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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.2
- 出版社: メディアファクトリー
- レーベル: 幽ブックス
- サイズ:20cm/317p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-8401-2174-3
紙の本
深泥丘奇談 正 (幽ブックス)
著者 綾辻 行人 (著)
体調に不安を覚えて検査入院した語り手の奇怪な目撃談「顔」、散策の途中で遭遇したローカル線の妖しい記憶をめぐる「丘の向こう」…。京都を舞台に、せめぎあう日常と超常、くりかえ...
深泥丘奇談 正 (幽ブックス)
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商品説明
体調に不安を覚えて検査入院した語り手の奇怪な目撃談「顔」、散策の途中で遭遇したローカル線の妖しい記憶をめぐる「丘の向こう」…。京都を舞台に、せめぎあう日常と超常、くりかえす怪異と忘却を描く怪談絵巻。全9話収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
顔 | 7−33 | |
---|---|---|
丘の向こう | 35−60 | |
長びく雨 | 61−87 |
著者紹介
綾辻 行人
- 略歴
- 〈綾辻行人〉1960年京都府生まれ。87年「十角館の殺人」でデビュー。他の著書に「時計館の殺人」「最後の記憶」「眼球綺譚」など。ミステリおよびホラーを中心に著書多数。
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紙の本
怖さも、奇怪さもいい塩梅。
2010/02/06 14:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あやつじさんって結構読んでいるし、好きなんだよな」と誰かが言った。
暗いバーの止まり木での常連仲間との会話だった。
あやつじさん、あやつじさん、綾辻さん?
頭の中が高速回転しながら検索した。
その夜、積ん読の中から綾辻さんのこの本を捜し出してひらいた。
過去一度開き、限りなく私小説の匂いを感じてすぐ閉じてしまった本だ。
ちちち・・・・・・と、最初はそう聞こえた。ーような気がした。で始まる「顔」
「丘の向こう」
「長びく雨」
「悪霊憑き」
「サムザムシ」
「開けるな」
「六山の夜」
「深泥丘魔術団」
・・・・・・ちちっ、ちちちちちちち・・・・・・ち。で終わる「声」
怪談専門誌「幽」の創刊2004年の春から短編創作怪談として連載された9編から構成されている。
作者の言葉を借りると、この深泥丘連作の舞台は、作者が生まれ育った京都の町であり、語り手の私も、ほとんど作者と等身大の職業作家という設定。
これまで書いてきた中で最も自分の日常に密着した小説だと云えるが、それでいて、最も現実には起こりえない諸々を描いた小説群でもある。
読んだ後の感想も同じだった。一等最初に感じた私小説そのものだ。
奇怪な現象や自分の目で見たはずの体験に、振れ幅少なく静かな反応をする。
淡々として、妙に冷静な語り口も、ちょっと奇妙。
だが、それは楽しんでいるからだろう。
深泥丘連作を、こうしてみよう、次はああしてみようと自由に楽しんで書いているのだろう。
余裕の遊び感覚で綴られた怪談は、怖さも、奇怪さもいい塩梅。
ちちちちちち・・・と云いながら、これはしたりとほくそ笑む作者が見えるようだ。
紙の本
泥のような境界にうかぶ
2008/05/16 10:49
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
祖父江慎の装丁がすばらしくそれだけでも買った価値がある、といったら著者に失礼だろか。しかし著者の醸し出す不可思議でビミョーにずれた、ドロリの世界を装丁が補完して余りある。
こちらとあちらの境界が泥のように濁っている不思議な「日常」に、作家・綾辻氏自身を投影させた主人公はいつの間にかあちら側に入り込んでいる。
「奇談」と題にあるだけあって薄気味悪い話、奇妙な話がほとんどだが、どれも狐に化かされた、といって片付けられてしまいそうな虚無感がある。
一貫して主人公はその奇妙な展開に「・・・のような気がする」と他人事だし、己の立ち位置も記憶も過去も肯定出来ないでいる。しかしこれはかなり恐ろしいことではなかろうか?
