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紙の本
おくりびと (小学館文庫)
著者 滝田 洋二郎 (監督),小山 薫堂 (脚本),百瀬 しのぶ (著)
「こりゃ誤植だ。旅のお手伝いじゃなくて“安らかな旅立ちのお手伝い”だから、うちは」小林大悟が求人広告を手にNKエージェントを訪れると、社長の佐々木から思いもよらない業務内...
おくりびと (小学館文庫)
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- 税込価格:5,885円(53pt)
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商品説明
「こりゃ誤植だ。旅のお手伝いじゃなくて“安らかな旅立ちのお手伝い”だから、うちは」小林大悟が求人広告を手にNKエージェントを訪れると、社長の佐々木から思いもよらない業務内容を告げられた。NKは「納棺」—遺体を棺に納める仕事を、大悟は妻の美香に打ち明けられなかった。戸惑いながらも働きはじめた大悟は、佐々木の納棺師としての真摯な姿勢を目の当たりにする。さまざまな境遇の死や別れと向き合ううちに、この職業への矜持が大悟の心に芽生えていくのだが…。人の生と死をユーモアと感動で描き、笑って泣いたあとには大きな愛が胸に届く物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
チェロ奏者の大悟はオーケストラの解散で失業し、故郷の山形に帰る。そこで見つけたのは「旅のお手伝い」をするという求人広告。面接に訪れてみると、それは「安らかな旅立ちのお手伝い」をするの間違いで、ご遺体を棺に納める納棺師の仕事だった。予想外の厚遇に働くことを決意する大悟だったが、初めて目にするご遺体の前で、最初は戸惑うばかり。新しい仕事のことを詳しく話していなかった妻にも大反対され、彼女は家を出てしまう。新人の納棺師としてさまざまな人びとの別れに立ち会ううちに、自らの生き方にも目覚めていく大悟だったが、やがて彼の身近でも……。【商品解説】
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紙の本
石文(いしふみ) と 白鳥
2009/03/29 21:39
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
『おくりびと』は、映画『おくりびと』のノベライズとして、百瀬しのぶさんが書き下ろした作品です。映画『おくりびと』は、本木雅弘さんが青木新門著『納棺夫日記』を読んで感銘を受けて、『納棺夫日記』とは全く別の作品として映画化されました。第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した後、インタビューを受けた本木雅弘さんの静かな語り口と、潤んだ瞳が印象的でした。なので、どうしても主人公・小林大悟が本木君になってしまいます。仕方のないことですが、そこが残念に思いました。
大悟はチェロ奏者の夢をあきらめ、東京と訣別して、妻・美香と冬がそこまで来ている晩秋の酒田に帰ります。すでに母は亡くなり、大悟が小学校に上がる前に家を出て行った父が経営していた喫茶店の家が残されていました。
『おくりびと』は納棺夫として大悟が一人前になっていく話ですが、故郷に帰り、チェロ奏者の夢をあきらめた大悟がチェロを弾く場面が心に残りました。一つは、満月の夜、大悟は喫茶店のレコードの棚の脇に子どものときに使っていた小さなチェロを見つけます。ケースを開けると、そこには父に渡された石が入っていました。大悟は満月の夜、父と母と家族だった頃のことを思い出しながら、初雪の粉雪が舞う中、チェロを引き続けます。
もう一つは、納棺夫の仕事をしていることが美香にわかってしまい、美香は実家に帰ってしまいます。美香のいない寂しいクリスマスの夜、大悟は社長の佐々木と事務員の上村百合子とクリスマスを祝い、雑然とした事務所でアヴェ・マリアを弾きます。
「大悟は無心でチェロを弾いた。佐々木は目を閉じて腕を組み、聴き入っている。同じように聴いていた百合子の頬を、すーっとひとすじの涙が流れていった。」(155頁)
百合子もまた、悲しみを背負っていました。
大悟のもとに美香が帰ってきます。夕焼けに染まる最上川の河原に二羽の白鳥が愛を確かめ合っています。大悟は「冬は必ず、春となる」とつぶやき、美香に石を差し出します。
初めてノベライズ作品を読みました。やはり、本は素晴らしいです。本は思うままに時空を操ることができるから。
紙の本
命について考える。
2009/11/17 21:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
おくりびと 百瀬しのぶ 小学館文庫
すばらしい出だしです。大笑いしました。舞台は山形県、主人公は大悟さん、納棺師業の会社社長が佐々木生栄さん、先輩職員が上村百合子さんです。オーケストラの「解散」という言葉にはホームレス中学生の田村君が思い浮かびました。この物語を読んでいるときに、ビッグバンドジャズのコンサートを聴きに行きました。大悟さんは、本来チェロリストです。物語の場面を想像しつつ、オーケストラが解散するということが身近に感じられました。
その頃、複数の本を同時進行で読書中のわたしの心は、「エバーグリーン」豊島ミホ著で東北地方にあり、この「おくりびと」で山形県にあり、「悼む人」天童荒太著で函館にありました。東北から北海道にかけての視界が開けていました。
大悟さんの奥さん美香さんは、なんていい人なのでしょう。白鳥(はくちょう)の仲の良さとか、親子で交わした石による手紙のやりとりが伏線になっていきます。読み始めのあたりで、結末はどうもっていくのだろうかと興味津々(しんしん)でした。
物語に登場する銭湯での葬式は若い頃に見かけたことがあります。銭湯通いだったわたしが、洗面器を小脇に抱えて、のれんをくぐると、脱衣所の奥に棺(ひつぎ)が据えてあり、葬式会場になっていました。
さて、この本のテーマは「命」です。大悟さんが6歳のときに失踪した父親を殴りたい気持ちは痛いほどわかります。父が病死したときに12歳だったわたしは、自宅に安置された父親の遺体に向かって、仁王(におう)立ちになりげんこつを握り締めながら、これからどうやって生活していくのだと強い怒りをぶつけていました。
奥さんである美香さんの大悟さんの職業に対する偏見とも言える反対意見の表明は解(げ)せません。結婚生活は、相手が好きとか嫌いとかいう前に、働いて食べていけなければ話になりません。あきらめることも必要です。この物語に流れている太い芯は間違っておらず、正当です。