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商品説明
若き騎士と宇宙生命体。故郷をなくした二人の出会いが神聖ローマ帝国の歴史を動かす!待望の書き下ろし長篇歴史SF。【「BOOK」データベースの商品解説】
故郷を失ったヨーロッパの若き騎士と、孤独に生きる宇宙生命体。2人の出会いが、神聖ローマ帝国の歴史を動かしはじめる…。俊英・小川一水が描く、初の歴史SF。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小川 一水
- 略歴
- 〈小川一水〉1975年岐阜県生まれ。SF作家。宇宙作家クラブ会員。2004年「第六大陸」で第35回星雲賞日本長編部門受賞。他の著書に「こちら郵政省特配課」「導きの星」「老ヴォールの惑星」など。
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紙の本
国破れて山河在り。残った何かは誰かに受け継がれていく
2008/10/04 21:38
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
神聖ローマ帝国の時代。騎士ルドガーは父に疎まれ、所領の辺境へ徴税役として流される。そこで彼はレーズと名乗る人外の力を振るう女に出会う。千年以上も生きる彼女が願うことはただ一つ。その場所に帝政ローマの時代の繁栄を取り戻すこと。ルドガー達の街興しの戦いが始まった。
系統的には、「導きの星」「時砂の王」のように、超越者が現地人を導いて行く、というお話。前述の物語との違いを挙げるならば、超越者視点ではなく、現地人視点で描き続けることによって、SF色が極めて薄まっていることだろうか。ほとんど、中世ヨーロッパの仮想歴史物と言っても良い。
何作か前から思っていたことだが、以前と比べて作風が少し変わってきているような気がする。以前は、やたらと元気でテッキーな女の子が縦横無尽に走り回るという、キャラ中心で、それに技術的な要素を付け加えるという感じだった。しかし、最近は、人間自身よりも、人間が作り上げる何かが中心になっている気がする。一言で言ってしまえば、その何かとは歴史なのだろう。
「導きの星」「時砂の王」では生命体の歴史という大きなものを描こうとしていたように見えるし、「妙なる技の乙女たち」では宇宙時代の幕開けという歴史を描こうとしていたように思える。技術好きが高じて、技術が生まれた背景に目が向くようになったのかもしれない。不遜な言い方だが、幅が広くなったように思う。
本作、興亡記と銘打っているが、レーズスフェントの勃興について描いたのみで、衰亡には全く話が及んでいない。ひょっとすると、続編があるのかも。でも、その際には文庫で出版して欲しいな。
紙の本
騎士道物語とファンタジーをミックスした、日本で言えば一昔どころか二昔、それ以上前の時代小説。でも、これが面白いんだなあ、さすが小川・・・
2009/03/16 21:35
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
真っ先に長女が、この本に反応しました。ただし、小川一水の名前にではなく、カバーの画に。「ね、それってムラタレンジじゃない?」「え、デンシレンジ?」とまあお寒いオバンギャグを返して顰蹙を買いましたが、彼女が言いたかったのは装画を書いた村田連爾のことなんですね。ちなみにネットをチェックすると公式HPでは村田蓮爾、と「連」の字が「蓮」になっています。
私は全く知りませんでしたが、一時は漫画家になることを夢見、今も毎日のようにBLかイラスト、コミックスのサイトをサーフィンしている彼女は、以前から村田がお気に入りとか。あわてて私も彼のGYALLERYを見て、ああ、これは可愛いわ、CGっぽくて私の好みではないけれど、時代の作家だな、なんて肯くことしきりです。
でも、私としては小川一水の名前に反応して欲しかったな、だってあの『妙なる技の乙女たち』(ポプラ社2008)の作家なんだぞ、って思ったんですね。ま、第35回星雲賞日本長編部門受賞作『第六大陸』を未だに読んでいない私にとやかく言える筋合いじゃないんですが・・・
それと装幀です。地図製作も含めて担当したのが伸童舎です。私はよく知りませんが、この本をハードカバーで出す、としたのが伸童舎の判断だとすると、それは正解だったな、と読み終わって感じました。内容的にはファンタジーなので、ソフトカバーで単価を安く、というのも理解できるんですが、かなり本格的です。ある意味、村田連爾の装画のほうが可愛らしすぎて内容に合っていないかもしれません。
で、このお話、書き下ろしなのはいいんですが、本を開いて愕然とします。な、な、なんと目次がない・・・。仕方がないので、もう一度本を見直して各章のタイトルを探し出すことにしました。「レーズスフェント」が繰り返されるだけの、とりたててどうこう言うタイトルではないんですが、あえて目次を無くす理由があるとも思えません。以下のようになっています。
前史
第一章 レーズスフェントの開闢
第二章 レーズスフェントの承認
第三章 労務修士L・Fの決意
第四章 レーズスフェントの発見
第五章 レーズスフェントの躍進
第六章 レーズスフェントの決戦
終章
内容紹介文は出版社のHPから拝借します。
父親と対立して、辺境に追いやられた若き騎士ルドガーは、赴任した領地でカエサルと古代ローマを知っているという、不思議な街の守護精霊「レーズ」と出会う。実は彼女の正体は遠い星の彼方からやって来た巨大な異星生命体の対外感覚器官だった。ともに故郷を亡くし、固陋なキリスト教の因習に反発する二人は、中世ヨーロッパの海に面した三角洲に、今までなかった街「レーズスフェント」を作り、帝国自由都市を目指す。だが、街が発展するにつれて辺境伯やハンザ同盟の怒りを買い、同じく異星生命体と接触を持ったデンマーク国王との戦いへとつながっていく・・・・・・。はたしてレーズスフェントの未来は?俊英・小川一水が、初のハードカバーで描く歴史SF!
