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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2008.6
  • 出版社: バジリコ
  • サイズ:20cm/257p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-86238-100-2

紙の本

著者 アンナ・カヴァン (著),山田 和子 (訳)

異常な寒波のなか、夜道に迷いながら、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気象変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って、某独裁国家に...

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税込 1,980 18pt

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商品説明

異常な寒波のなか、夜道に迷いながら、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気象変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って、某独裁国家に潜入した私は、要塞のような「高い館」で、絶対的な力で少女を支配する「長官」と対峙するが…。刻々と迫り来る氷の壁、地上に蔓延する抗争と殺戮、絶望的な逃避行。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで読者を魅了し、冷たい熱狂を引き起したアンナ・カヴァンの伝説的名作。【「BOOK」データベースの商品解説】

地球規模の気象変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。少女を追って某独裁国家に潜入した私は、絶対的な力で少女を支配する「長官」と対峙するが…。冷たい熱狂を引き起した伝説的名作。〔サンリオSF文庫 1985年刊の改訳〕【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

アンナ・カヴァン

略歴
〈アンナ・カヴァン〉1901〜68年。フランス生まれ。小説や絵画の創作をつづけ、カフカ的な不安と幻想を描いた作品を発表する。著書に「ジュリアとバズーカ」「愛の渇き」など。

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みんなの評価3.5

評価内訳

紙の本

ものみなすべて氷のなかに葬られ、地球という惑星が死の眠りにつくとき、真に訪れであろう平安――個人やこの世界の平安を超克したところにある、そのような静かな空間を、作家はおそらく幻視していたことだろう。その空間に送り届けてもらえたことに覚える安らぎ。

2008/06/11 18:05

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 あいにく私たちは、自らの諸活動が原因らしい「温暖化」という地球規模の気象変動のさなかにおり、それが行き着くであろう終末の世界の気配を、ときどきうっすらと日常の断片から感じ取って暮らしている。人類全体が、ゆるやかな下り坂をゆっくりと進んでいる感覚は、発展途上国や戦禍・災害に見舞われた人びと、あるいはアマゾンの奥地にいるとも言われる未接触部族には実感がないに違いない。だが、各々の分野で、世界の動向を決めているつもりの先進国人ならば、多少ともその感じを認識していなければ、相当に鈍いということになる。
 温暖化という切り口で描かれた今の社会の物語同様、『氷』もまた、終末世界へ向かって行く物語だ。ここでは、氷が全世界を覆いつくそうとする世界規模の気象変動が進行している。それは、どうやら氷河期へ向かうという地球の季節変化の枠の一幕であり、防げるか防げないかというレベルの話ではない。否応なしに何もかもが氷結していく。

――ガラスのように輝く巨大な氷塊の環。少女はその中心にいる。頭上はるかにそそり立つ氷の断崖から、眼もくらむような閃光が投射され、下方では、早くも少女のもとに達した氷の最外縁がコンクリートのように足と踝(くるぶし)を固定して、彼女を動けなくさせている。私は、その氷が少しずつ少女の脚を這い昇り、膝から腿を覆っていくのを見つめ、かぼそい苦悶の叫びが発せられるのを聞く。哀れみはいっさい感じない。(P9)
――少女の前に広がっているのは暗闇ではなく、天空を染めつくす果てしない焔の波、途方もない氷河の夢幻的な情景だった。頭上では虹色の冷たい焔が脈動し、それを貫いて、四囲にそそり立つ堅固な氷の峰々から放射される何本もの純粋な白熱光のシャフトが閃き走っている。(中略)
 少女は絶望的に四方を見まわした。どこも完全に巨大な氷の壁に閉ざされている。眼をくらませる光の爆発に氷は流体となり、壁全体がとどまることのない液体の動きを見せて刻々変容しつつ前進し、海洋ほどにも巨大な雪崩を引き起こしながら進んでいく氷の奔流が、破滅を運命づけられた世界の隅々にまであふれ広がっていく。どこを見ても、少女の眼に映るのは同じ恐るべき氷の環状世界。(P29)
「氷が少しずつ少女の脚を這い昇り」「氷は流体となり、壁全体がとどまることのない液体の動きを見せて」といったイメージが好きだ。

