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商品説明
矢部恭一は4年前の電車事故で最愛の息子を失っている。その慰謝料をやけくそで株に突っ込み大当たりした日から、二重生活は始まった。彼の表の顔は外車のやり手ディーラー、裏の顔はネット株に燃えるトレーダー。ある夏の夜、恭一は上場企業の社長を名乗る男から、自社の倒産情報と空売りを利用した裏取引を持ちかけられた。妻とのすれ違い、娘との不和に焦燥の日々を送る恭一は、迷いながらもその誘いに乗る。悪夢が始まるとは知らずに…。【「BOOK」データベースの商品解説】
事故で最愛の息子を失った恭一。彼の表の顔は外車のやり手ディーラー、裏の顔はネット株に燃えるトレーダー。ある日、上場企業の社長を名乗る男から裏取引を持ちかけられ…。『パピルス』掲載に加筆・修正を加え単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
樹林 伸
- 略歴
- 〈樹林伸〉多数の漫画の原作者として活躍。「金田一少年の事件簿」「探偵学園Q」などのヒット作を手がける。小説に「リインカーネイション」がある。
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紙の本
お金は大事だよー
2008/01/19 21:46
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本の紹介を見ると、ありがちなストーリーと思われる方が多いでしょう。実際に読んでみれば、設定も、話の展開も、登場人物も、ありがちでした。でも面白かったです。通勤電車の中で読んでいて、危うく降車すべき駅を乗り過ごすところでした。
ありがちと言うことは、それだけ普遍性があると言うことで、書き手に筆力があればグイグイ読ませます。目の前に点滅する株板があるかのような臨場感で、主人公の焦り、絶望、興奮が、我がことのようでした。
主人公は、外車の敏腕ディーラーという表の顔と、ネット株のデイトレーダーという裏の顔を使い分けている矢部恭一。息子を事故で失って以来、家族は崩壊寸前で、恭一は愛人をはじめ誰にも心を許さず、ただ巨額の金を動かすことで、かろうじて生にしがみついています。
そんな彼がある日、見知らぬ男から持ちかけられた裏取引。
確実な儲け話だった筈が、事態は一転して、恭一は悪夢へ転がり落ちていきます、
億単位の損失が現実のものになるかもしれない。
追い詰められた状況でポルシェを走らせる恭一は、(疲れた、もう眠りたい)と、悪夢から逃れる誘惑にかられ、アクセルを限界まで踏み込みます。
けれど彼は、踏みとどまりました。
そこから物語は後半、協力者を得た恭一は、死に物狂いで闘います。
闘いが、単に恭一の損失回避に終始したならば、それは単に億の金が動くゲームで、読み手にとって「所詮、ひとごと」だったでしょう。でも彼の闘いは、もっと違う何かに変わっていくのです。
一人、恭一だけでなく、彼の家族、愛人、協力者といった、登場人物のそれぞれが、お金で手に入れることができるもの、できないものについて思い、自分の人生においての、譲れない一線、かけがえのないものを再認識しました。
ちょっと、人間関係がきれいに収まりすぎるきらいがあるのですが、お金ってなんだろうという問いかけには「お金なんかなくてもいい」的きれいごとでなく、きっちり現実を見据えたあたり、説得力がありました。
ネット株も良いけれど、FXを題材にしたこういう小説が出てこないでしょうか。指南書を何十冊読むより役に立つと思うのですが。