紙の本
頭がいい人がミステリを書くとこうなる
2008/10/01 23:26
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
奥泉さんはですね、、めちゃめちゃ大作だった
「グランド・ミステリー」をずいぶん前に読み圧倒されたのですが、久しぶりに読んでみました。
奥泉さんは、芥川章受賞者で、文学と難しい系超技巧エンタメ小説の間をひらりひらりって感じの人ですが、
相変わらず、頭のよさが小説の行間から窺えます。(そこが難点かもしれませんが、、)
別に行間からでなく、使われている語彙、比喩、文章の上手さからなんかから充分感じられます。
巻末の解説で特異な文体と銘うって解説されていましたが、
これは、頭のよさというキーワードからから簡単に解説できます。
文章の視点が、文章内にもかかわらず視点が急激に変更されてつっこみがいれられると書かれていたのですが、
これも頭がいいから、三人称で書きながらも、奥泉さんの脳内であっという間に視点が切り替わり
読者サイドがこれを読んだらどう感じるかまでナノ秒で先回りし自動変換し
描写しながらもつっこみの文章までぱーっと書いてしまうわけです。
前置きが長くなりましたが、本書です。
偏差値が超低空の短大の助教授である桑幸(くわこう)こと桑潟幸一にところに伝説の童話作家溝口俊平の解説を依頼されます。
その後、桑幸の元に訪れた編集者が首無しの死体で短大の裏山で発見。
本書で、旅をしながら楽しみながら調べるのは元夫婦刑事(もとめおとデカ)のジャズシンガー
(別に(デカ)刑事でもなんでもないのですが)です。
頭がいいというキーワードで書いてきましたが、
ミステリのほうもそんなに複雑というわけではないのですが、
眩惑するといいますか、かなりの情報量を主人公の桑幸に主に与え、それから読者に与えて
二重三重によく作りこまれた、知識の迷宮に連れ込みなにがなんだかわからなくする感じです。
この辺にも奥泉さんの頭のよさが、、。
もう止めときます。
奥泉さんのその他の著作なんかから本作でも使用されるキーワードで
色々書きたいと思います。
【アカデミックな世界】
奥泉さんは、元々研究者を目指していただけにやはり
知識というか、兎に角、複雑に知識、知恵がかなり絡んだものが大好き。
それを端的に表しているのが、このアカデミックな世界。
学者さんや、よくしゃべる頭のいい人がサブ・キャラで出てくるときもあります。
【メタフィクションとしての小説】
これも、作りこまれた作品が好きみたいなので、
作品内で二重三重に出来上がっている創作みたいな感じにもよくなります
【巨大な陰謀、悪としての太平洋戦争】
奥泉作品には、よく巨大な陰謀装置、謎の組織、
又、ある意味全てを戦後にリセットした、または、できなかったものとして
太平洋戦争が取り扱われます。
【洞窟も含めて地底へ】
洞窟や、地底へ掘っていくイメージも
よくあります。本書でも登場。
【島】
これも、プラトン学園なんかでも出てきたのですが、
いい意味でもわるい意味でも隔離された場所
ある種、楽園的存在でもあります。
こんな感じでしょうか?
本作でも、この辺りから読み解けます。
本書も、一応ミステリの体裁をとっていますが、
メタフィクションとしての色合いのほうが、つよいかもしれませんね、、。
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2008/8/22 ジュンク堂三宮センター街店で購入。
2012/2/21~2/26
永らく積んでいるうちに、最近ドラマ化されたクワコーこと、桑潟幸一の活躍するミステリ。ある童話作家の原稿を持ち込まれたクワコー、自分が発見したことにして欲しいと頼まれてから、不思議な事件に巻き込まれる。探偵役の元夫婦コンビ諸橋倫敦、北川アキも良い味を出している。ドラマの原作は次作のようだが(ドラマは見ていない)、楽しみである。
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奥泉氏を知る最初のきっかけがこちら。
タイトルと、
ー桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活ー
のスタイリッシュ・・・て何?て気になりました。
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シューマンの指の奥泉光ということで読んでみたが、はまってしまった。近代文学とアトランチィスのコインと…いろんな謎が次々に現れ、狂言回しのような桑幸と元夫婦探偵が謎を解いているか深めているのかわからないように絡んでくる。くどいのが苦手な方にはお勧めできませんが、私には面白かったです。
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20120705
ひたすら長いけど読んでしまうと一気に読めて面白かったです。
やっぱり読ませるなぁ。
という感じで。
ボリュームはさておき、内容と着地点はちょうどよかったです。
オチも伏線がちゃんと回収されてたし。
情けなさが哀愁を呼んで、でも笑えない的な何かが桑幸にはありつつ。
いや、笑えるんだけどね。
アトランティスコインを巡る不思議体験ミステリ。
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あちこちに撒かれた駄洒落と小洒落、時空を駆ける仕掛けの数々、これはもう、この作者が春狂亭猫介に違いない、と思った次第。
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先に「クワコーもの」の新作を読んでいたので、本作があまりに違う雰囲気でびっくり。同じ登場人物だけど、シリーズ物じゃあないのね。新作クワコーは大いに笑ったけれど、こっちはこっちでとても面白かった。本格ものやらトラベルもの、社会派もの、ミステリーのいろんな型をサービス精神旺盛に詰め込んである。こういうの好きだなあ。才気あふれる、という感じであった。
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初奥泉光。最近出た「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」がおもしろそう、と思い、まずはこちらからと読みはじめたんだけど、いやいや、軽いユーモアミステリかと思いきや、だんだん本格ミステリや幻想や歴史モノ?といった様相になってきて。すっごく読みごたえがあってびっくり。おもしろかった! 本来わたしは幻想っぽいモノが苦手なんだけど、これはぜんぜんイヤじゃなかった。文語調の文体もよかった。奥泉光ってすごいかも!といまさら。軽薄なような濃厚なような、日常的なような非日常的なような。骨が太いというか。物語らしいというか。好きだ。突然だが、野田秀樹の昔の舞台を思い出すような感じがした。主人公のクワコーが、イヤなやつかも、いまひとつ共感できないかも、と思っていたら、ひどい人間ではないと最後にわかってよかった。だけど、あのラストからどういう経緯でまた准教授に復活しているんだろう?