 物語のなかには、名の分からない少女が登場する。少女と呼ばれているが、不幸な結婚生活が破綻して出奔する女性だから、ロリータほどの少女ではない。語り手たる男性にとって少女だということであり、また、彼女に触れた者ならば容易に見て取れる、本性としての少女なのだろう。物語のなかに作家像を見つけようとする試みは不要だとしても、「本性としての少女」にアンナ・カヴァンという、知られていない作家の自己投影を感じるのは、読み手たる者の勝手である。
「少女らしさ」「少年らしさ」というのは、多くの人ができればいつまでも持っていたいと願う資質であり、それを武器のようにして表にかざそうとするか、人知れず小さな空間で取り出してみるかといった差があるだけ。後者を小説という器のなかで実践することを、悪くない趣味だと思う。
 上に引用した幻想の連なりも、作家が、少女らしさを自分の内面に大切に宿したままにしたことの延長にこそあるのかもしれない。しかし、これら幻想は、物語のなかの少女自身の幻想としては書かれていない。仕事を投げ出してまで失踪者の行方を追うことにした男性の頭に、その追跡行の途次で浮かびくるまぼろしとして書かれている。これがもし「少女らしさ」を表現しようという小説ならば、いかに周到に慎重に、遠回りになされた表現なのかと、書いた人の繊細さを思い、共感してしまう。
 だが、ここで作家が目したのは、「少女」よりも「氷に覆われていく世界」のビジョンを、正確に豊かに紙の上に投影することだったのではあるまいか。その表現欲は、小説で取り扱われている他の素材のどれよりも熱狂的に思える。他の素材というのは、少女らしさを大切にしたいと願う女性を従属させようとする、男性の暴力的な陵辱欲への嫌悪や失望であったり、人の命をもてあそびながら己が特権のもたらす快楽に溺れる権力者の愚かさに対する批判であったり、魂の結びつきを求めても永遠にすれ違う人間関係への諦念であったり……。

 不幸な結婚生活から出奔、失踪した彼女を捜そうとする男性が語り手であり、彼女が誘拐された先が、カフカの小説世界を想起させる訳の分からない独裁国家となっている。ただし、カフカのような軽みはない。世界に急速に進行しつつある軍国主義化、そして寒冷化があいまって、とりわけ尖鋭的な状況を見せているのがその国家なのだ。分厚い鋼鉄板のような冷ややかさで、少女や追跡者の前に国家は立ちはだかる。
 崩れ去っていくものを書いてみようという意欲が芸術家にあるのはよく分かるし、それをどう書けるかに文学的な挑戦があることもよく分かる。その成果が作品評価へとつながっていく。灼熱にさらされる場所で、人間的な品性と肉体がじりじり腐乱していくような文学作品もあるけれども、カヴァンが選択したのは「氷」であった。それを何とも面白く読む。では、なぜ彼女は、この小説を「氷」で覆い尽くしてしまったのだろうか。
 ひとつには、まず、「氷」で冷えていくことの自然さというものがあろう。人同士や国家同士の関係が駄目になるのも、身体機能が失われていくのも、「冷え」という状態で一般に表される。熱を失う、奪われるというのは、生きとし生けるものにとって致命的なのだ。それから、氷には、そのものをそのままの状態で保存できる力もある。冷凍睡眠を扱ったSF作品もあるが、氷結させることで鮮度を残したまま、ものの表面的状態を生き永らえさせることができる。考えてみれば、「少女」という存在自体が氷に閉じ込められたような存在なのだ。
 こうした「氷」の特徴をひっくるめた上で、作家が突き詰めたかったのは、結局のところ氷の持つ物理的な魅力だったのではなかろうかと大胆な意見も書いてみたい。冷たく輝く妖しい物体、それが支配する、この世のものではない世界――生物も無生物も、ものみなすべて氷のなかに葬られ、地球という惑星自体が死の眠りにつくとき、真に訪れる平安――個人やこの世界の平安を超克したところにある、そのような静かな空間を、彼女は夢想していたことだろう。そして、その夢想のとき、作家にはひとときの安らぎが訪れていたのかもしれない。
 少なくとも、作家にそのような意図があったと考えたとき、私には安らぎが訪れる。70歳近くなってから、幻視の力で独自の美の世界を構築した女性がいたということに、穏やかに、それでいて微熱に浮かされたような憧れを覚える。 
◆若干の言及あり→物語るにはまだ早い

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