紙の本
経済に対する姿勢と共にその人柄を知ることも出来る
2009/02/04 13:13
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼少期の描写を少なく留め、おそらくは多くの読者が望むであろう、民間エコノミスト時代、FRB議長時代の経済情勢と、それに対して下した判断とその思考過程に関する記述が多くを占めており、好感が持てる。特に、著者が関係した歴代政権の経済政策決定プロセスに関する記述は、経済面だけではなく政治面についても様々な示唆を与えてくれ、読んでいて楽しい。
本作を読むと、アメリカの共和党と民主党の党員が、大学教授などの本業をこなしながらも政党活動に関わり、その結果として政権運営に携わっていることが分かる。この仕組みの中で、優秀な経済学者などの人材はそれぞれの政党にプールされ、政権を支えるメンバーとなる。これは、政党側にもメリットがあるし、経済学者にもメリットがある。
経済学は物理学などと違って、実験室で理論を検証することが余り出来ない。小規模な対照実験により検証できる部分もあるが、金利・マネーサプライと景気の関係など、社会を犠牲にしてしか検証できない部分もある。しかし政権中枢にいれば、自分の経済理論を実地で検証する機会に恵まれることになる。失敗すれば批判を浴び二度と立ち直れなくなるかもしれないが、成功すれば賞賛の声と、もしかすると何がしかの実益を得られるかも知れない。
一方、日本では、政権内部に著名な経済学者が入ることは、余り無い気がする。これは、学者が政治に関わることを禁忌とみなす風習があるのかもしれないし、自分の理論が明確に否定されることを避けたいと思っているせいかも知れない。たいてい彼らは政権外部から批評のみを行い、自分の手で経済を動かそうとはあまり思わないようだ。このような姿勢では、他にも理由はあるかも知れないが、日本人がノーベル経済学賞を取ることは難しいだろう。
(最近では竹中平蔵氏がこの例外だったが、構造改革の否定という一語の下に、その価値が全て切り捨てられる傾向にある。これは政治への学者の取り込みを目指す際にはマイナス要因になるだろう。)
回顧録なので、若干自身の表現が美化される傾向にあることは差し引いて見るべきかもしれないが、色々と考えさせられるところの多い作品だと思う。
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先代のFRB議長アラングリーンスパンの自叙伝。グリーンスパンの凄さは卓越した経済分析力だけでなくホワイトハウスとの連携の上手さにもあるんだなと本書を読んで思った。1987年に就任して2006年に退任するまで実に19年間にわたって議長の座にあったグリーンスパン。在任中にソ連が崩壊して、その後浮き沈みしながらも世界経済を牽引してきたアメリカ中央銀行の議長をそれだけに期間勤めてきたのだから世界経済の「皇帝」であったと言えますね。よくストレスで倒れなかったね。「根拠なき熱狂」の時の舵取りは批判が多いですけど。彼の在任期間中の大統領はフォード、カーター、レーガン、父ブッシュ、クリントン、息子ブッシュの6人。それぞれの大統領を比較して論じているところが権威の大きさを物語っている。読みどころはやはりグリーンスパンの晩節を汚したとされる90年代後半のバブル処理の部分。アジア通貨危機を契機にLTCM危機、ロシア危機などの外生的要因があったり、FRBには株式市場には介入しないという伝統的な方針があり、政治的非難を恐れたことなど理由はいろいろ書いてあるけど、議会から独立している以上、大衆の期待に応えなければならない議会とは違うスタンスで政策を決定すべきだというのが一般的な解釈なのでしょうか。本書を通じて学べるのはアメリカの経済史とFRBの意志決定における哲学。分析結果だけをそのまま鵜呑みにするのではなく損益をよく考えた上で意志決定するのがFRB流だそうです。ブラックマンデー、LTCM危機、ミレニアムブーム、9・11テロの際の意思決定に関しては議会やマスコミに叩かれていただけに「俺はこんだけ頑張ってたんだ!」っていう主張が強くて非常におもしろい(笑)。
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18年間FRB議長として活躍したグリーンスパン氏の回顧録。
著者の価値観や人生観、人となりがよく分かり、時の大統領に
請われ、長くFRB議長であた著者とはどんな哲学を持っている
のかに、惹きつけられた。
また、ベルリンの壁崩壊後どう行動し、どう感じて
いたのかなど、大きな歴史的転換点における政策運営
の裏側を見ることができる。
政策判断に関わる大統領とのやりとりや時の大統領
を著者がどう評価していたかなどが、赤裸々に書かれていて、興味深い。
星をつけるのもおこがましいと思い、星5つ。
〈心に残ったことば〉
○著者が影響を受けた3人。?アダムスミス:個人の自発性と市場の力という啓蒙主義の考えを主張し、1930年代にはめいせいが失墜していたが、現在ではグローバル経済で圧倒的な力をもつまでにふっかつした。思想的に最大の影響を受けたのがアダム・スミス。?ジョン・ロック:イギリスの偉大な社会哲学者。人生・自由・財産に関する基本的な概念を確立した。?ジョセフ・シュンペーター:20世紀の経済学者。その創造的破壊の概念は現代資本主義で技術の変化が果たす役割の核心をついている。
○優秀な女性と付き合うのが苦になることはない。現に、そういう女性と結婚している。わたしにとって、空虚なデートほど退屈なことは考えられない。これは独身時代に失敗を重ねて学んだ点だ。
