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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.7
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/621p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-458003-3
紙の本
ディスコ探偵水曜日 上
著者 舞城 王太郎 (著)
迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で六歳の梢に十七歳の梢が侵入。真相の探究は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死。魂を奪われた少女...
ディスコ探偵水曜日 上
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商品説明
迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で六歳の梢に十七歳の梢が侵入。真相の探究は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死。魂を奪われた少女たちと梢を苛む闇の男。真実なんて天井にぶら下がったミラーボール。眩い光にダンスを止めるな。踊り続けろ水曜日。「新潮」掲載に1050枚の書き下ろしを加えた、渾身の長篇小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で、6歳の梢に17歳の梢が侵入。真相の探求は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死…。眩い光にダンスを止めるな、踊り続けろ水曜日!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
舞城 王太郎
- 略歴
- 〈舞城王太郎〉1973年福井県生まれ。「煙か土か食い物」でメフィスト賞を受賞しデビュー。「阿修羅ガール」で三島由紀夫賞を受賞。他の著書に「熊の場所」など。
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紙の本
この爽やかな読後感、そして人生を肯定的に捉える力は何なんだ?
2009/04/21 22:00
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
(上下巻通じての書評です)いつもは月に3~4冊のペースで読んでいるのに、なんとこの本2冊にほぼ2ヶ月かかってしまった。僕にとっては4作目の舞城王太郎なのだが、そもそもこういうジャンル(というもの自体が成立しているのかどうかさえ知らないが)を僕が読みつけていないということもあってか、本当にしんどい読書だった。
でも、そんなしんどい目をしてまで読む値打ちがあったかと言えば答えは Yes である。恐らくこういう小説に慣れた読者の半分も読み取れていないだろうとは思いながら。
ともかくいつも通りの破天荒な設定で、主人公は迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイで、ウェンズデイの綴りは Wednesday ではなくて Wednesdayyy で、踊場水太郎という日本名の別名まで持っている。そして、今は自分が見つけ出して事件は解決したけれど結局親に見捨てられて行くところがなくなった梢という少女と暮らしている。
ある日寝ていた梢が痛がるので見てみたら梢の体が大きくなっていて、中にはどうやら17歳になった梢がいる──とまあ、こんな具合である。
で、そのあといろいろあって、ディスコは水星Cなる粗暴な人物と福井県の山中にある通称パインハウスに行く。そのパインハウスに、そこで殺されたミステリー作家暗病院終了の謎を解くために十何人の名探偵たちが集まって来て、順番に推理を披露するのだが、その推理に間違いがあると判るとそれぞれが自分で目を刺して死んで行く。
