紙の本
「ウォリス家の殺人」古典的なミステリーをどう感じるか
2009/10/02 16:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人気作家が殺人事件を起こした?
複雑な人間関係と
最近ではあまり感じられない格調高いというか、
古典的なミステリーを読んだような気分になる」
旅行に出掛かるときは、新刊で絶対読みたいものと
ブックオフで良さげなものを取り混ぜて
移動中も律儀に運んでいる、
読み終えるとそのホテルに置いてくる。
引き出しにそっと置いて来たつもりが、
チェックアウトの時に「忘れてましたよ」と
戻ってくることがあるけれど、
今まで何十冊と置いて来た本は
今はどこにあるのか、そう考えるだけで
楽しい。
この本はミステリーのベストテンのいくつかに
挙げられていて、かなり期待して読んだ、
すぐに気がついたのは、
現代的な作風じゃないということ。
これは後で分かるが、この作品が作者の遺作で
1981年の作品、
でも描かれる人間模様は時の経過を感じさせない。
こういうのって面白くて、
勝手に新刊は現代風と思い込んで読み始めるわけで
ここで展開する物語は
クリスティーとまでは行かないが
少し前の硬い文章なので
最初は戸惑うことになる。
作家と大学の教授とその周囲の人々、
何かを生み出す作業で名声を獲得した人物と
幼馴染で大学教授の主人公は
その人気作家に親密な情を
ほとんど抱いていない。
ミステリーなので殺人事件と
それに続く事件が起こるが、
どこか一歩引いたところから
中を覗いているようなもどかしさを感じる、
臨場感というか、今起こっている生々しさが
もうひとつ感じられないのだ。
それでもこんな風に登場人物をしっかり
書いてくれていると、
「あーわかるな」という部分もいくつもあり、
ミステリーというより、それを生み出してしまう
人間の心のほうに重点があるように感じた。
斬新な発想やトリックは無いが、
他人の才能をどうして羨んでしまう心、
それが人間関係をどこかで踏みとどまらせ
幼いころから一緒に暮らしながら
心を通わせることが無いのは
寂しいことだけれど、なんか分かるな。
「自分はこうありたい」
誰しもそう思う、でも何かがそれを踏み越えさせなかったり、
その達成を阻害したり
そうそううまくいかないのが人間なのかもしれない。
★100点満点で70点★
http://yaplog.jp/sora2001/
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読了後、まず天を仰いで唸ってしまった。「う、上手すぎる」。この感想に尽きる。
何が上手いってもう全体的に上手いんだけど、まずは出だしの五十頁の情報の出し方が上手い。
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さりげなく伏線を張ってくるので最後まで犯人は分からなかったけど、言われてみると確かにその人物以外考えられなく思える。こういうミステリを読むとまたミステリ熱が再燃してくる。
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1981年の作品。2008年8月発行。
舞台は1962年。
歴史学者のモーリス・スレイターは、幼なじみの作家ジョフリー・ウォリスの邸宅に招待される。
妻のジュリアとも旧知の仲、そこの娘の美しいアンとモーリスの息子クリスは婚約中。
ところがジョフリーは急に老けて家庭は冷え切った様子。
スコットランドで暮らしていたジョフリーの兄のコンラッドが村に滞在し、脅迫しているらしいという…
そして、事件が?
辛口の描写で主人公がいい人なのかどうか判然としないが、まあありがちなぐらいの人で周りが強烈すぎる?
日本では知られていなかったディヴァイン。イギリスの本格ミステリを楽しめます。
「悪魔はすぐそこに」に続いての翻訳。
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友人であるジョフリー・ウォリスの招きをうけてガーストン館のやってきたモーリス。ジョフリーの兄ライオネルの帰還。ジョフリーを恐喝しているらしいライオネル。1人の女性をめぐる2人の過去。行方不明になるジョフリーとライオネル。ジョフリーの遺体発見。逮捕されるライオネル。ジョフリーの日記を出版するために執筆をするモーリス。モーリスの息子クリスとアンの婚約の破たん。戦争時代のジョフリーの謎の行動。
市川図書館
2010年9月26日読了
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ディヴァインも3冊目になると一人称で小説が語られている
にもかかわらず、その人物さえも怪しく思える。
偽の手がかりをちらつかせ真犯人への注意をおろそかにさせる
テクニックをレッド・ヘリングと呼ぶらしいが
作家の腕の見せ所のようだ。ディヴァインのレッド・ヘリングと
エンディングまで犯人を隠し通すテクニックは本当にみごとだ。
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淡々と手堅くまとめた作品……というのが第一印象。テクニカルではありますが、ケレン味やユーモアは皆無と言いますか。
ディヴァイン作品の初読みだったのですが、一目惚れするほどの私の好みに合致してはなかった、という感じです。話の展開、伏線のちりばめ方、解決のロジカルな部分など上手だとは思います。
もう何作か読んでみると評価も変わるのかもしれませんので、引き続きこの作家さんの本は注目していきます。
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招かれて訪れた人気作家の邸宅で起こった失踪事件。
やがて作家は死体で見つかり、憎みあっていた兄が犯人とされるが…。
とりあえず本格。なので、きちんと謎とヒントは提示されている。
気をつけて読むとちゃんと犯人が分かるようになっているのだけど、なんだかこう、謎のそこが浅いというか…。
主人公と息子の関係が話を邪魔しているような感がある。
作家の家族関係が複雑で愛憎入り乱れているのだから、そちらの描写に力をいれた方がよかったんじゃないかと思う。
ラストもあっさりしすぎていて余韻には程遠く、評判の割には肩透かしだった。
ついでに、あの表紙はネタバレにならないのかな?
