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商品説明
ひたむきに、健気に、静かにそーっと生きているあなたに、切ないほどの優しさがゆるやかに胸にしみ入る珠玉の小説集。【「BOOK」データベースの商品解説】
無職で病弱な弟と暮す50歳独身の姉。20年ぶりに田舎の実家に帰省したダメ男。じっちゃんと2人で生きる健気な中学生。静かにそーっと生きている彼らの人生を描き、温かな気持ちと深い共感を呼び起こす珠玉の小説集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
アカペラ | 5−78 | |
---|---|---|
ソリチュード | 79−182 | |
ネロリ | 183−254 |
著者紹介
山本 文緒
- 略歴
- 〈山本文緒〉1962年神奈川県生まれ。OL生活を経て、作家デビュー。「恋愛中毒」で吉川英治文学新人賞、「プラナリア」で第124回直木賞を受賞。ほかの著書に「落花流水」「再婚生活」など。
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紙の本
いちばん面白かった作品が病気になる直前のものだというのは、まだ山本、調子が戻りきってはいない?いえいえ、かなりのところまで復調してます。「ネロリ」なんてかなりいい。
2009/01/09 19:45
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
下手に「待っていました」なんて書くと山本にいらぬプレッシャーをかけそうなので、「ほっとした」くらいで止めておきますが、この世界の事情に疎い私は結構長い間、「山本文緒の新作を結構みかけないけど、どうしたのかな、長編の連載が終らないのかしら」くらいにしか思っていなかったのです。
そんな時、2004年に出た『日々是作文』で、彼女が鬱病であったことを知り、2007年の『再婚生活』(字面が『恋愛中毒』に似ていたので、てっきり小説だと思っていました)を読んで、そんな彼女が再婚をし、夫から心身両面で支えられていることを知り、これなら創作どころではないなあ、と納得した次第です。ま、惚気とも思える後者には辟易もしましたが。
で、それから一年、やっと「6年ぶり、待望の小説集」が姿を見せました。その記念すべき?一冊は、なんとも可愛いらしい姿をしています。水色は扱い方によっては安っぽくなるのですが、今回はそれを逆手にとった、そんな印象です。で、なんといっても伊藤絵里子の装画がいいです。これって、版画にしても売れる、私はそう思います。
新潮社装幀室の仕事も、著者の復帰をさりげなく祝うようで好ましい。ただし、内容は単純に「明るい」ものではありません。でも、それは決して悪くは無い。いや、いかにも山本らしいといっていいかもしれません。ま、新潮社のHPの
刊行記念インタビュー
6年ぶり待望の小説集「書ける快感、嘘つく歓喜」
山本文緒
聞き手:温水ゆかり
に
――早速ですが、この復帰作『アカペラ』は三篇収録の短篇集というか中篇集です。まず表題作『アカペラ』は〇二年の作、休業前の作品だったんですね。
山本 ええ、直木賞受賞第一作として、かなり意識的に新しいモチーフと文体で書いたものです。山本文緒だったらこういう物語の構造でこういう落とし所になると読者に見抜かれてきていて、それはそれで私の古典落語、捨てようとは思っていないんですが、いい意味で読者を裏切りたいなと思って。
とあって、「らしい」なんて言われるのを山本自身は嫌がっているようですが、それは考えすぎじゃないか、って思います。らしくて何処が悪い?ま、留まられちゃ読者だって困りますけど、といって何が何でも読見ての裏を書く必要はないでしょ。作家が大きくなる時って言うのは、もっと自然に変わるんだと思います。ある日、突然、赤ん坊が歩き始めるように。
三つの中篇からなる作品集で、面白いのですが最高傑作、という出版社の謳い文句には、少し違うかな、って思います。ま、私は表題作に関しては、この本の中だけでなく彼女の作品の中でも好きなほうで、一二を争うと思いますが、これは彼女が書けなくなる前、2002年の作品なんです。最近書かれた二篇、勿論、読んで面白いのですが、「アカペラ」ほどではないかな、って思うんです。
何故か、っていうと「アカペラ」は発表当時だけではなく、今でも引く人が入ると思うくらい内容が新しい。ま、私が好きなテーマという点を割引にしても、例は少ないし、それが自然です。「ソリチュード」「ネロリ」のほうは、ダメ男(今風にいえばヘタレ)テーマで、正直、ヘタレ男ブームが去ってヘタレ女小説が主流になるかもしれない今の小説界では、フツーかな、って思います。
ま、繰り返しますが私は禁忌テーマが好きで、世の中にゴマンといるヘタレ男とバカ政治家、国民無視の官僚が大嫌いなので、こういう評価になっている可能性があるので、読んで確認してもらうしかないんですが、ともかく直木賞作家として水準はクリアしていることは保証します。読んで損は絶対にありません。どれも一気に読める話なので、各篇を簡単に紹介して終わりにします。
・アカペラ(「別冊文藝春秋」2002年1月号):主人公はゴンタマ、こと権藤たまこ、手芸大好きの15歳の少女です。父は単身赴任、母の鏡子は家出癖のある会社員で、彼女は祖父トモゾウ、こと金田泰造72歳とチヨという12歳になる飼い猫と暮らしています。トモゾウの妻まあこさんは既に亡くなっています。ゴンタマのバイトを巡って担任カニータと古着屋の店長・姥山が・・・