同じ苗字の医者が幾人もいる病院、いつの間にかいつでもどこでも現れる看護婦、寄生虫で治療する虫歯、胃カメラに移った自腹のなかの「顔」、見知らぬ電鉄、奇妙な古代塚・・・
ふとしたきっかけで此岸と彼岸は180度回転する。いや、そもそも自分の信じていた「こちら」など存在しなかったのでは?とリアルの焦点はズレだし、信じていたはずの日常を遂に放棄した時点で、各物語は終わっている。己の記憶も過去も否定され、「普通」の基準も常識も通じない世界に一人放り込まれたら・・・これほど恐ろしいことは無い。
人間はマイナスの出来事・・・気味悪いとか怖いとか、そうしたことはさっさと忘れるように出来ている。だから安心して読むといい。本書に現れるどの奇談も、すぐに終わって夢物語のうちに消えるのだから。
紙の本
この本を読む限り、綾辻でなければ書けない話しではない、そう思います。でも、最大の謎はこの本の奥付はどこにあるか、ということなんです。気になりますよ、printing history
2009/02/04 20:17
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
目の錯覚でしょうか、奥付が見当たりません。ということは、本を見て初版がいつだとか、これが第何刷にあたるとか、そういった printing history を知ることができない?丁寧なことに、カバー画の担当や挿し絵、装幀者も不明?それって本にとって自殺行為じゃない?それとも革命?絵に味があるだけに困惑です・・・
でも初出だけは書かれているので、各話のあらすじ、というか軽い要約とともに写しておきましょう。ちなみに、著者によると舞台のモデルは京都なんだそうですが、まったくその雰囲気はありません。京都言葉が出てこない、というのもありますがどうもこれは綾辻の文章表現上のデフォルトなんじゃないか、なんて思います。
・顔(『幽』vol.1/2004年6月):体に変調をきたした作家・私が入院することになったのが医療法人再生会 深泥丘病院で、担当となった医師は「石倉(一)」という名札をつけた、私と同年代らしい40歳くらいの、左眼に眼帯をした男だった。医者の勧めで内視鏡検査を受けることになって・・・
・丘の向こう(『幽』vol.2/2004年12月):自宅から山のほうへ散歩していた私が見つけたのは見ず知らずの線路、妻に聞くと知らないほうがおかしい、一緒にいったこともあるというQ電鉄の如呂塚線だという。鉄道マニアの間でも有名な線路を何故忘れてしまったのか、気になった私は病院を再訪して・・・
長びく雨(『幽』vol.3/2005年1月):長引く雨の中、妻と古い写真に写っていた橋が黒鷺川だということを確認した私が、深泥丘病院の待合で耳にした患者たちの気になる会話「・・・・・・そろそろ真面目に考えないといけないのかしら」「そうよねえ。やっぱりそろそろ・・・・・・」「手遅れになる前に・・・・・・」・・・
悪霊憑き(『ミステリーズ!』2005年8月):11月の中旬、黒鷺川の支流の一つ、深蔭川沿いを散歩している時に見つけたのが水死体。その顔全体には、何本もの異様な線が引かれて・・・・・・。名前は井上奈緒美、34歳、鷺寺町に老母と二人で暮らす、界隈では有名な女性だった・・・
サムザムシ(『幽』vol.4/2005年12月):突然の歯痛で深泥丘に行くことになった私の担当となったのは「石倉(三)」という名札をつけた、他の石倉医師そっくりのお医者さん。彼の質問に答えるうちに思い出したのが、以前、歯を治療したのが家内の実家の在る南九州の猫目島・・・
開けるな(『幽』vol.5/2006年6月):私が思い出すのは、父方の祖父の家の事。そこには近寄ることを禁じられた不思議な建物があった。妻が如呂塚の古代遺跡に行って買って来たおみやげ「遺跡発掘セット」。土偶がでてくればいいな、と目を輝かせる妻の前で、早速、発掘を始めると・・・
六山の夜(『幽』vol.6/2006年12月):病院のエレベーターで乗り合わせていた人たちの会話から今日が「五山の送り火」の日だということを思い出した私だが、さらに今夜はどうやら六山だという。深泥丘病院の屋上を開放するからと、石倉医師に誘われた私は・・・
深泥丘魔術団(『幽』vol.7/2007年6月):深泥丘病院の締め切られた一室に集う40名近い人々の前で繰り広げられる恒例の素人の奇術の夕べ。出演者は地元の奇術愛好会〈深泥丘魔術団〉のメンバー。三年ぶりに開かれる会には、会長先生も十八番を披露する・・・
声(『幽』vol.8/2007年12月):年が明けようとする夜、妻と二人でテレビを見ていた私の耳に飛び込んでくるのは、なにやら獰猛な獣の叫びのような声。紅叡山に棲息する何らかの哺乳類だろうか。そのせいか発熱してしまった私が深泥丘病院で処方されたのが色々噂のある薬タミフル・・・
あとがき
怖いのかなんだかよくわかりませんが、こういう精神を病んだような話は巷に多いので、新鮮さはかんじません。また綾辻が書かなければならない、というものでもなさそうです。著者にとっては目先が変わって新鮮なんでしょうが、読者はそうではない、そんな実例ではないでしょうか。
とはいえ、才ある作家であれば、繰り返しているうちに何かを掴んで化けることがあるわけで、綾辻であればそのようなことが起きないわけではないでしょう。そういうことがあるのを夢見ながらじっくり見守っていたい、そういう気もします。
紙の本
主人公の現実か妄想か
2018/12/31 16:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:沢田 - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇妙な病院に通院する主人公の、現実か妄想か曖昧な物語。
この雰囲気は伊藤潤二の漫画を思い出すなあ。
読んでいくうちに奥さんが一番不気味に思えてきた。