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商品説明
江戸川乱歩賞史上に残る問題作。七年の構想を経て、いま復活。【「BOOK」データベースの商品解説】
精神科に入院歴のある元力士による連続殺人事件が発生。精神科医の真梨子、茶屋警部の調べにより恐るべき犯罪が浮かび上がる。悪魔の犯罪を操るのは誰か。舞い戻った「脳男」が動く! 『IN☆POCKET』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
首藤 瓜於
- 略歴
- 〈首藤瓜於〉1956年栃木県生まれ。上智大学法学部卒。会社勤務等を経て、2000年「脳男」で第46回江戸川乱歩賞受賞。他の著書に「事故係生稲昇太の多感」「刑事の墓場」がある。
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紙の本
前作が巨大過ぎました。主人公すら、己の毅然とした態度を捨ててしまう。7年の空白が、世の中の常識への擦り寄りでしかないとしたら、それは余りに虚しい・・・海堂尊『ジーン・ワルツ』に完敗
2008/05/26 20:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この話の前段に、2000年に出版された乱歩賞受賞作『脳男』《連続爆破犯逮捕の現場にいた男 鈴木一郎。精神鑑定を依頼された鷲谷真理子に見せる男の異常》があります。今回はそれから一年後の愛宕市が舞台で、前作で活躍した真理子、茶屋、そして鈴木一郎が登場します。背景として『脳男』を読んでいないと分らないことがありますから、未読の人はそちらから入ることを勧めます。
それにしても美しいカバーです。書店に平積されている二冊の煌めく本を見て、足を止めない人はいないのではないか、そう思います。無機的で冷たく周囲との交わりを拒否する、そういう孤高といってもいいクールさがひしひしと伝わってきます。これでカバーの地が鏡面でなかったら洋画家の森秀雄作品といっても通るかも、そんな装幀は多田和博、写真はgetty images。
さて内容ですが、愛宕市で精神科に入院歴のある元力士による殺人事件が発生します。一方、精神科医の真梨子のもとには、断酒に成功していたのに、失踪後、アルコール中毒に戻ってしまった男性が相談に訪れます。そして真梨子は、行方不明になった人間が異常な状態で発見される事件が相次いでいることに気づくのですが・・・
まず、犯人について言えば、予想できちゃいました、っていうのがピッタリです。多分、私だけではなくこの本を読んだ殆どの人が「ああ、やっぱり」と思ったのではないでしょうか。でも、十分楽しめるわけで、その理由はやはり事件の異常性、特に元力士だった寒河江治の行動にあると思います。
そういう意味で、自分の思っていることが当たっているか、を確かめたくて、というのと同じくらい、じゃあなぜこんな凄惨な事件が起きるのだろうかを知りたくて読んでしまうというのが、私のケースです。ただし、犯人はわかったとしても、最後に真梨子が表明する決意は少しも面白くありません。
一つは、この話が結局、今回も完結せず、どうもシリーズ化しそうな気配をみせていることです。いい話だからこそ終り方が大切で、中田英寿のように引き際の美しさを見せて欲しいと思うのは私だけではないはずです。もう一つが真梨子の下した結論です。
いつから人権屋の弁護士みたいな御託をいうようになったの、真梨子さん、『脳男』での貴女の行動は何だったの?本当に悪いのは誰?なんて・・・。海堂尊『ジーン・ワルツ』の曽根崎理恵を御覧なさい、彼女は自分の信念のために自分が所属する大学も、官僚も、警察すら敵に回す、あの崇高さを見習いなさい。
今回の本が『脳男』と同時に構想されていたものなのか、7年の間に考えが変わってしまったのかはともかく、前作のような凄さを感じさせることはありません。勿論、娘たちに廻すレベルでもない。やはり長男が優秀すぎると、次男の影が薄くなってしまうように、この作品も前作の偉大さの陰で萎縮しているような気がします。私の期待が大きすぎたかも・・・
ちなみに、松浦善三が行なう医療に纏わるブローカー的行為、これって以前報道された大阪の老人医療の実体を思い出させます。実際とは違うのでしょうが、こういう人間が医療には巣食っている、というのは説得力があります。しかし、関西は何が起きているか、怖いところ、いやはや闇ですね。
それと、出版社のWebでのこの本の案内が面白いので引用しておきます。上巻は
江戸川乱歩賞史上に残る問題作。7年の構想を経て、いま復活。
脳と精神と肉体と善と悪と神と愛と。
情報屋、統合失調症、精神科救急、連続爆弾魔、医療財団、関取、博覧会、記者会見、ケースワーカー、不安障害、神父、既往歴、拷問、ブローカー、天使、マグダラのマリア、救世主、絵画史、催眠術、白い帽子をかぶった牛、科捜研、ノアの方舟、イブ、電気ショック、捜査会議、マスコミ、DNA、フロイト、愛宕タイムズ
すべてを疑え、すべてだ!
下巻は
心を壊された体が暴れだす。悪魔の犯罪を操るのは誰か。
舞い戻った「脳男」が動く。
情報源、美術館、癌、アイリーン・フランクリン、偽の記憶、トラウマ理論、ジャクリーヌ、赤外線カメラ、フラクタル圧縮、ライダースーツ、検体、遺伝子、探偵社、自然史博物館、家系、加減乗除、サイレント・キラー、タペストリー、死せるイエス、昇天、ローター、臭い豚、人体実験、携帯電話、アンドロジニー、歯車
あなたはやはり怪物だったわね。
文章ではなくキーワードの羅列といのが珍しいです。最後に登場人物一覧。
・鷲谷真梨子:主人公の一人で、愛宕医療センターの精神科医師。年齢の特定ができませんが30代前半でしょうか。容姿についての言及も殆どありません。
・茶屋警部:主人公の一人で、八ヶ月前に県警本部の捜査一課に配属されています。年齢的には40代後半でしょうか。一年前の愛宕医療センター事件で行方をくらましている鈴木一郎を探すために異動要請を受け容れました。傍若無人な態度をとり、組織的な動きを嫌っています。
・鈴木一郎:主人公の一人で、本名は入陶大威、本来であれば入陶財閥の正当な後継者で、一年前に起きた事件の犯人と目され現在逃亡中です。
・寒河江治:衝撃的な事件の犯人で、北海道出身の元力士です。今から10年程前、26,7歳で引退し、2,3年前から白髪町の教会の屋根裏部屋に部屋を与えられて、雑用をしたり地域活動を手伝っています。今年五月から県立総合病院の精神科で、心因性の一次的な精神疾患の治療を受けていました。
・佐伯:県立総合病院の精神科に勤務する二十八歳の医師で、二年前、結婚したばかりの妻を失っています。
・乾櫻子:県立病院のケースワーカーで、佐伯のもとで働き、真梨子を姉のように慕っています。23歳の割に小柄で性格も明るいことから幼い印象をあたえますが、考え方も行動もしっかりしています。
・松浦善三:元衆議院議員の秘書で、現在は、患者の情報を病院関係に売買するブローカーです。
・潘マーシー:生まれも育ちも愛宕市という日本人で父親が中国系アメリカ人。61歳でしょうか、アメリカで精神科医をしていたといいますが、今は父親の残した資産を受け継ぎ、アカデミックな道を歩んでいます。4年前に帰国。昔、養女を事件で亡くしています。