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相手は「天皇」丹下健三、磯崎新は出来レースにどう挑むのか?
2010/09/22 15:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは、戦後日本最大ともいわれた東京都庁の建築コンペを題材にし
たノンフィクションである。実はこのコンペ、それまでの経緯を見ても、
審査員の顔ぶれを見ても、「天皇」丹下健三の事務所が圧倒的に有利で
当時は「出来レース」とさえいわれていたそうだ。「ぶっちぎりで勝と
う!」と連呼する丹下。それに立ち向かうのが全9社のうち唯一の弱小
事務所、磯崎アトリエの磯崎新だ。
丹下対磯崎、著者平松剛がなぜこの2人の対決に注目したのかといえ
ば、磯崎が丹下の愛弟子だったからだ。そして、この2人はその時すで
に、戦後日本を代表する建築家でもあったのだ。内容をコンペにしぼっ
て書く、という方法もあっただろう。しかし平松は、丹下の人生を描き、
磯崎の人生を描き、それによって、日本建築史のメインストリームを描
く道を選んだ。そのために、コンペ結果のくだりなどはあっさりしすぎ
ていて、ややおもしろ味にかける。ま、大逆転など起こるはずもない出
来レースですからね。それにしても、都側の意向も無視して、唯一「低
層案」をぶつけた磯崎、なんともスゴい男である。ラストがとてもいい
のだが、それは、読んでのおたのしみ、ということにしたい。
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都庁ビル設計のコンペで、実際に設計した丹下健三に対し、磯崎新がどのようなアプローチで都庁を捉えたか。本人を含む周辺のインタビューも踏まえ執筆したノンフィクション。実験小説のようなアプローチだ。地の分で視点が頻繁にずれるだけでなく、章や場面ごとで時間軸やターゲットが交錯し入れ替わる。そんなカット&ミックスの進行はかなり読みづらい。文章までが大胆な思考実験のような編集だった。
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いや、面白かった。
これまで読んだこと無いジャンルではありますが、
建築もおもろいね。
自分にはその才能はありませんが。。。
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「ぶっちぎりで勝つ」ことにこだわる丹下健三と、その弟子である磯崎との都庁コンペでの死闘を描く。
超高層を要求されるコンペで磯崎は唯一、あえて低層案を提出した。
そこに至るまでの思想には同調するけど、デザインはやっぱり丹下案がいいかなー。
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新都庁建設の指名コンペに纏わるお話。
超高層という要項に対し、中低層のカウンター案をだした磯崎新。
実現していれば間違いなく磯崎新の代表作になったほどのプログラムの素晴らしさを持っていた。
だけどカウンター案はその内容の素晴らしさなどは問題にならず、結局カウンター「案」のまま終わってしまう。
カウンター案は所詮カウンター案でしかないのだ。磯崎新に政治的な感覚や政治力がなかったと言えばそれまでだ。
でもアンビルトに終わったからこそ伝説として語り継がれているともいえる。
あまりに浅い本で小難しい話はいっさいない。単に読み物として楽しめる。
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2009/09/12 購入
2009/09/15 読了 ★★★★
2024/01/20 読了 ★★★★★
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2009/03/-03/30
天神
磯崎もだが、丹下についてわかりやすく説明されていてよかった。
一応この業界に足を突っ込んでいるのだから、このくらいは読んでおかなくては。
しかし話が飛んでわかりにくい部分と、著者の主観的な書き方で、単純な記録の意味でのノンフィクションではない。
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都庁舎の新宿移転時に行われた設計コンペの経過を磯崎事務所の視点で描く。
建築のうんちく、過去の回想、エピソード的な話が盛りだくさん詰め込まれている。
そのためか、非公開だったことも有りコンペの選考過程の話は薄い。
市民が理想とする、民主主義的な都市のイメージに近いのが磯崎の中庭的な広場を飲み込む低層案。
役所の権威、象徴、ランドマーク的なものという意味では、良いか悪いかは別として丹下の案が正解に近いであろう。
市民の中にも、思った以上に権威にひれ伏すのを好む層が多いのではないだろうか。