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シリーズ2作目が出たということで、まず1作目のこちらから読むことに。
本格モノ、、、なのかな?予想していたものとは全く違う作風にビックリ。主人公(?)のクワコーはもちろん、探偵役の元夫婦も個性豊かなブッ飛んだキャラで、ユーモア小説としてはそれなりに楽しめた。本格モノは正直苦手だし、文字数もビッチリ詰まっていて若干引いたけれども、意外にもスイスイ読めて無事読破。内容自体は正直好みではなかったけれども、読ませる筆力には圧倒された。ラスト、あの状態からどうやって准教授になるのか、ちょっと気になる。
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桑幸、この頃から桑幸だったのね。いいわぁ。
ちょっと怪しいと思ってもスルー
目先のことに喜んでスルー
巻き込まれてると思ってもスルー。
サイン会のテンション上がり方なんて、さすが桑幸。
元夫婦刑事の探偵もよい味ではあった。
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「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」より先に、クワコーが主人公の小説があるというので取り寄せて読んだ。こっちは比較的真面目で読みごたえがあった。意外な人物同士のつながりが明らかになったときはすごく興奮した。
しかし読んでて妙に腹が空く小説だった…
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最底辺の短大の助教授であるクワコーこと桑潟幸一の元にある依頼が寄せられる。それは埋もれた文学者の未発見の原稿をあたかも自分が見つけたかのように振る舞って世間に公表することだった。ステップアップの足掛かりとしてクワコーはこれを快諾。そこから一連の事件が始まる。クワコーが解説を書いた本がベストセラーになるにつれて次々と周りで起きる殺人事件。悪夢に惑わされるクワコーと、独自の推理を進める元夫婦刑事。ロンギヌス物質とアトランティスのコイン・・・それらを結びつける事象とは!?
なんだろうこの不思議な感じは?
まずもってこの話、どこへ向かっているのかさっぱりわからない。というよりも読み終わった今でもいまいちわからないw
分厚いうえに特殊な文法を用いてる気さえする不思議な文章だけど、気づけばサラサラ読み進めてました。
なんとも言えない特筆すべき文章力ですね。
最初に『シューマンの指』 を読み、『鳥類学者のファンタジア』も今読んでる途中なんですけど、『シューマンの指』 が特殊なだけで、どうやらこっちの方が奥泉光的にデフォみたいですねw
時空を超えて進むミステリーはなかなか面白いですね!
たった1作品でSF的、ホラー、ユーモアといった著者の力量・多様性を見せつけられた気がします。
前半はわりとちんたらした感じだけど、後半はのぐいぐい引き込まれる感じはすごいです!
「小説なんてだらだらだらだらと垂れ流される汚物そのもの、臭くてかったるいうんこだ。」
お前が言うなwww
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長かった・・・伏線がたくさん貼られている上、文学的な表現が多様されているので、軽~く読めるミステリーじゃありません。
一文、一文かみしめるように読みこまないと、よく解らないまま終わると思います。
しかし・・・続編の「桑潟幸一准教授のステイリッシュな生活」が面白くて買ったのですが同一人物とは思えません。
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結構長い。アトランティスのコインをめぐる猟奇探偵小説。
でも登場人物に名探偵やあざやかに事件を解決する人はおらず、なんともなんとも頼りない人たちが探偵役。ギャグもいっぱい。
「久貝島」「楠根島」の地図が載っているが、「久貝島」「楠根島」は実在せず、実際の地図にはありません。本の中の固有名詞も実際にあるものを少し変えたものが多く、新聞は「産鶏」「灰日」「込賣」「旭日」、週刊誌は「週刊文秋」「週刊近代」「週刊新瀬」などなど。
また、文章も、中にでてくる、新聞記事や雑誌記事、手紙、報告書などがいかにもという形で記載されていて、文字フォントも変えている。
ミステリーらしく、伏線はいたるところに張ってある。
いっぱい盛り込まれた、すごく意気込みが感じられる本でした。
それにしてもタイトルの「モーダルな事象」って何だろう?
「スタイリッシュな生活」?これは、「泥水に蠢くナマズみたいなもので、少ない酸素を求め鰓をしきりにぱくぱくさせる」生活らしい。
「あざやか」とは正反対のミステリーです。
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長い。
文章じたいは軽くすらすら読めるが、改行がほとんど無く1ページに文字がギッチリ状態が600ページ続くから、ほんとに長く感じた。
読んでると、ここ話に関係ある?この文いらんくない?とちょっと苛々する。
主人公の妄想部分の描写をついつい面倒で飛ばし読みしそうになる。