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商品説明
“詐欺”を生業としている、したたかな中年二人組。ある日突然、彼らの生活に一人の少女が舞い込んだ。戸惑う二人。やがて同居人はさらに増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは。【「BOOK」データベースの商品解説】
【日本推理作家協会賞(第62回)】詐欺を生業とする中年2人組の生活に、1人の少女が舞い込んだ。2人は戸惑うが、同居人はさらに増え「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしたものを取り戻すため、過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは!?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
道尾 秀介
- 略歴
- 〈道尾秀介〉1975年生まれ。2004年「背の眼」でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞しデビュー。「シャドウ」で本格ミステリ大賞小説部門を受賞。ほかの著書に「ラットマン」など。
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紙の本
いやはや、なぜ道尾の作品がミステリファンから高い評価を受けているかがよくわかります。どこかで読んだような、と思っていたお話が、こんな結末を迎えるとは・・・。こうなると、過去の作品も全部読まねば・・・。いまなら数も少ないし、まだ間に合うって、こういうこと?
2010/06/16 19:18
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前から気になっていた道尾秀介作品をようやく読むことになりました。第五回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞の『背の眼』でも、本格ミステリ大賞小説部門受賞の『シャドウ』でも、山本周五郎賞候補 『ラットマン』でもなく、第140回直木賞候補、第30回吉川英治文学新人賞候補、第62回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞の『カラスの親指』から読み始めるというのが、いかにも私らしいというか・・・
で、この本、姿かたちは決して派手なものではありません。ただしデザインセンスがやたらいい。色使いも抑制がきいていて感じがいい。現代美術の流れを汲む、というよりはモダンデザイン。レン・デイトンあたりのスパイ・スリラーの本に使っても違和感の無い、海外でも通用しそうなものです。装幀は鈴木正道(Suzuki Design)、写真は加藤アラタです。
出版社のHPには
*
大丈夫。まだ間に合うから。
注目の道尾秀介 最新作!
「こうしてると、まるで家族みたいですよね」
“詐欺”を生業としている、したたかな中年2人組。ある日突然、彼らの生活に1人の少女が舞い込んだ。戸惑う2人。やがて同居人はさらに増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が始まった。失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの過去と訣別するため、彼らが企てた大計画とは!?
日本推理作家協会賞【長編及び連作短編集部門】受賞
*
え、これって少し軽くない、なんて思いながら快調に読み進みますが、後半というか終盤にはいって愕然とします。そうか、人は道尾のこの技に圧倒されるんだ、って思いました。まさに意外性。この快感は生半可なものではありません。最近、私が読んで娘たちに回す作品の多くが、若い人の気持ちや取り巻く状況が心地よく、あるいは青春の苦悩がリアルに描かれているものになっていますが、今回はこう宣言しました。
あんたら、驚くよ。
これがミステリだだからね。
と。しかもです、私が嫌う密室や暗号、ダイイング・メッセージを売り物にしたマニア向け本格ミステリではありません。とはいえ、論理的ではないかといえば、決してそうではない。気を揉んでハラハラドキドキし、え、そんな! と驚き、改めて全体を読み直す、あ、そうだったんだ、見抜けなかった、っていうか上手いなあ、これって都筑道夫がいうところのモダン・デテクティブ・ミステリ(探偵は出てきませんけど)に分類されるんだろうな、納得する、そういう小説です。
主人公、と言えるのは三人。一人は武沢竹夫、46歳。元は機械工具メーカーの営業マンで現在は詐欺師。6歳年下の妻・雪絵を12年前に癌で、12歳だった一人娘の沙代を7年前に亡くしています。竹夫がコンビを組むのがテツさんこと入川鉄巳、45歳。愛妻・絵理が自殺しています。絵里に気に入られようと英語の勉強をしたせいで、今も英語の語彙には強いというのがユニーク。最後の一人が、河合まひろ、高校を卒業したばかりの、痩せぎすの18歳の少女で、生活のため売春から掏りまで何でもやるというのが立派です。
この三人に、まひろの姉で無職のやひろ、その恋人(こちらも無職に近い能天気男)、ヤミ金業者のヒグチが絡んで話が進みます。私としては、なんとか道尾秀介に間に合った、といったところでしょうか。ともかく、この技のキレはただものではありません。各章のタイトルは
・HERON (鷺)
・BULLFINCH (鷽)
・STARLING (椋鳥)
・ALBATROSS (アホウドリ)
・CROW (鴉)
と鳥の名前にちなんでいます。この中で言えば BULLFINCH が私が初めてお目にかかる言葉で、鷽(うそ)と読みます。詐欺師が出てくるお話で、「BULLFINCH 鷽(うそ)」というのも笑えますが、騙される人間もいて、だから「ALBATROSS (アホウドリ)」か、なんて感心したりもします。最後に初出ですが、小説現代特別増刊号「メフィスト」の2007年9月号から2008年5月号に掲載されたものだそうです。傾向は微妙に違いますが、小林信彦の作品と読み比べるといいかもしれません。
