇集。【「BOOK」データベースの商品解説】
墓前での奇妙な花宴で依頼されたのは、肖像画の修復。報酬は、桜を活けた古備前というが…。表題作ほか全3篇を収録した、ミステリー連作短篇集。花師と絵画修復師、2つの顔を持つ佐月恭壱シリーズ第2弾。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
虚栄の肖像 | 5−104 | |
---|---|---|
葡萄と乳房 | 105−182 | |
秘画師遺聞 | 183−245 |
著者紹介
北森 鴻
- 略歴
- 〈北森鴻〉1961年山口県生まれ。駒沢大学文学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、執筆活動に入る。「狂乱廿四孝」で鮎川哲也賞、「花の下にて春死なむ」で日本推理作家協会賞を受賞。
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紙の本
前作でも、人を支配するのに暴力を駆使する朱建民の存在が不快でならなかったのですが、今回もそれは変わりません。黒幕?どうみても中国ヤクザでしょ・・・
2009/03/23 20:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装画の中山尚子、私にとっては久しぶりの感があります。私は彼女の塔をモチーフにした作品が好きで、わざわざ銀座のリクルート本社の一階にある画廊に、個展を見に行ったことがありますが、彼女の作品を東京で見ることはそれ以来ありませんでした。もう10年近く経ったと思います。
とはいえ、彼女の本拠は中京地区なので、向こうでの発表はその後も続いていたようです。カバー画も偶に見ていましたが、以前ほど見かけなくなっていた気がします。そういう意味で久しぶりなんですが、さらにいえば画風もだいぶ変わったかな、なんて思います。
もともと色使いがうまくて、線の柔らかいところが好きだったのですが、モチーフとしては塔というかバベルの塔のような螺旋と組石造の組み合わせのようなものが多かった。今回はそういうわかりやすいものを中央に置くのではなく、中抜けにすることで不安感を煽る、そういう絵になっています。装幀は文藝春秋の本を多数てがける大久保明子です。
出版社のHPにはこの本について
花師と絵画修復師の2つの顔を持つ佐月。藤田嗣治の絵の修復のため立ち寄った寺で、昔の恋人に再会して……。書下ろしを含む3篇
花師と絵画修復師の2つの顔を持つ佐月に不思議な依頼が舞い込む。墓の前の古備前に桜を活けるというもの。その桜を愛でながら繰り広げられる奇妙な花見の宴。その席で、佐月はもう1つの仕事、絵画修復の依頼を受ける。報酬はその古備前だというが……表題作ほか、15年前に別れた恋人と京都の桔梗寺で偶然再会したところから始まる「葡萄と乳房」など、書き下ろしを含め、連作短篇3篇を収録。
一度読めば癖になる北森ワールド炸裂の花師・佐月恭壱、今回は、佐月の過去が交錯するシリーズ第2弾です。(YN)
がそれで、これで充分分かるのですが、あえて各話について初出と簡単な内容紹介をしましょう。
・虚栄の肖像(別冊文藝春秋2007年5月号・7月号・9月号):霊園で古備前の甕に花を活けるという奇妙な仕事。そして依頼された肖像画の修復。どうみても修復の価値のない素人が描いた絵の修復の代償は、数百万はくだらないという古備前・・・
・葡萄と乳房(別冊文藝春秋2008年1月号・3月号・5月号):今度の仕事は、二枚の藤田嗣治作品の修復。どちらも贋作ではないものの、ビチュウムの使い方が気にかかる。依頼主のいる京都に向かった恭壱が出会ったのは・・・
・秘画師遺聞(書き下ろし):全く無名の絵師が描いた女性の緊縛画。秘所の三つの黒子をさらけ出す美女の絵に魅入られた恭壱は、その作品修復の道と、暁斎の孫弟子とも思える謎の絵師・英斎のことを探るうちに・・・
読みながら、あ、あの続きかと思い出しました。『深淵のガランス』がそれで、装幀について私はこんなふうに、随分文句を書いています。
※
大久保の仕事が、装画のイメージまで含むものかどうかは分らないので、画を担当する中山尚子のことに絞りますが、この人の本領はなんとっても幻想味のある風景というか、ちょっと北見隆の絵から黒味と人物を抜き取って、色合いにやさしさを持たせたようなところがウリなわけでしょ。ジックラドのような斜路をもった塔なんて得意技ですよ。