がそれなんですが、異星生命体が出てくるからSF、と思い込むと間違いだと思います。むしろ、トールキン『指輪物語』やル=グウィン『西のはての年代記』といったYA向けファンタジーの傑作を思い浮かべるほうが正しいと思います。無論、異界生命体の名前がこの小説のタイトルになるくらい、その存在は重要なものであることは間違いないのですが、動きはファンタジーにでてくるよき魔女、といったほうがいいでしょう。
恋あり、争いあり、反目あり。それに宗教ありと、ファンタジーの王道を歩むものではないでしょうか。織田信長の楽市楽座を思わせる市場の形成、というか田舎村が商業で栄えていく様も描かれ、年齢を問わず受け容れられる内容でしょう。やはり、SFというジャンル分けは忘れたほうがいいかも、です。あくまで正統的歴史ファンタジーが正解でしょう。
話は主の年1336年から始りますが、イメージ的にはそのまま地球のヨーロッパ中世に当て嵌めるほうが理解しやすいでしょう。私が読んで「小川はこういうものも書けるんだ」と、ある意味驚きました。神林長平が登場したときのような衝撃こそ感じませんが、作家の才能と将来性は充分に感じられる秀作です。
最後に登場人物を紹介しておきます。
レーズ:モール庄の泉に住む長命の宇宙生命体で、姿を自在に変えることができます。このお話では、美少女としてその若々しい肢体を主人公ルドガーに見せたりします。伴侶となる生命体ラルキィの訪れを待つ、人に優しい存在です。
ルドガー・フェキハウゼン:騎士。フェキハウゼン男爵の三男で、父ともどもキルクセナ家に仕える。20歳の時、弟とともに、父の命を受けエギナ河口の荘園、モール庄を治めにやってきた。
リシュアン・フェキハウゼン:ルドガーの弟で、主の年1336年に17歳になる。聖職者の修行中。
ヴォルフラム・フォン・フェキンハウゼン:男爵。ルドガーの父で50歳を越えたばかり。
フォス:フェキンハウゼン男爵の長男。
コンラルド:フェキンハウゼン男爵の次男。
エルス:ルドガーの父が息子に同行させた料理人。
ヴァルブルク:ルドガーの父が息子に同行させた巨漢の下男。
アイエ:モール庄の農民の娘。
アロンゾ:女好きの司祭。
ハインシウス・スミッツェン:キルクセナ伯爵家の家臣で騎士。ルドガーの師にあたる。
ルプレヒト・キルクセナ:神聖ローマ帝国皇帝から東フリーラント伯爵に封ぜられた貴族。
エルメントルーデ:ルプレヒト・キルクセナの三女で、15歳の時モール庄にルドガーを訪ねてくる。11歳の時、キルクセナ家で学んでいたルドガーと知り合う。
紙の本
テーマは壮大だが、ストーリーは薄い
2008/10/14 20:27
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
一つの町を作りあげる歴史ロマン+SFテイストの壮大な物語
ただ、SF的な部分は機能しきれておらず、テーマではなく便利なギミックでしかなく「これ必要かな」と思わせる
歴史的過ぎてざっくりした感もあり、キャラクターが駒になってしまっている部分が多い
町の描写もあまりなくて、人々の活気が見えず「村に毛が生えた程度」という認識しかもてず栄えてる気がしない
文章自体は読みやすいが深みがなく、その時代・世界の人々の意識・認識・精神性まで突っ込んで描けていない
現代的で、軽く、薄く、見えすぎ、分かりやすすぎ、読みやす過ぎる