──もう、その辺りから読んでいてしんどいのなんの。慣れの問題かもしれないけど、名探偵たちの言っていることが複雑すぎて単純に頭に入らない。でも、これを俺は解らなきゃいけないんだろうか?と半信半疑で読み進んで行くと、いよいよ真打ちとしてディスコが推理を披露するのだけれど、これが、おいおい、そんなとこ行っちゃうのかよ、と呆れ返るような内容だった。でも、考えてみればこの手の小説って、いかに科学的・論理的であるかを競うタイプのものもあれば、いかに超常的・超科学的であるかを誇るものもあって、そうか、この小説は単に後者のタイプだったのだと勝手に納得して読み進めると、そこからぐっと面白くなった。
で、上巻の終わりまで読むと、途中本当になんだかよく解らなかったのに、構成/ストーリーとしてはストンと腑に落ちる感じがあって、しかもこの爽やかな読後感、そして人生を肯定的に捉える力は何なんだ、と驚いてしまう。
そして、小説としてはここで終わってしまっても何の問題もないのに、まだ下巻の450ページが続いていて、やっぱり途中読みながら眠りこけそうになるパートがあって、やっぱり一知半解のままなのだが、でも、ちゃんと最後まで読ませる力、そしてその希望に満ちた人生観を読者がしっかり受け取ってしまうこの小説にただただ舌を巻くだけなのである。
はっきり言ってよく解らん。でも、「舞城史上最多の謎と最大のスケールで描く最高傑作」という帯の宣伝文句にふむふむとうなずいてしまうのであった。
by yama-a 賢い言葉のWeb
紙の本
トゲトゲ豚がスリスリしてくるところで、可愛いなあって。家にも欲しいなあって、思います。実は悲惨なところもあるんですが、そこだけ見るとともかく愛らしい。でもそれ以外は、まさにミステリ。しかも未来を見つめた本格。ご立派です。
2009/01/13 20:52
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
出版予告を見ただけで興奮してしまうような時が私にはあります。情報を探せばあるのは分っているのですが、私の場合は著者名、タイトル、頁数だけで判断してしまいます。2008年には、そういう本が何冊も登場しました。例えば平野啓一郎『決壊』、古川日出男『聖家族』、伊坂幸太郎『モダンタイムス』、桜庭一樹『ファミリーポートレイト』、リチャード・パワーズ『われらが歌う時』、そしてこの本『ディスコ探偵水曜日』。
お気づきでしょうが、どれも長編、それも原稿用紙で1000枚を超えるものばかりです。ボリュームだけで惚れちゃうんですねえ、私って。ま、これはあくまで本に限るのであって、電車で隣にメタボの人が来るだけでウンザリしちゃうほうなんですが。とはいえ、我が家では私一人がメタボ、って娘たちに言われてはいるんですが、はい。
でも、個人的には予想外だったんです、この装幀。絶対にハードカバーだと思っていたんですよ。値段が値段だし。ところがギッチョ、左利き。ソフトカバーなんです。しかも上下巻で頁数が驚くほど違う。ま、KEIのカバー装画は如何にも舞城本らしい、っていえば言えます。そんんあ予想外の装幀は新潮社装幀室、意外と量がある本文内図版は舞上王太郎+クラップスです。
さて、この本の新潮社のHPの案内ですが
愛、暴力、そしてミステリ。舞城史上、最大のスケールで描く最高傑作。
迷子捜し専門の米国人探偵・ディスコ・ウェンズデイ。あなたが日本を訪れたとき、〈神々の黄昏〉を告げる交響楽が鳴り響いた――。魂を奪われてしまった娘たち。この世を地獄につくりかえる漆黒の男。時間を彷徨う人びと。無限の謎を孕む館・パインハウス。名探偵たちの終わり無き饗宴。「新潮」掲載+書下ろし1000枚。二十一世紀の黙示録、ここに完成。
となっています。ほぼ同時期に、舞城の本来の舞台で、この作品の中にも言及がある講談社からメフィストに連載されていた笠井潔の『青銅の悲劇』が出ています。私も前後して読みましたが、向こうの謳い文句の中に
21世紀本格探偵小説の新地平を切り拓く巨編!
