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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.7
- 出版社: 祥伝社
- サイズ:20cm/370p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-396-63299-1
紙の本
しらみつぶしの時計
著者 法月 綸太郎 (著)
無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻んでいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一...
しらみつぶしの時計
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商品説明
無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻んでいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一四四〇個の時計—。正確な時間を示すのは、その中のただ一つ。夜とも昼とも知れぬ異様な空間から脱出する条件は、六時間以内にその“正しい時計”を見つけ出すことだった!?神の下すがごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にはいかにして辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎、!名手が放つ本格ミステリ・コレクション。【「BOOK」データベースの商品解説】
閉ざされた施設の中には、すべて異なる時を刻む1440個の時計があった。ここから脱出する条件は、6時間以内にその中から“正しい時計”を見つけ出すことだった−。表題作ほか全10編の本格ミステリを収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
使用中 | 7−46 | |
---|---|---|
ダブル・プレイ | 47−90 | |
素人芸 | 91−125 |
著者紹介
法月 綸太郎
- 略歴
- 〈法月綸太郎〉1964年松江市生まれ。京都大学法学部卒。88年に「密閉教室」でデビュー。「都市伝説パズル」で日本推理作家協会賞、「生首に聞いてみろ」で本格ミステリ大賞を受賞。
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紙の本
マニア向けに書かれた本格ミステリはここまで面白くなくなる、っていうお手本のような一冊。その筋では評価されても、これじゃあ小説読みは納得できません。、『犯罪ホロスコープ』の楽しさはどこ?
2009/01/10 17:42
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
突然ですがカバー折り返しの言葉から入ります。
無数の時計が配置された不思議な回廊。その閉ざされた施設の
中の時計はすべて、たった一つの例外もなく異なった時を刻ん
でいた。すなわち、一分ずつ違った、一日二四時間の時を示す一
四四〇個の時計――。正確な時間を示すのは、その中のただ一つ。
夜とも昼とも知れぬ異様な空間から脱出する条件は、六時間以
内にその“正しい時計”を見つけ出すことだった!?神の下すが
ごとき命題に挑む唯一の武器は論理。奇跡の解答にはいかにし
て辿り着けるのか。極限まで磨かれた宝石のような謎、謎、謎、!
名手が放つ本格ミステリ・コレクション!
ええ、これはそのまま写したものですが、最後から二行目の最後、「謎、謎、謎、!」は「謎、謎、謎!」が正しいんじゃないでしょうか。横書きのものでは分かり難いでしょう、是非実物を見て確認してください。違和感、ありありです。これって本当にプロの技?装幀は抜群のセンスなのに。
いや、装幀といってもあくまでカバーのお話。各話の扉のデザイン、ちょっと不満です。本の小口を見てください、チョット汚れのようなものが・・・。実はこれ、扉に打たれたタイトルの痕跡です。左上に大きな文字を寄せて、それが紙の端に懸かっているので、小口を見るとそれが模様になる。これはいいんです。
デザインとして分かります。でも、それなら統一しろ!って。イン・メモリアム、猫の巡礼、四色問題、の三タイトル、どうしてそのポリシーを守らない?カタカナだから?だって、ダブル・プレイ、でやってるでしょ?製本の問題?逃げちゃあいけません。これって装幀家・松 昭教の仕事でしょ。それとも編集者?どっちでもいい、責任とれ!
