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商品説明
あの震災から九年、神戸にある「冬景楼」と呼ばれる館で奇妙な事件がおきた。一人の女性が、首を絞められ、現場にいた、もう一人の女性は「壁の中に棲む魚の怪物が襲った」と奇妙な証言を…。探偵の有希は事件の真相を追うが、かつてない謎と恐怖が次々に顕在化していく。【「BOOK」データベースの商品解説】
神戸にある「冬景楼」と呼ばれる館で奇妙な事件が起きた。ひとりの女性が首を絞められ、現場にいたもうひとりの女性は「壁の中に棲む魚の怪物が襲った」と奇妙な証言をする。探偵の有希は事件の真相を追うが…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
谺 健二
- 略歴
- 〈谺健二〉1960年兵庫県生まれ。大阪デザイナー学院卒業。アニメーターとして活躍する傍ら、「未明の悪夢」で鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。他の著書に「殉霊」「星の牢獄」など。
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紙の本
昨年、光文社が出した本の中で、装幀ベスト。中身もいいんですが、人間に魅力がないのが問題。これだけのトリックを考えたのに、勿体ない。ということで★一つ損した感じ
2009/06/30 20:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ともかく、造本とカバーデザインがいいです。特にレンガ作りの家であろう一部を撮った写真。その場の空気の透明さ、気温の低さ、若干の湿り気をさえ感じさせる壁の一部。高さが異なるアーチ型の窓には、なぜか板が室内側から張られている、それは小説の内容と似ていながら微妙に違う、それでいて思わず「これが現場」と思わせずにはいないものです。装丁は光文社の仕事が多い泉沢光雄、カバー写真 Zoran Milich/Masterfile/amanaimages です。
それと、著者名と書名が並んだ時の漢字の雰囲気がいいです。黒っぽくてインキが一杯詰まって、闇がそこから流れ出してくるような感じ。タイトルと小説のイメージをあわせるのが巧い谺ですが、今回もそれは変わりません。作品は目次なしの全33章という構成になっています。
話の内容について出版社のHPには
「冬景楼」と呼ばれる館で奇妙な事件が発生した。
一人の女性が首を絞められ、現場にいたもう一人の女性は、魚の化け物が襲ってきたと証言。さらに不可思議な現象が起きたという。探偵・有希が事件の謎を追うが……?
と書いてあります。舞台となるのは2004年の神戸で、探偵・有希とあるのが、主人公の有希真一、30代後半の探偵のようですが、高校生の美嶺とのことがなければ、どう考えても40台後半の精神を病んだ男としか思えません。その原因が、友人というか恋人というか、圭子という女性を三年前に事件で亡くしたことにあるらしいのですが、それもさほどきちんと描かれているわけではありません。
で、事件が起きた『冬景楼』に一人暮らすのが資産家の岩威佐代、74歳の老女です。『冬景楼』は大正末期に建てられた洋館で、阪神淡路大震災で倒壊こそしなかったものの、かなり痛んでいます。佐代は娘の依子、孫の秋弘を震災で亡くしています。次に紹介する真理亜との文通の中で、自分の邸に怪しい魚がいることを告白します。
老女と文通するのが氷野真理亜、神戸市東灘区の新生中学一年です。氷野良紀と三代子の一人娘ですが、4歳の時、両親二人を1995年の震災で無くし、叔父に引き取られていて、ケアのため様々な試みをしていて、その一つが佐代との文通で、それを通じて邸に現れる怪魚のことや、秋弘の飼っていた肺魚のことを知ることになります。
彼女は池本剛史というNPO『震災が作る絆』職員によって、冬景楼で岩威佐代とともに発見されます。真理亜は倒れている佐代が怪物である魚に襲われたと主張し、タイムスリップで震災直後の世界に行ったといい、証拠の写真を池本に示します。2004年に製造された使い捨てカメラのフィルムを現像すると、そこには9年前の震災現場に立つ彼女の姿があるのです。
そして、有希に探偵の仕事を依頼するのが、NPO『震災が作る絆』理事の加賀雪夫です。彼は事件後、全く家に帰ろうとしない真理亜のことを心配し、震災写真の謎を解くことを有希に依頼するのです。『ひまわりネットワーク』というNPOの職員で加賀と親しい藍場紀之も岩威佐代のことを気にかけ、有希に声をかけてきます。
以上が事件に直接関係した人たちですが、有希との関係だけで言えば、横沢美嶺という圭子似の女子高生が大きな存在です。震災直後、八歳のとき、岩威邸の近くでなにか恐ろしいものを見たものの、それが何であるか今になっても思い出せず悩み、邸の周辺をうろついているところを有希に目撃されます。
彼女は、そのとき見かけたものを少し思い出し、それを絵に描き、それが実在するかどうかの調査を有希に依頼することになり、探偵は二つの依頼を抱えることになります。彼女の両親は震災直後に離婚、父親とはそれ以来顔をあわせてはいないことから、彼女が探偵にに見せる甘えは、父親によせる思いが変形したもの、と有希は考えます。
途中まで、よくある話だよなあ、なにか今までと変わったところあるのかなあ、とバカにして読んでいたんですが、オッ、となります。ま、変に期待されると困るのでこの程度にしておきますが、谺はこれがやりたいために、この小説を書いたのか、なんて納得します。彼の作品をもう一度チェックしなおさなければ、なんて思いにさせられました。