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商品説明
労働法の現在がわかる体系書。個々の解釈問題を相互に関連づけて検討する。2007年に成立した労働関係の基本法である労働契約法の解説はもとより、パートタイム労働法などの大改正に対応し、全面改訂を施した第8版。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
菅野 和夫
- 略歴
- 〈菅野和夫〉1943年東京都生まれ。東京大学法学部卒業。同大学名誉教授、明治大学法科大学院教授、中央労働委員会会長。著書に「争議行為と損害賠償」「新・雇用社会の法」など。
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紙の本
労働法の重要性
2008/06/28 02:31
13人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
8版の最大の改正点は、もちろん先年施行された労働契約法が盛り込まれたことである。その結果、7版補正版から50Pくらい増えており、労働法を本格的に勉強する人は、残念ながら買わざるを得ないだろう。
労働契約法を見てみると、確かに出向や解雇、懲戒などについて明文で権利濫用が書き込まれた。とはいえ、結局は今までの判例法理をそのまま明文化しただけな部分が多いので、それほど抜本的な変化が実務に生じるわけではないだろう。とはいえ、学部試験やらで労働法の答案を書くときは個別労働関係の話が出たら、労働契約法の条文にはほぼ必ず触れなければならないだろう。その意味で、試験を受ける者にとっては重大な改正があったといえる。
労働法とひとことでいっても、それはそれは無数の法令がある。フレックスタイムひとつとっても、労働基準法はもちろん規則、行政解釈の細かい部分まで検討しなければいけない。労働法という科目は、なぜか司法試験でもよく選択されるのであるが、簡単だからというのはとんでもない誤解だと思う。ボリュームは知的財産法以上であるし、選択科目ではトップだろう。
しかも俗なことをいえば、将来高額報酬に繋がる可能性は極めて低い。莫大な報酬を得られるのは、破産法や知財法である。なにもいいことはない気がする。破産法は民法の勉強に大いになるが、労働法はほぼ民法との相乗効果もない。
しかし、労働法というのは国家にとって極めて重要な法律である。使用者に偏っても、労働者に寄っても国家の経済に悪影響を与える。何でもかんでも使用者がダメ(その典型が、トヨタを奴隷使いのように罵る連中である。これはほぼ事実誤認に基づく誹謗だし、そもそもそんな企業が高い忠誠心を得られるわけないし、世界トップクラスのスーパーカンパニーになれるわけない)というのは、メガコンペディションの大競争時代には有害無益である。そして、従業員搾取を許すような雇用形態は結局、国民経済に悪影響を及ぼすことは明らかである。いずれを欠いてもメガコンペディション時代、通用するものではない。時価総額が下がって外資に買収されれば、技術だけ持っていかれて、給与の高い日本工場は閉鎖である。
つまり、労働法解釈および立法においては、使用者労働者どちらを保護するという観点に加え、国際競争時代に合わせた設計にしなければならない。その意味で、労働法の教科書に多く見られる従業員有利な解釈というのは有害である。その点、菅野先生は大体中間のバランスのとれた見解を採っている。だからこそ、長らくもっとも権威ある教科書として読まれているのだろう。