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商品説明
桜田門外3月3日、雪は何時にやんだのか−。史料を徹底的に調べ、現地に何度も足を運ぶ。そうして生まれた吉村文学の舞台裏について、記録文学・歴史文学の第一人者がはじめて語った、貴重な歴史の証言。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
作家の運命 | 大河内昭爾 述 | 7−28 |
---|---|---|
歴史に向きあう | 永原慶二 述 | 29−45 |
杉田玄白 | 三國一朗 述 | 46−61 |
著者紹介
吉村 昭
- 略歴
- 〈吉村昭〉1927〜2006年。東京生まれ。学習院大学中退。小説家。「星への旅」で太宰治賞、「破獄」で讀賣文学賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞。その他の著書に「戦艦武蔵」「漂流」など。
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紙の本
「記録」された歴史のいずれの時代も、人間は雄々しく生きてきた!
2021/03/07 14:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家吉村昭が執筆小説を題材に毎回異なる相手(歴史学者、作家、医師、評論家、文筆家)と語り合った「対談集」の本書から、お互いに共鳴した時代検証、人物評価、歴史観などが浮き彫りとなる。
吉村文学の特長が端的に示される書名の本書を読めば、事実に即した味気ない学術的論証に終始する歴史家と違って、史実に忠実ながらも丹念に歴史を掘り起こし、血の通った人間を描く作家の過度な装飾を排した物語を紡ぐ姿勢と信条が理解できる。
僅かな史料を手掛かりに、ある日の天候が雪ならその雪がいつ頃熄んだかを気に留め、街道沿いに目にする風景を調べ、登場人物の目線でその土地を歩いた吉村昭にとって、歴史を敷衍する小説を書くことは単に事実をなぞらえるものではなく、事実の裏側に潜む「真実」を見詰め直し、新たに発見する行為だった。
「桜田門外の変から明治維新までが八年間で、これはちょっと私には意外でした。二十年ぐらいあるんじゃないかと思っていたんです。また、二・二六事件から敗戦までが九年間ですし、その間にいろんな事件がぎっしりつまっていて、性格が同じじゃないかなと」(77頁)。
「百年やそこらたっても、人間、考えることはおんなじなんだなと思ってね。それで尊王攘夷がわかったんです。尊王攘夷論が水戸で興ったというのは海岸線があるからです、藩領に。彦根はそれがないんですよ。だからそこに基本的な危機感がない」(86頁)。
「幕府にはろくな人間がいなかったというのは、戦前の勝者の歴史なんです。幕府ダメ論というやつ。それがいまでも教科書に残っている。(中略)「たった四杯(隻)で夜も眠れず」を使って説明する(笑)。ところが、幕府は(ペリー来航を)事前に知っていたんです」(117頁)。
「ペリーが来航してから、外国の植民地になることもなく、うまく明治維新に滑りこませたのは、僕は幕臣だと思います。つまり、各国を牽制させ合わせたわけです。ハリスでもオールコックでもプチャーチンでも、応対したのはみな幕吏です。けっして薩長土肥ではないのですから」(145頁)。
「言葉」(文字)を持った瞬間から、人間は「歴史」を「記録」することを覚えた。
「記録」された歴史のいずれの時代も、人間は逞しく、そして雄々しく生きてきた。
時代を生きた人間の事績、足跡は、日常の営みや喜怒哀楽の記憶とともに「記録」に残され、文化・伝承・芸術といった遺産が人間の創った「歴史」に刻まれる。人間が存在する限り、「歴史」に途切れは生じないのだ…。