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- カテゴリ:一般
- 発売日:2008/02/01
- 出版社: 作品社
- サイズ:20cm/374p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-86182-149-3
- 国内送料無料
紙の本
山本周五郎探偵小説全集 5 スパイ小説
山本周五郎の知られざる探偵小説62篇を大集成。第5巻には、日米の決戦前夜に暗躍するスパイX13号こと大和八郎と、彼を陥れた米国の美少女スパイ・リリアンの運命を描く「少年間...
山本周五郎探偵小説全集 5 スパイ小説
紙の本 |
セット商品 |
- 税込価格:22,000円(200pt)
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商品説明
山本周五郎の知られざる探偵小説62篇を大集成。第5巻には、日米の決戦前夜に暗躍するスパイX13号こと大和八郎と、彼を陥れた米国の美少女スパイ・リリアンの運命を描く「少年間諜X13号」など、スパイ小説6篇を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
少年間諜X13号 | 4−118 | |
---|---|---|
うたえ西風 | 119−259 | |
人間紛失 | 260−283 |
著者紹介
山本 周五郎
- 略歴
- 〈山本周五郎〉1903〜67年。山梨県生まれ。43年「日本婦道記」が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞を拒否し続けた。他の著書に「樅ノ木は残った」など。
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スパイ小説、っていうのは大人の小説としては成り立つんですが、児童小説となると難しい。特に、動機がいい加減になります。流石の周五郎でも、その壁を乗り越えることはできなかった、というか越える気、なかったみたい・・・
2008/05/29 20:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎月楽しみに読みつづけてきた山本周五郎探偵小説全集ですが、相変わらず小川惟久の装幀は素晴らしくて、感心してしまいます。カバー全体に模様をつけるのではなく、全体を大きくまとめ、ポイントで楽しむ、まさに大人のデザインで、ああ、これがスパイなんだ、と楽しみ倍増です。
でも、気になるのはタイトルの「スパイ小説」。探偵小説であれば、善悪の判断は簡単につきますが、諜報ものとなればそこが難しい。安直に外国人=悪人=スパイなんて決めつけから話を進めて欲しくはありません。冒険小説的なものではなくて探偵小説的な展開をしてもらえれば嬉しいな、なんて無理な思いを抱いたりして・・・
で、ここで書いてしまえば、今回の話でもっとも楽しんだのが「うたえ西風」です。これがスパイ小説?とは思いますが、圧倒的に面白い。何だか吉屋信子の少女小説を読んでいるような気分になります。シンデレラストーリーの変種というか貴種流離譚というか、上京した少女の受難の日々、遂に彼女は・・・
はらはらどきどきの展開なのですが、ここで断っておきます。このお話、未完です。最初に断ってあればそれなりに覚悟して読んだのでしょうが、楽しみながら、さあ、これで康子が救われる、と思った瞬間に先がなくなります。勢いよく走ってきて角を曲がったら道が無かった、とでもいいましょうか。せめて未完の作品は巻末に持ってきて欲しかった・・・。でも、この中ではベストであることは間違いなし。
後先になりましたが、各話について初出とともに簡単に内容紹介をします。
・少年間諜X13号(「少年少女譚海」1932年4月~12月):少年給仕大和八郎、実は帝国特務機関(軍事探偵)の最高名誉であるX13の鉄章を持つ人間だった。ボストンでアメリカ人に殺された大和久弥大佐の息子である少年の前に立ちふさがる美少女リリアン・・・
・うたえ西風(「少女世界」1931年1月~10月中絶):東京に出てきた向原の康子は15歳、本来なら18歳まで爺のもとで暮らすはずだった彼女を待ち受けるのは欲に目のくらんだ叔父と贅沢に狎れきった子供たち、一番年下の少年に懐かれたものの・・・
・人間紛失(「少女倶楽部」1937年6月増刊):三千人の観客が見守る大劇場の舞台から少女が消えた。彼女の名前はジュリや、以前、曲馬団にいて今は八千代の家の小間使い、姉妹のように仲のいい彼女が書類を届けるという日に・・・
・胡椒事件(「少女倶楽部」1938年3月):なぜか胡椒が品薄になっている日本。そんな時、外資系の企業「欧米商事会社」の秘書室で働く16歳になる相良百代が手にした紙切れ、兄の申吾に見せたところ・・・
・猫眼レンズ事件(「少年少女譚海」1939年3月):新東光学研究所では外部に情報が洩れないように管制がしかれている。にも関わらず、重要な秘密が海外でニュースになった。内部にスパイはいるのか・・・
・翼ある復讐鬼(「少年少女譚海」1939年4月):麹町にある航空力学の大家・角南博士の家から娘の由美子が誘拐された。七階建てのアパートの最上階のガラスに貼られたメッセージと空中の怪しい影・・・
・編者解説:末國善己
スパイ小説の悪さが出たのが「胡椒事件」ではないでしょうか。結果として百代がとった行動は現在で言う内部告発になり、あっぱれ、というところですが、その動機たるや、こそ泥でしかありません。失敬したものが偶々悪事を暴くことになりましたが、社会人としての倫理感はどこへ?です。国のためであれば悪事も辞さないという点では、「欧米商事会社」も相良兄妹も同じこと、ここがスパイ小説の悪いところ。
意外性では「猫目レンズ事件」でしょうか。やはり探偵小説として構成がしっかりしていると、話全体が甘くても謎解きだけは楽しむことができるのが嬉しいです。でもベストは「うたえ西風」、これだけは譲れません。