つい気になってしまった。
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あとがきにもある通り、小説部分と推理、捜査部分がうまく融合しています。しかも小説部分がとてもおもしろいので、複雑な人間関係にわくわくしていると、散りばめられたヒントに気付かない。
このさりげなさに毎度引っかかっています。
ラストの犯人との攻防は、緊迫感もあり痛々しいものでした。
驚愕のトリックがあるわけでもなく、緻密なロジックがあるわけでもなく、気味悪さもユーモアもないので、地味でおもしろくない、という意見もありそうです。
が、「英国本格推理小説」という手堅い雰囲気が抜群に良くて、一般人である探偵役が事件にのめりこんでいく様もとても自然。警察がきちんと捜査していて間抜けさを感じないのも良いです。
人間模様を描いた小説とパズル要素がお互いに相乗効果を上げており、ミスリードの巧さに唸りました。
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続けてディヴァイン。解説にもありましたがこの作家、相性が合う人なら外れなく面白いけれど、割と設定などのバリエーションが狭く、似たようなというか得意のパターンがあるので、訳出するにあたっては読者が飽きないよう、順番などを工夫したそうです。確かに少ない登場人物で確執のある親子関係に意外な犯人と、概略だけにしてしまうとまたこれか、という話ながら、人物の書き分け描写が丁寧で謎解きが無くても楽しめるほど。犯人は意外な人物なので、読みながら「この人だったら残念、でもまさかね」という人が犯人だったりするので、推理ではなくて心情的に予想がついてしまうという難点はあれど、それでも十分面白いです。今回は親子間、夫婦間、兄弟間の確執が入り乱れるなか、探偵役の大学教授が一人称で起こったことを回想するという書き方なのでサスペンスの雰囲気を漂わせつつお話が展開して読みやすかったです。
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ぼちぼち読んでいるディヴァインの中で、個人的に一番好きな作品。犯人と対決するシーンは躍動感があってスリリング。
反面、『訳者あとがき』にもある通り、バリエーションの少なさは感じる。
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D・M・ディヴァインの『ウォリス家の殺人』を読了。
本作を読む前「ディヴァインの作品は初めてだ」とツイートしたら、フォロワーさんから「ディヴァインは安定した面白さがある」という風なリプライが。読んでみて、なるほど、お手本的な作品だったと思う。
至って本格ミステリ。驚愕するようなトリックなどは使われていないのだが、ミスリードが上手い。ごく自然な会話の中に、罠が仕掛けられている。
さらに、犯人がかなり意外だった。推理小説などで最初に疑われる人物はだいたいは犯人ではない、というのがほぼ通例だと思うが、本作も例に漏れずだった。そうとは言え、犯人は登場人物中でもかなり意外だった。もしやと考えなかったわけではないが、それにしては動機が全く思い当たらなかったからである。最後まで読んでよく分かった。
読みやすさもある。これに関しては翻訳者次第だが、本作を手がけた中村有希という方はいい訳をされていると思った。本編とは関係のないことではあるが、この点も評価したい。
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それぞれ思惑を持った怪しい人物たちが、好き勝手に行動するため事件の構図が捉えづらくなっているあたり、ディヴァインの巧さが伺えます。
話の展開が遅く、焦れったい感はあるものの、それが事件をよりいっそう捉え処のないものにしています。
ディヴァインは探偵を使わないため、主人公にその任を負わせることが多いのですが、本書は被害者の伝記を書くということでその辺りの違和感が解消されているのも流石。
真相は作者お得意の意外な犯人というよりは、犯人が犯人足り得た理由が光るもので、まさに府に落ちるといった感じです。
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なぜモーリスが今だに元妻に高額の慰謝料を払い続けているのかがわからない。モーリスは、ヘレンとキッパリ縁を切って第二の人生を歩んでほしい。その方が、希望が持てる終わり方だったと思う。
クリスはジェーンとくっつくことになるのかな? モーリス親子はウォリス家にはもう近づかない方がいいと思うんですが…。
毎作登場するディヴァインの「だめんず」 今作の「だめんず」はクリスだな。誰彼無しにいい人すぎるクリス。アンの正体に気づくもずるずると…。こういうところは、父親似ということですかw
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謎解き、あらすじよりも、世界観「カーボンコピーを持っていかれました」とか、主人公含め、超人的な人物が登場しなくて、みんな何かどっか脛に傷を持っていて共感させられるし、シリーズとして惹きつけられる作者なんだよなあ。普段何気ない顔をして生きているが、遺産という魔物の出没により、理性きれいごとカバーが剥がされ、出てくるー、欲望ー。うーん、でも生きてくならお金かかるし、しょうがないよね人間だもの。