なんてね、思うんです。この横の黒い汚れのようなものを見ながら、ああ、この話は長いな、思ったより短そう、なんて見当つけて読む側にしてみれば、それがいい加減なら迷惑しごく。そんないい加減なものなら、小口が汚くみえるだけじゃありませんか。デザインだから、って許されるのはそれがピシっとした考えでやられている時。手抜きはいけません、はい。
というわけで早速各話の紹介。
・使用中(『小説新潮』1998年6月号):スタンリイ・エリン「決断の時」を下敷き、とありますが原本を読んでいないので、それはともかく、こんなに愚かな編集者はありえないのじゃないでしょうか。北村薫『北村薫の創作表現講義 あなたを読む、わたしを書く』を読んだあとでは、リアリティを感じません。
・ダブル・プレイ(『NON』1998年10月増刊号):夫と妻の犯罪、というか交換殺人のお話。
・素人芸(『小説現代増刊 メフィスト』1999年9月号):夫と妻の犯罪。遊んでばかりいる妻が、夫に無断で贅沢な趣味に走ると・・・ロバート・ブロック「最後の演技」みたいな背筋の凍る話をめざしたそうですが、作者が認めるように今ひとつの感
・盗まれた手紙(『小説現代増刊 メフィスト』2003年5月号):暗号方式の一つに、ボルヘスが友人と共作した『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』に登場したヘルバシオ・モンテネグロが絡むのですが、正直、小説としては少しも面白くありませんでした。恋文の消失を巡る話ですが、論理ばかりで肝心の話が面白くありません。
・イン・メモリアム(『小説現代』2007年2月号):デイヴィッド・イーリイ「ヨットクラブ」が発想の元だそうです。珍しく、元本も読んでいます。追悼文を扱ったせいか、しんみり。ミステリとして読む必要は全くありません。ラストの捻りも不要、純文学でもいい?
・猫の巡礼(『小説現代』2007年6月号):作者いわく、本書中一番の異色作。テリー・ビッスン「熊が火を発見する」みたいな現代のほら話を目指す、とありますが、これまた知らないので関係は読めず。でも、現在、我が家では猫が人気なのとファンタジー好きなので楽しく読みました。老人の旅行を連想したりして。らしくない作品ではあります。
・四色問題(『小説NON』2004年11月号):都筑道夫「退職刑事」シリーズのパスティーシュ。ご本尊が少しも面白くないので、こちらもその影響を受けてしまったかもしれません。ダイイングメッセージだけで勝負、というのは今ひとつ。おなじパスティーシュなら「なめくじ長屋」のほうが小説としては楽しめるのではないでしょうか。
・幽霊をやとった女(『ジャーロ』2006年冬号):都筑道夫「酔いどれ探偵クォート・ギャロン」シリーズのパスティーシュ。これも都筑作品を読んでいますが、あまり元本を意識せず楽しんだほうがいいのでは。なぜ自分が焼死させられそうになったか、極めて論理的ですが、日本が舞台でも良かった気が・・・
・しらみつぶしの時計(『小説NON』2008年3月号):タイトルは都筑道夫「やぶにらみの時計」のもじり。カバー折り返しに説明してあるのがこのお話の骨子。お話、といえるかどうか。マニアは喜ぶんでしょうが、私としては個人的にはタイトルのみ評価したいところ。
・トゥ・オブ・アス(『小説NON』1998年6月号):あとがき冒頭に「断続的に発表した非シリーズ短篇(レギュラー探偵の法月綸太郎がとうじょうしない)を収録しました。」とあるのに、堂々と法月林太郎(字が違う、というのは作者も断っている)が登場する、アイデンティティーを巡る話、と堅く言えばなります。自分が恋していた相手は誰だったのか、というお話ですが、男がヘタレすぎて・・・若書き、と断り書きがあり、『二の悲劇』の原型だそうです。
あとがき
となります。お気づきでしょうが絶賛しているものは一つもありません。殆どが否定的、とまではいかないまでも楽しめない。パロディではありませんが、著者が触発された作品が先にあって、それを自分なりに工夫している。それを、あとがきではっきりとさせている姿勢はいいのですが、でもあまりにマニア向けというか自分だけが楽しんで納得している感があります。
「四色問題」「幽霊をやとった女」「しらみつぶしの時計」でお手本にされている都筑道夫ですが、彼の晩年の作品のいくつかが似た傾向を示していたことを思い出します。論理的なのはいいのですが、それで終ってしまい肝心の小説としての面白さが失せた作品群。鬼、と呼ばれる人たちの間では評価は高いのですが、私などはパズルを解くだけなら要らない、と積読のまま。
ま、都筑のもと歌は本来、ガチガチの本格ではなくてもっと粋で軽妙な作品だったはずですが、どうもそういう味わいを今の法月に期待するのは無理のようです。結局、お堅いだけのパズラーになってしまう。それは他の作品にもいえるので、残念だなあ、『犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題』ではあれほどの冴えをみせてくれたのに、って思います。明らかに装幀に負けた一冊でした。