とあって、思わず、舞城に軍配!!って言ってしまいました。舞城が見るのが未来なら、笠井は過去を振り返ってばかり。担ぎ出すのが不確定性原理?げ、20世紀初頭の理論かよ、全共闘もどきの不毛な議論のための議論やったって、面白さじゃ舞城の足許にも及ばないし、なにより文体が古臭いしなあ、なんてブツブツ。それにユーモアね・・・
主人公は迷子捜し専門の米国人探偵・ディスコ・ウェンズデイ、一緒に暮らすのが6歳になる山岸梢。織田建治という男に誘拐されていたのを、ウェンズデイが探し出し山岸夫妻に届けたものの、他人の豪邸での3ヶ月監禁というブランクは、夫婦から娘に対する愛情を奪ってしまい、誘拐犯の織田も引取りを拒否、結局、梢は探偵と暮らすことになってしまいます。
ところが、その梢の体に11年後の未来からやってきた17歳の梢が入り込んで、体もその年頃の女の子に変身。ところがこれが不規則、っていうか。6歳の幼児が突然、生理になったりと大混乱。でも、それだけではありません。今度は14歳になる見ず知らずの女の子が梢を追い出して入り込む。
その島田桔梗は体は6歳の梢のまま。でもウェンズデイを全く知らないので恐怖感を抱く。しかも、彼女には梢の記憶が残っていて、幼女の恐怖の体験を思い出すわけです。そして、ウェンズデイは桔梗が連続事件の被害者の一人だということを知る。国内で6件続く、少女が意識不明、目元と両耳、鼻がマジックで黒く塗られ、お腹に「パンダかわいいよね。」と書かれて発見される事件。
桔梗に押し出されたかたちで行方知れずとなった梢を求めてウェンズデイは福井県にあるザ・パインハウス・デッドに向かいます。協力するのは、もと彼の恋人ノーマ・ブラウンに似てしまった人妻・勺子と、梢の体に訪れる17歳の梢、そして傍若無人、乱暴大好きの水星C。
そこでは、集まった名探偵が名推理を披露しては次々に謎の死を遂げて・・・
たしかに、ここで数多くの推理がなされます。でも、それは笠井が「21世紀本格探偵小説の新地平を切り拓く巨編!」でみせた右か左かをただただ弄ぶ不毛の推理ではありません。一つ一つが合理的で(難解でもありますが)それでいて少しも頭でっかちな気がしない、ユーモラスなものです。だから読んでいて少しも苛つきません。先が読みたくて仕方がない。
でも、舞城文体は健在です。あの文圧ゆえに簡単に読み飛ばせはしません。笠井の一時代前の文章は、読むものに苦痛を感じさせますが、舞城のそれは全くことなります。もっと読みたい、でも読めない、そのもどかしさ。いえ、そうではありません、こんなに濃密な時間を過ごしているのに、これしか読んでいない、そういう魔法。
しかもです、ザ・パインハウス・デッドで再会した梢の可愛いこと。なんたってとげとげ豚なんですから、水星Cならずとも、かわいい、っていうでしょ、やっぱ。そういう楽しさが随所にあります。しかもです、結論が結論にならず、謎が謎をよび、探偵自らが6歳の梢、17歳の梢、自分の恋人、愛人の存在さえ疑っていく。
笠井と同じように推理というものの曖昧さをつきながら、その到達点の高さと道のりの余りの違い。まさに過去のミステリ作家と新しい世代の旗手の違いをまざまざと見せた巨編といえるでしょう。実は、私、この本を読む前に友人知人に、これぞ今年のベスト、と吹聴しまくりましたが、期待どおりの出来栄え。
それにしてもこのボリューム、上巻だけでも凄いのに、下巻は1050枚の書き下ろしていうんだから、「渾身の長篇小説。」は至言です。しかも「ミステリ」と謳わないところもいい。でも「二十一世紀の黙示録、ここに完成。」というのはよくわかる。上巻がどちらかといえば
しかも空間の捩れ、次元論、意識、時間パラドックスといった本来なら空理空論時間の無駄で終わりかねない議論が実に心地よく戦わされる。プラス児童虐待というからスリリング。大江健三郎や筒井康隆が取り上げるテーマが、まさに舞城文体、舞城キャラによって展開されていきます。
上巻の文圧は、下巻では会話主体の軽めのものに変化しますが、それは活躍する人物の交代という形にもなって、愛らしい梢は殆ど登場せず、ウェンズデイ、水星C、三田村三朗、出逗海スタイル、美神二瑠主、エンジェルバニーズ、といったパインハウスに集う?面々が中心になります。これぞ、あたらしい文学、現代のエンタメの頂点と言ってもいいのでは?なぜこの本が芥川賞にも直木賞の候補にもならない?ついでに言えば古川日出男『聖家族』だってそう、これだけでも豊橋由美と大森豊の雄叫びが聞こえそう・・・