・ソリチュード(「yom yom」2007年10月号 vol.4):主人公は18で家出をし、東京でバーのマスターをしている春一です。父の葬儀で20年ぶりに実家に帰ってきた春一は、彼の家出に手を貸すことになった金持ちの友人・武藤や高校時代憧れていたいとこの美緒と、彼女の娘で、今年中学生になる一花に再会し、彼女が離婚したことを知って・・・
・ネロリ(「yom yom」2008年3月号 vol.6):主人公は18の時から中堅出版社で働き、今はそこで庶務全般をみたり社長秘書のようなことをやって50を迎えようとしている志保子です。彼女は母が何も残さず亡くなってから今まで、虚弱体質の弟ヒデちゃんこと楢崎日出男が39歳になる今まで、二人で暮らしてきました。そんな二人の生活を脅かすものが・・・
たしかに、どれも対談の温水ゆかりがいうように
祖父と孫、いとこ同士、姉と弟、インセストタブーとまでは言えないですが、“なにかに抵触しそうな関係”を描いているのも今回の共通項かなと思いました。
ではあるのですが、濃度は作品の発表順(=目次順)に薄まっている気がします。私が好感度もそれと比例しているといっていいでしょう。いやはや、本当に近親相姦テーマが好きなんだな、私って、って思います。ま、実際は、健全なというか普通のありふれた毎日を、それこそフツーの家族と過ごしているんですが・・・
紙の本
待ちに待ったという言葉がぴったり当てはまる作品集だが。
2009/02/05 23:17
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大ファンである重松清と同時受賞された直木賞がきっかけで以前、山本文緒さんの作品に嵌っていた時期がある。
男性読者がこれだけ楽しめるのだから女性読者ならと思い、当時この手の小説を書かせたら右に出るものはいないと思ったものだ。
時代は変わったものである。
かつて、山本文緒さんの作品を読む時、男性読者の立場から“女性ってまったく違う生き物なんだ”と思いつつ、それを確かめる意味合いも含めて読書に熱中した記憶がある。
少し手厳しい言い方をすれば、約6年ぶりの小説ということで、そのブランクを感じさせなかったと言えば嘘になるであろう。
評論家の北上次郎さんは新潮社の『波』で「山本文緒健在なり。」という言葉でこの作品を評しているが、少し後ろ向きな意味合いに捉えてしまった。
私的には“健在”というより“肩慣らし程度”の作品集だと思っている。
いやそうあって欲しいという願望がある。
なぜなら山本さんが休養されている間、プロとして年に数冊コンスタントに書き上げる角田光代さんの作品に邂逅してしまった。
現在、2人を比べてみると角田さんに軍配を上げざるを得ない。
比べること自体、野暮なこととも言えようが。
結果として、角田さんの素晴らしさを再認識した読書であったと言わざるを得ない。
かなり辛辣に書いたような気もするが、決して過去の山本作品の毒舌をまねたわけではない(笑)
普通の人の心の底に潜む悩みを書ける角田さんとはやはり差がついたと思ったりする。
しかしながら、いろんなことを差っ引いて考えたら、今現在の山本文緒さんのカラーは十分に出た作品集とも言える。
各編の登場人物それぞれが彼女の分身と言えば大げさかもしれないが、それぞれの苦しみがにじみ出ている。
言葉としての描写というか、文章の息づかいは群を抜いている彼女の・・・
全3編からなる短編集であるが、表題作の「アカペラ」は実に素晴らしい。
躍動感があり本当によく書けている。
主人公のタマちゃん。
家出ばかりする母に育てられ祖父を大事にする女の子なんだけど、担任の先生と敢えてコントラストさせその結果凄く上手く書けてて読者の心に響くのである。
後半部分でタマちゃんとおじいちゃんが“脱線”するんだけどそこがいいんだよね。
まあ、そこは読んでのお楽しみということで。
作中でアカペラで何曲も歌ってますよ、懐かしいあの歌を。
だが、残念なことに表題作「アカペラ」は実際には直木賞受賞直後ぐらいに書かれた作品なのである。(雑誌掲載2002年)
あとの2編はそれぞれ2007年と2008年に掲載されたが、少し表題作に比べてクオリティが落ちるような気がするのだ。
何を語りたいのかがぼやけている印象。
というか、表題作「アカペラ」より古めかしく感じるのである。
「ソリチュード」は父親の死をきっかけに20年ぶりに実家に帰った春一の話だが、やはり男性主人公だと少し興ざめかな。
だらしなく書こう書こうという意図が見え見え。
1ページ目から自分のこと“駄目男”って語っている。
昔の彼女の娘である花一ちゃんが凄く健気で可愛かったなというのがまだ救いだった。
「ネロリ」は無職で病弱な弟と暮らす50歳独身女性の物語。
まあラストの意外な展開はハッとさせられたかな。
あとの2編は私的には、以前より毒がなくなって優しく穏やかになられたような気がする。
人間的にも作品的にも。
少なくとも“以前の山本文緒テイスト”はなくなったかなと思ったりするのである。
すなわち“個性がない”のである。
個性派作家の代表選手であった山本文緒さんを知っている一読者である私は、前述の北上次郎さんに対抗して“山本文緒変身なり”という言葉でこの作品を評したいなと思っている。
私の言葉が当たっているかどうか試してみる価値は十分あると思っておりますよ。