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商品説明
パリス・ヒルトン、天下り官僚、オーラルセックス、格差問題、テロリスト、オリンピック、ツンデレ萌え、そして日本銀行…。知恵と笑いと毒ですべての問題をズバリ解き明かす新しい経済学。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
田中 秀臣
- 略歴
- 〈田中秀臣〉1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科単位取得退学。上武大学ビジネス情報学部准教授。「リフレ派」経済学者の代表的論客。著書に「経済論戦の読み方」など。
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紙の本
テロ、官僚、利子といった3悪?への理解がスゴイ!
2009/01/16 16:03
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:T.コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
●リフレ2%の真実とは
リフレ派が主張する2%のインフレターゲットの根拠はホントのところ何なのかと思っていたら、それは日銀が金融政策の根拠にするCPI(消費者物価指数)にもともと誤差?があるということだった。
単なる経済規模(量質ともに)の現状維持ならば自然的なロスを勘案して成長率ではGDPで2~4%の拡大再生産が必要か?などと考えていたのだが。金融政策を根幹として算出される数値としては2%程度のインフレ率が適正となるようだ。
CPIには上方バイアスがあり「実態よりもインフレ気味に出る」という指摘はあまりにも貴重。この認識がなければ、日本の現況に関してラジカルな分析はできないようだ。
中央銀行(日銀)による利上げ(利下げ)が0.25%単位という世界で、CPIの2%に近い数値の違いに著者は激怒している。本書は、こんなに明白なそれでいて市井の人間にはほとんど関心がないようなところを鋭くえぐりだしている内容が満載だ。
●テロの理由とか
著者は「組織(宗教的あるいは政治的な組織)や国家へのコミットメント」がテロの理由の鍵になる…とクリューガーの指摘を紹介。「テロ志望者は」「彼ら自身の利己的な動機(お金や出世など)には関心を払わない」とし、利己的なものより「テロ組織やテロ国家の使命に忠誠心を持つがゆえにテロに走る」のだという。著者が期待し、また自身もそうであろうとする「お金がすべて的経済学とは違った経済学」による分析だ。
このような<非利己的であること>や<忠誠心を示すこと>とは本質的に何を示しているのか? これらは共同体への帰属意識の発現であり、前者は共同性へのスタンスを後者はそのことによる自己認知へのオーダーを示している。前者が規範となり、規範を守ることによる後者の発現というのは、そのまま共同体と構成員たる個人の関係(フィードバック)を示しているワケだ。テロに関していえるのは、常識や一般社会という緩い共同性ではなく、共同体への帰属意識(根源的には自己認知への願望が対象化したもの)が生存への欲求を超えている、ということにつきるだろう。
911をはじめとするテロに対して、著者は「相手の立場になることで対処しよう」という。相手の立場になる…それはコミュニケーションの目的であり本質であるはずだが、それがテロつまり最も敵対する相手への対処方法でもあることが示されている。テロに対して報復を叫ぶわかりやすいヒステリーに対して「相手の立場になる」という当り前のことを述べるのが<不謹慎>とされるならばこそ本書は読まれるべき必読の書だ。
●官僚、談合、
経済学の認識では「天下りは市場と折り合いをつけている合理的なシステムである」と紹介し「官僚の天下り、本当は正しい!」とタイトルされている。
実をいうと談合でも似たようなことがいえると思う。
以前、某唯一前衛党を自認する正統?左翼政党が機関紙で「談合は正しい」と書いていたことがあった。単なる競争入札だといちばんコストが安いところが落札するが、コスト圧縮を略れるのはスケールメリットや技術力のある大手だけであり、ひとり勝ちが続いてしまう。談合による弊害は申し合わせて落札コストを吊り上げることだが、それ以外では弱小企業にも必ず仕事が回ってくるという互助的あるいは協同組合的な意義があった。完全自由競争では強者のひとり勝ちになるために、将来にわたって勝てそうにない弱者にとっては救済策というセフティネットが必要だが、いい意味での談合にはその必要がない。事業の規模などに応じて「今度は小さいところでやりましょう」などと仕事が回されるからだ。これは公共事業でなくとも民間企業のいくつかの入札に関わったりすると見聞できる事実でもあった。経済的に余裕があった時期には出入りの企業それぞれに満遍なく仕事が回されていたのだ。
誰でも自己の能力とその成果を正当に評価されるのは生きていくことの大前提であり希望だろう。官僚においてのそれは何なのか?が問題なのであって天下ることや再就職の後の報酬額が問題なのではない。かつて宮台真司が官僚への認知とモチベーションを保証するものが必要だと主張していたが本書でも同じことが経済学的に指摘されている。