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建築士でもある著者の前作(光の教会―安藤忠雄の現場)も面白く読んだが、これは1985年に行われた新都庁舎コンペの内幕を書いたノンフィクション。本命と言われた丹下健三に対し、低層案で勝負した磯崎新。それぞれの事務所の格闘の軌跡が、建築家の思想や人となりと共にドラマチックに書かれている。
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むちゃくちゃ面白いです。
当選した丹下大先生ではなくて、
落選した方を取り上げる視点がいいです。
日本のモダニズム建築の流れから、現在に通じる建築界の人間模様まで網羅していて建築史読み物としても充実。
今年読んだノンフィクションで一番の収穫。
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読み始めたら、これが止まらない。500ページ近い大作だが、一気に読み終えてしまった。
巻末の年表を見ると、僕が手にした7月23日は磯崎新77歳のバースデー。偶然というのは不思議なものだ。何の縁もゆかりもないのだけど、一方的に磯崎氏にはシンパシーやら縁を感じる。
僕は建物の保存活動にかかわっているが、そんな中、参考になるものはないかと、最初に当たった文献が磯崎氏の「大分県立中央図書館」がアートプラザとして再生するまでを描く「建物が残った―近代建築の保存と転生」だった。
さらに、この本を読んだ後、大分行きが急きょ決まり、アートプラザほか磯崎建築巡りをするなど、連鎖反応が起こった。
前置きが長くなったが、さて、本題。1985〜86年、戦後日本最大のコンペティションとなった新都庁の舞台裏を描くノンフィクション。このコンペは指名制で行われた。大手設計事務所に声がかかったが、当時、中小企業に過ぎなかった磯崎のアトリエの名前もあった。
本命は丹下健三氏。磯崎は東大時代、丹下の研究所に籍を置き、師匠に当たる。コンペ説明会に向かうエレベーターの中で、磯崎と丹下はバッタリ会う。磯崎は挨拶するが、丹下は無言のまま立ち去る。
スタッフに「ぶっちぎりで勝とう」と宣言する丹下に対し、磯崎は低層ビル案で挑む。
コンペの行方、二人の生きざまをシンクロさせて描いており、建築には詳しくないという人も十分楽しめる。文章も軽めで分かりやすい。
磯崎が体験した空襲、大阪万博、学生紛争、バブルといった歴史的トピックスには、イサム・ノグチ、岡本太郎、山田洋次、唐十郎、赤瀬川隼彦、赤瀬川原平らと有名人も絡み、面白さを増している。
磯崎の人物像についてはさらに書き込みがあってもよいが、現役建築家とあって、さまざまな制約、自主規制もあったのだろう。それでも、それぞれの人物像にはスレスレのところまで切り込んでいる。
現代建築史を知るテキストという面もあるが、やはり面白さは師弟の愛憎ドラマにある。最後もなかなかひねりが効いている。必読。
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知人のSNSで紹介されていたので気になった本です。
磯崎新さんについては著名な建築家という程度しか知りませんが、昨年(2022年)暮に訃報が流れ、改めてその人となりの一端なりともたどってみようと思いました。
本書は、現都庁建築時のコンペの場を舞台に、磯崎さんの魅力的な人物像と彼を取り巻く様々な人たちとの営みの様を描き出しています。
当時の時代感の描写や人間関係・師弟関係の妙がとても面白く、密度の濃いとても刺激に満ちた内容でしたね。
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ことしのノンフョクションベストですね。文章が平易で判りやすく、かなり基本的なことまで懇切丁寧に解説してるんで、専業のNFライターの方かと思ったら著者は建築家だった。磯崎新と師匠丹下健三の関係、そして陰で二人を支えた岸田日出刀。コルビジェから連綿と続くモダンデザインとポストモダン。『国家の須要に応ずる』ことを運命づけられたエリート集団としての東大。現在(1985)と過去を往復しながら磯崎を、丹下を浮き彫りにする。
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読み物としてたいへん読みやすくおもしろかった。当時の建築業界を取り巻く情勢がわかりやすくおもしろかった。丹下健三がらみの話がかなりあった。
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戦前の岸田日出刀から前川、そして丹下、本書の主人公たる磯崎と、日本の近代建築のメインストリームをその各時代で代表する建築家達の関係を縦糸に、東京都庁という「日本最大のコンペ」における建築家たちの奮闘ぶりを横糸として、非常にコンパクトに多くの内容を詰め込んだ、エンターテイメントとしての建築書。なんだかんだと小難しい理屈を振り回しながらも、結局は「かっこいいから」この形を選ぶ、あるいはなんだか良くわからないまま選んだ形にあとづけでそれらしい説明をくっつける、リアルな建築家たちの息遣いを赤裸々に綴った文章にも好感が持てる。