でね、その人が今回は完全に模様というかパターンみたいなもので勝負しちゃった。いや、もしかすると今までの仕事の延長線上の部分を拡大したのかもしれませんよ、でもね、私には所詮ウズウズの色竜巻でしかない。ちっとも快、じゃないわけですよ。これは我が家の高三長女も同意見で、本を見た瞬間に「私、嫌い」ですもの。ちなみに、彼女も北森の大ファンなんですよ、狐目も好きだし、冬孤なんかも大好き。でも、これは駄目。勿体無いですね、やっぱり外見は大切なんですよ。
※
とね。それに比べれば、今回は及第点かななんて思います。で、登場人物ですが
佐月恭壱:花師で、副業として絵画修復の仕事もする。
前畑善次朗:絵画修復師であった恭壱の父に仕えていた女好きの老人。今は恭壱の仕事の補助をしている。
倉科由美子:絵画修復の第一人者と言われた倉科教授の娘で、恭壱の大学時代の恋人。15年前父親の反対で恭壱との仲を裂かれる。
朱明花:飲み屋のママ、といっても若い。父親のもとを離れて暮らすが、恭壱の仕事の内容を平気で父親に知らせ、それが恭壱を苦しめることに心の痛みを感じない、いかにも中国人といった嫌な女。
朱建民:朱大人、と呼ばれることの多い欲の皮の突っ張った貿易商。金にものを言わせ、暴力を平気で振るうヤクザとしかいいようのない人物。明花の父親。
ミヤギ:朱大人のボディガードで、暴力担当。冷血、というより人間ではない、と考えたほうがいい。
若槻伸吾:転売の難しい絵画を精査、修復をする絵画研究所の所員。恭壱の友人で、彼のために研究所に内緒で検査などをする。
となっています。前回も朱建民の存在が不快でならなかったのですが、今回もそれは変わりません。そして、朱に対して簡単に屈する恭壱についても魅力を感じない。まして、自分の好きな相手の情報を父親に垂れ流し、好きな男が父親の暴力の前に傷つき苦しんでいるのに、気付かない明花なんて、所詮、中国人なんてこんなものさ、なんて思ったりもします。
それに比べれば、今回の話を貫く愛の哀しくも美しいことといったら。で、思うんです。男は逃げたらアカン、って。そういう意味で、どんなに謎を解いたとしても佐月恭壱には魅力かんじないな、って思います。総じて北森作品は好きなのですが、笑いが笑いにならない「支那そば」シリーズとこの第三国人が暴力やり放題シリーズは、いやだな、って思います。
紙の本
前作よりも、すっと心になじむものを感じた連作短篇ミステリー
2009/02/20 00:06
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『深淵のガランス』に続き、花師と絵画修復師のふたつの顔を持つ男、佐月恭壱(さつき きょういち)が活躍する連作短篇シリーズの第2弾。
暗い翳を身にまとう佐月に持ちかけられる絵画修復の依頼。
朱大人(しゅたいじん)と朱明花(しゅ めいか)の親娘、善ジイこと前畑善次朗(まえはた ぜんじろう)、若槻伸吾(わかつき しんご)、さらには「冬の狐」を名乗る女旗師など、ミステリアスな雰囲気を帯びた脇役たちが、主人公・佐月の活動をサポートするところなどは、前作同様。
しかし、登場人物の顔見世的な意味合いもあってか、せわしなく分かりづらかった前作と比べて、本書では話に落ち着きが生まれ、すっと心になじむものを感じました。前作よりも親しみやすかったなあ。
本書収録の「葡萄と乳房」「秘画師遺聞」では、佐月にとって大切な人物が登場し、佐月の想いがぎりぎりとしなっていくところに、話の緊張感と深みが生まれています。連作短篇ならでは、話がつながってゆく面白味があるので、この順番どおりにお読みになりますように。
ところで、2008年10月4日付けの朝日新聞朝刊の社会欄に、「ゴッホの黒猫 やっぱりいた X線で解析、発見」の見出しの記事が出ていました。なんだかとっても、北森 鴻のミステリの匂いがするなあと。あるいは、細野不ニ彦の漫画『ギャラリーフェイク』シリーズの匂いが・・・。
名画の裏に隠された別の顔を見つけるサプライズ。それは、北森鴻の「絵画修復師」シリーズのモチーフのひとつでもあります。
シリーズ第3弾は、いつ出るのかな。楽しみですね。