紙の本
井上雄彦の「誠実」
2009/03/09 14:09
9人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
丸一年間『SLAM DUNK』しか読めなくなってしまうという、常軌を逸したハマり方をした詩人の伊藤比呂美。
その彼女の巧みなリードで、気持ちよく脱がされたと言って憚らない作者の井上雄彦。
文章、漫画というそれぞれの世界で多くの人を魅了し続けるふたりの、これは対談集です。
井上雄彦というと、真っ先に「誠実」という言葉が浮かんできます。
人に、世間に、そしてなにより作品に対して。
漫画史に残る傑作『SLAM DUNK』が終わったあと、
おそらく『バガボンド』を描き始めた頃から、その印象は強くなる一方でした。
宮本武蔵を井上流に描いた『バガボンド』。
その同時発売された1、2巻の衝撃は忘れられません。
心が揺れないよう強くなるために、生きるために、自分を襲う人間を殺すことをためらわない10代の武蔵。
強いのに、斬られているのは相手なのに、武蔵の悲鳴が聞こえてきそうなほど苦しいページが続くなか、
村を出る直前に用意されていたのは、他者からの(おそらくは初めての)‘赦し’でした。
その場面を嗚咽を漏らしながら読んだのが、かれこれ10年前になります。
武蔵を描くこの作品で、多くの人は死んでいきます。
気持ちが悪くなり、息が詰まって読み進めるのが困難なときさえある。
それでも、命のやりとりに対する責任らしきものが感じられ、
無造作に生死を描いているという不快感を味わったことがいまだなく、
そこに、井上雄彦の誠実さを見てしまうのです。
伊藤比呂美は『SLAM DUNK』を、現代の軍記物と言い切ります。
バスケットボールの試合であり、命は取られはしないけれど、これは「戦い」なのだと。
そして軍記物の基本は、滅びの美……だと。
指摘され、初めてそういうふうに考えたという井上雄彦も納得するように、
彼は『SLAM DUNK』から『バガボンド』へと、戦いの場を移していったのでした。
もちろん言葉を操るプロ、伊藤比呂美ならでは読み方ではあるのかもしれません。
そういう深読みもあり、単純に仕事のしかたやスケジュール、デビューの頃の話もあります。
力量不足で描ききれなかったという作品の話も少々。
作り手というのは、その作品を読み込んだ人との対話で、新しい自分に気づくこともあるのでしょう。
そうしてひとつ抜け出た作り手の新しい物語を、読者は享受するのです。
とても幸せなことだと思わずにはいられません。
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詩人伊藤比呂美と井上雄彦の対談集。学生時代、伊藤比呂美の詩を初めて読んだ時の衝撃ったら・・・周囲にも結構ファンが多かった。その後は、『良いおっぱい悪いおっぱい』『おなか ほっぺ おしり』『おなか ほっぺ おしり そしてふともも』等のエッセイを追いかけていたっけ。『バガボンド』で井上雄彦にはまり、一年間『SLAM DUNK』ばかり読み込んでいた時期があるという伊藤氏が、深くて鋭い突込みを連発し、井上氏がたじたじ辟易している様子がうかがえて楽しい。伊藤氏の娘さんと同じく、私も水戸洋平が好き。『リアル』では野宮だ。
『SLAM DUNK』を現代における軍記物語ととらえる伊藤説、う〜ん、なるほど。“大量殺人の物語”である『バガボンド』での井上の、死の描き方に対する姿勢への洞察も、鋭いなぁ。
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久々読んだ小説じゃない本。
内容はスラムダンクやバガボンドでおなじみ井上雄彦さんと井上さんの大ファンと自負する詩人伊藤比呂美さんの対談集。
井上さんの漫画に対する考えとかやりたいこと、伝えたいことがよくわかる。
まだ自分は読み方が浅いと思った。
もっと深く深く読みたい。
井上さんが伝えんとしていることのすべてを感じたいと思った。
あとわかったのは自分がこーいう人の生き様を知れるものが好きなんだと知った。
本だったり、テレビとかドキュメント的なやつ。
井上作品を読んだことある人は読むべし
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井上雄彦先生をリスペクトしている
自分にとって、興味深い内容だった。
対談相手の伊藤比呂美さんが
良く漫画を読み込んでいることが
理解できて、おもしろい。
また井上先生が好きになりました。
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SLUM DUNK、バガボンドについて、そして学生時代に漫画を描き始めた時のことについてを井上雄彦さんが語る。
伊藤比呂美さんの質問内容にところどころ引っかかる箇所がある。えっ、そんな質問をしちゃうの? その質問は本人にすべきではないのでは? 本当にファンなの?と。また、自分の価値観というか解釈というかをさも当然のことのように、押し付けがましく話しているように感じられる箇所があり、気にかかりました。
井上氏の話はすごく面白かったです。
(2008年5月読了)
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スラムダンク作者井上氏と、詩人伊藤氏の対談が記録された本。
最後のマンガ展@仙台の売店で見かけ、即買いしました。
井上氏の漫画、スラムダンクやリアル、バガボンドの
製作ウラ話もちらほら出てきていて、ファンにはたまりません。
よくサスペンスやミステリー(デスノートとかコナンとか)にある
伏線張られまくりの話もうならせられるものがあって面白いけど、
逆にスラムダンクのようなスタイルの漫画は
作者の意図というよりも気持ちがにじみ出てる感じがしていて
読んでて気持ちがいいですね。
この本では井上氏のそういった漫画に対する姿勢というのも
読み取ることができるので、ファンにはオススメです。
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これはよかった。
伊藤比呂美ってやっぱり変な人だ(笑)
裏話もおもしろいし伊藤比呂美の読み方もおもしろい。聞いてくれてありがとうってこともいっぱい。雑誌出版社やからあんまり期待してなかったんやけどこれはおもしろかった。井上ファンはおすすめです!