紙の本
疑似家族が挑む詐欺計画
2008/08/13 17:10
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
詐欺を生業としている40代の男2人の生活に
18歳の少女まひろが同居することに。
さらにその姉と彼氏も転がりこんできます。
こんな人生に転落した原因であるヤミ金組織に
詐欺をふっかけるミステリー。
道尾秀介のトリックはあくまでもガジェットにしか過ぎない。
今回は詐欺師ふたりに、マジシャンひとりの登場で
さらに小道具化している印象です。
物語にいつもあるのは人間の生活や人生です。
騙されてお金をとられて、家族を殺された過去をもつ
中年男と少女たちは、人様をだまして生きているのみ。
そんな現状打破と過去への決別を誓い
詐欺の大計画を立てるのですが
主人公の武沢竹夫は、借金のかたにヤミ金で働いていた頃
少女たちの母親を自殺に追い込んだ負い目があり
いつそれがバレルかと気が気じゃありません。
しかし同居生活で芽生えた親しみや
計画を実行しながら連帯感も感じています。
決して単純な痛快小説ではありません。
だからこそ読み応えのある詐欺小説となっています。
いちばん騙したかったのは読者。
というのはいつもの道尾秀介のミステリーですね。
枠組みが面白いのは『ソロモンの犬』同様。
今回も騙されました。
読後感もいい。
紙の本
詐欺という名のショー
2008/09/23 15:33
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中年男+中年男+少女。
詐欺師+スリ。
そこから勝手に想像したのは、軽口の多い楽しい生活と、
3人の特性を生かした大きな詐欺計画の成功のようなものでした。
違いましたね、まったく。
一緒に暮らすことになった理由も、その暮らしぶりも、
むしろ緊張感あふれるもので、家族ごっこどころではない。
それぞれが背負った過去の重さに、あっぷあっぷしている始末です。
今の生活を脅かす過去を清算するため、もしくは親の仇うちに、
あとから転がり込んできたオマケ2人を加えて、大逆転劇をたくらみます。
詐欺計画そのものはどこかで見たようなもので、少々肩透かしを食いました。
しかし、風向きしだいで撤収すればよしという逃げ道のある計画ではないため(命がかかっている)、
見守るこちらにも力が入ります。
道尾秀介の作品なので、かならず大きなどんでん返しがあるのだろうと、
かなり構えて読み進めたところ、やっぱり!
故意に伏せてある事実で騙されるのは、じつはあまり好みではないのですが、
まあ、騙されたほうにあれこれ言う資格もないのでしょう。
この人の小説そのものが、毎回大仕掛けな詐欺みたいなものなので、
物語の中での「仕事」が小さく見えてしまうのも、仕方ないのかもしれません。
おもしろいキャラクターもいることだし、
それぞれがもっと生きる設定だったらと、ちょっぴり残念な気もします。
それでも、詐欺=爽快な物語というイメージを覆すだけの力はありました。
「詐欺師なんて、人間の屑です」
「最低の生き物です。自分は気づくのが遅すぎました」
その言葉は、主人公だけでなく、浮かれていた私の中にも鋭く突き刺さりました。
映画『スティング』でもそうでした。
ラストの見事な喝采で忘れがちですが、あれだって詐欺師の最期の悲しさが発端なのです。
それでも痛快極まる「騙し」は、私たちを魅了してやみません。
いわく最低の生き物たちの最高のショーを求めて、あらたな詐欺の物語を心待ちにするのだと思います。
紙の本
闇金はコワイ
2020/06/17 23:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヤクザ、闇金は私には地雷で、
登場人物に何が起こるか怖くて
読み進められませんでした。
テツさんの緩い雰囲気が救いではありましたが。
紙の本
彼らのコンゲームは成功するだろうかとハラハラする読者を完全に騙すこのテクニック!!!
2010/08/22 22:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
道尾秀介で期待した『光媒の花』はいささか拍子抜けであった。この二冊目『カラスの親指』がなんとなくコンゲームの傑作『スティング』のように見えたものだから「最高の逆転劇」を楽しもうと手にした。
詐欺師である中年二人の同居生活。ここに掏摸師である少女が舞い込む。さらに彼女の姉とそのボーイフレンドの奇術師が押しかけて、五人の同居生活が始まる。中年の二人と姉妹の家族は悪質な金融業者の犠牲になっている。この五人は社会から疎外されたものであるが、最近の小説の風潮なのだろうか、あまり悲惨さは感じられない。前途を悲観することなくむしろ軽いノリのおとぼけで今を生きられている。そして物語の三分の二はこの五人の饒舌とギャグで埋まっているから、バラエティ番組に多い、若手の芸人同士の一発芸の競いあいを見ているようで、読み飛ばしたくなるほど退屈であった………と感じた………?!?!。
彼らはついに取立て屋の組織に一泡吹かせようと立ち上がる。詐欺師と掏摸師と奇術師である。役者はそろった。まさにコンゲームの開始である。
ここからが目を離せなくなった。
そして逆転、逆転の展開。
さらに読者をペテンにかける論理性は見事である。
退屈そうに見えたところを含めて、たぶん細部までつじつまが合っているということだ。
軽妙な語り口がミソだからリアル感はない。
登場人物の気の毒な過去も今の社会には日常茶飯事の出来事だから平板である。親子の絆が大切だとか、詐欺師は所詮悪だとか、その程度のメッセージで価値があがる作品ではない。
肝心なこと、ラストの大技で読者が騙される快感を味わうことができれば、それがこのタイプのミステリーの真骨頂なのだ。
このようなトリックだけで読ませる作品については、昔は読後に伏線の細部に潜ませた論理の一貫性を検証したものだった。たぶん10年前に読んでいれば退屈に読み飛ばしたところを再読してなるほどと感心し、その納得があることで、スッキリと騙されたであろう。
ただ、年寄りだからここまで伏線が複雑すぎると、知力・体力・好奇心の衰えから検証する気持ちになれなかったのだ。