●無様な現状のラジカルでシンプルな原因は
「日本の長期停滞は総需要不足が原因だ」という指摘がラジカルだ。こんなに当り前の主張には誰も反対できないばかりか、経済の原理はこの一言に尽きる。需要の無いところに供給はないし生産も無い、つまり仕事も無く給料も無い…極論すればそうなる。
しかし著者がオリジナルであり優れているのはそういう真理をシンプルに説明できるからだけではない。この「金利」や<利回りによる利益>追求も需要として認め、それらを加えて「総需要」としているところがスゴイのだ。日本の学者としては。
残念ながらアングロサクソン云々とされる国家やG8加盟国つまり先進国ならば当然であるこれらの認識が日本では決定的にバイアスを加えられたものとなっている。投資家の利益の一端である配当利回りを認めず、グローバリズムを鬼畜米英並に認識している限りでは宮台のように<日本は民度が低い>と言わざるを得ない。わかりやすく言えば小泉-竹中による構造改革が格差を生んだと考えるようなスタンスには、とうてい利廻りや投資が需要だという認識は持てないだろう。
イギリスは産業の進展の結果、ロンドンが金融センターとなった。そして<利子>を源泉とする金融立国ならではの国家ブランディング(国家の信頼の周知)を戦略としている。<市場>という<関係>において<支払い保証>は<信用>や<信頼>そのものだからだ。もはや物質ではない経済関係が実態としてそこにはある。個人でいえば<愛>や<心>に基づく(基づける)関係であり、成熟した社会や国家の姿だといえるかもしれない。
イスラム教はロゴス(成文として)によって利子を禁じたが、日本人はKYによって利子(投資)を禁じているようなものだ。イスラムは利子の代替として貸し付け使用料を獲るが、日本は清貧というカスミでも食わせるのかもしれない。さすがスピリチャルばやりの国だということか。統制3法による戦前からの支配体制は構造改革で崩壊しつつあるが、明治・大正時代の浪いと恋愛の自由闊達な精神はいつ復活する(しない)のだろうか?
紙の本
出版社・著者コメント
2008/02/21 16:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:講談社 - この投稿者のレビュー一覧を見る
常識のウソを暴き、「正しい暴論」で世の問題を解き明かす
新しい経済学の誕生!
「パリス・ヒルトンは刑務所に入って得をした」
「最低賃金を引き上げると、失業も雇用も悪化する」
「官僚の天下りは、本当は正しい」
「オリンピックやサッカーワールドカップが終わると、開催国は不況になる」
……などなど、ちょっと聞くと「ウソでしょ?」と問い返したくなる言葉の数々。
しかし、これらはどれも、気鋭のリフレ派経済学者として活躍する著者が、まっとうな経済学の教えに基づいて考察した「正しい暴論」なのだ。決してただの逆説ではない。
経済格差やニート問題、萌え文化、国際的なテロの横行、愛とセックスとエクスタシー、それに日本銀行の迷走ぶり……と、さまざまな出来事や事象を材料に、世界の常識とされていることを、著者は「不謹慎」に次々と覆していく。
その根本にあるのは、「お金がすべてではない世界や、アンチ弱肉強食の世界を創るためにこそ、経済学は存在する」という信念だ。
そうやって著者の博識とユーモアと毒を楽しみつつ、経済や社会のカラクリを鮮やかに理解できる一冊である。
●著者からのメッセージ
経済学と聞くと、人は「お金ですべての問題が解決できるとする考え方」とか「社会を弱肉強食化させようとする考え方」というイメージを持つかもしれない。しかし、僕が考える正しい経済学は、それとは正反対のものだ。経済学は、過度の競争が行われない社会や、弱肉強食化しない社会のあり方を考えるためにある。あるいは、「お金ですべての問題が解決できるわけではない」ことを学ぶためにこそ、経済学の存在意義がある。
それを説明するため、一見、経済とは関係なさそうな話題を取り上げたり、世間で常識とされていることをひっくり返すような逆説(?)を掲げたりしながら、話を進めてみたい。そう考えて書いたのが本書である。
【著者について】
田中秀臣(たなか・ひでとみ)
1961年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科単位取得退学。現在、上武大学ビジネス情報学部准教授。
専門は経済思想史・日本経済論。「リフレ派」経済学者の代表的な論客として、各メディアで積極的な発言を続けている。サブカルチャーにも造詣が深い。
著書に『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)、『エコノミスト・ミシュラン』(共著、太田出版)、『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』(講談社)、『経済政策を歴史に学ぶ』(ソフトバンク新書)などがある。
『昭和恐慌の研究』(共著、東洋経済新報社)で第47回日経・経済図書文化賞受賞。