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スラムダンクが好きな 著者が
ココがいい!!
人生でもこうゆう心理の場面あるよね
って語っている本
最後に井上さんとの対談もあり
スラムダンクが好きだから読んだけど、
この著者の価値観を押し売りされている印象
☆一つ どころか 一つもつけたくないけど・・・
ちっとも面白くない
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【9】
井上雄彦の創作に対する強烈な意識が垣間見える。
圧倒的な地位を築いたが故に、許される自由。それに甘んじることなく、さらなる高みを目指す姿。バガボンドにおける武蔵は井上雄彦自身なんだと改めて認識。
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おもしろかった
井上雄彦は、漫画を描いて命のやりとりをしてる。
ただで天才なわけじゃないんだよな。
興味深かったのは、漫画を描くということで、絵における見せ方を重んじている反面、たまに言葉に負けるというくだり。
バガボンドに出てくる『死の螺旋』というものがまさにそうで、ほんとうは書き込んで書き込んだ絵によって世界観をつくりたいのに、ああいう台詞がぽんっと全部をさらっていく強烈さ、言葉の持つ威力に負けるとき、自分ずるいなーと思ってしまうらしい。
なんか…カッコいい。
☆がひとつ欠けたのは
対談相手の女性詩人家の話好きさ。もうすこし聞き役に徹していただいて、井上雄彦の言葉を多く読みたかった
あと、スラダンはこうだ!だれがヒーローだ!みたいな主張がありすぎた…それは定義づけるべきではない。
ただ、井上雄彦作品がほんとうに大好きという熱意と、対話の引き出し方は好感もちます。
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(漫画ではないけど、漫画の話をしているのでこのカテゴリで。)
「スラムダンク」ファンの詩人・伊藤比呂美による、作者との対談。
伊藤さんが読み込んでいるので、「スラムダンク」「バガボンド」「リアル」の三作についてかなりつっこんだ話をしている。
三作を読んでからのほうがより楽しめるかと。
ものづくりについての話(意識とか覚悟とか)としても面白い。
伊藤さんが歯に衣着せない質問をするので、井上さんも思わず答えちゃうというていで、よくあるインタビューの枠に留まらない読み物になっていておすすめ。
数時間で読めてしまうくらいの量。
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漫画『SLAM DUNK』や『バガボンド』や『リアル』の作者である井上雄彦さんと、井上作品のファンである詩人の伊藤比呂美さんとの対談をまとめた本。『SLAM DUNK』や『バガボンド』の作品に込められたメッセージや裏話、井上さんの漫画に対する姿勢などが伝わってきました。井上作品の裏側を知られる本。(2011.11.30)
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スラムダンク、バガボンド、リアルの井上雄彦と詩人伊藤比呂美の対談です。いや、対談というより伊藤比呂美が井上雄彦にインタビューしてる感じかな。
伊藤比呂美さんがスラムダンクの大ファンでかなり細部まで読み込んでいるし、独特な解釈など面白かったです。
独特な解釈は結構自信たっぷりなので「作者目の前にいいのかな^^;」と思う場面もありましたが「大好きです。」でスラムダンクとバガボンドが繋がったのは面白かった♪
井上先生にかなり突っ込んだ質問したりなかなか聞きにくいことも聞いちゃってます・・・ちょっとこっちが心配になるくらい^^;
でも、快く質問に答えていて「実はちょっとそこ聞きたかった!」とか「へぇ〜そうなんだ!」とか思ったり。
井上雄彦ファンの人は読んでみてもいいかも。
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「スラムダンク」「バガボンド」の井上雄彦さんと詩人の伊藤比呂美さんの対談集。というよりも、スラムダンクが好きで好きでという熟女のファンによる作者井上さんへの濃厚なインタビューであります。
と、伊藤さんが一ファンであることを肯定しつつもさすがの言語感覚でズバズバと一人の漫画家を裸にしていくところは漫画評論としてはすばらしいものだし、それに答えていく井上さんも桜木や武蔵のようにカッコイイのであった。
スラムダンクやバガボンドから漫画書きになりたいと思った人、他創作をやる人にとっては非常に有効なんじゃないかと思います。かといって井上ファンが読んだとすると、伊藤さんに共感できるか否かで評価が分かれるんだろうなぁ。
たぶん『スラムダンク』からこの本にたどり着いた人は「誰だこの漢(おばはん)」という感じであると思われる。
伊藤比呂美ファンは、あいかわらずの伊藤比呂美大爆走なので、ものすごく満足できると思います。
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井上雄彦とアバンギャルド女流詩人の対談。伊藤さん、スラムダンク好きなのわかるけど、少し穿った見方や、そのあとのブザービーターを知らないなど知識不足からの浅さが残念だが、井上作品の裏側がわかりオモロー。