○ともに仕事をしていて、パーカーが権威を認められているのは主に、誰よりも経済をよく知っているからであることに気づいた。わたしはパーカーほど広範囲な知識を持っているわけではないが、差はそれほど大きくない。それに、毎日好きな仕事をするなかで学んでいる。仕事を続け、学び続けていれば、いつか追いつけるだろうと考えた。
○わたしが関わった大統領の中で、ニクソンとクリントンは飛びぬけて優秀。
○最終的に、自分がいちばん得意な部分だけに事業を絞り込むのが最善の道。
○わたしが生まれて育ったのは、市場経済が高度の発達した国であり、それを支える法律、制度、慣習などははるか以前に確立し、成熟していた。ロシアで見聞きすることになる動きは、欧米各国ではわたしが生まれるはるか以前に起こっていたのである。旧ソ連で作られたせいどがすべて崩壊した後にロシアが苦闘する様子をみて、わたしは脳の一部が損なわれた患者を観察する脳神経科医になったようだと感じた。財産権を保護する仕組みがなく、信頼関係の伝統もないまま、市場が機能仕様とするのを見守ったのは、まったく新しい学習の経験であった。
○中央計画経済には創造的破壊がなく、改良していこうとする動機がない。
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上巻は自身の半生を語っている。
911の時欧州から帰還する際にF16の護衛がついたというかっこいいエピソードから
音楽少年、ビックバンドジャズとの出会い、数学と経済学に傾倒しながらケインズと距離を置いた学生時代、
アイン・ランドとの出会い、コンサルタントとしての仕事や政界とのかかわりの始まりなどが書かれている。
ホワイトハウスでの長期にわたる執務の記述では各大統領の
ソ連を訪問したときにゴスプランの人に全産業の生産計画表のようなものがあると聞かされたときの
困惑はいかばかりか。
そして氏のもっとも有名な業績であるブラックマンデーの収拾が語られる。
共和党員でありながらクリントン氏、ゴア氏を高く評価しているが時代の性もあるだろう。
ITにより業務が効率化し景気が拡大しながら賃金が上昇しないという現象がこれまでにないものだったらしい。
また国家財政が黒字化し、オペレーションに使う国債がなくなりそうになるという自体はうらやましい。
一方でストックオプションが消費を拡大させている事実はかなりの間わからなかったらしい。
それ以前の時代(日本の失われた10年以前)ではインフレがドラゴン並みの強敵とみなされていた
事実は知っておくべきだった。
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上巻は筆者の半生について語っている。
単なる自慢話ではなく、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、9.11テロ
など数々の危機に瀕したときに彼がどのように考えて行動したのか
が率直に語れていて面白い。
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さてさて、FRBの元議長のアラン・グリーンスパンの本の
紹介です。
知らない人のためにいくつか解説を入れます。
FRB=アメリカの中央銀行です。英語ではFEDっていう事が多いような印象です。
グリーンスパン=マエストロ(名指揮者、巨匠)と呼ばれ、その一言一言が
経済を動かすと言われていた方です。
そんなグリーンスパンさんが議長を退いてから
経済やその他の事に関して振り返っています。
英語の本の訳って適当な事が多くてあまり好きでは
ないことが多いのですが、この本は訳がまずよかったですね。
それと、大統領と議会の関係、大統領の気質、その他
政治的なものの経済に与える影響から
その他もろもろのところまで非常に詳しく説明が
あって良かったと思っています。
金融に興味がある人、金融業界に進む人一回読んでみると
良いと思います。重いけどw
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世界経済の司令塔として活躍したグリーンスパン前FRB議長が、その半生とFRBについて語る。歴代政権で果たした役割や、そのとき、何を見つめ、何を考えていたかを明かす。(TRC MARCより)
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彼は学生時代に投資銀行で統計などの数値加工を行っていた。
コンファレンスボードで勤務をしていたときには、資料室の書棚にある知識を全て吸収しようと
何時間も読んでいた。
自分も就職してから今以上に勉強頑張らなきゃ!!
ブッシュ政権は選挙公約を守ることだけを目標としていて、状況の変化に対応した政策の協議すらしない。
歴代の大統領は選挙公約に固執せず、状況に応じた政策を考えるものらしい。
もう一度読もうとは思わないがモチベーションは高まった気がする。
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おすすめ度:90点
世界経済の司令塔として活躍したグリーンスパン前FRB議長の初の著作。
上巻では、生い立ちから始まり、FRB議長として金融政策および政治にかかわった18年間の出来事が綴られている。
ジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ、クリントン、そして息子のブッシュと、共和党政権だけでなく、民主党政権であろうともFRB議長を任命され続けてきた。
特に興味深かったのは「第6章 壁の崩壊」「第8章 根拠なき熱狂」。
「第6章 壁の崩壊」では、崩壊前の中央計画経済の大いなる矛盾が語られている。
崩壊後の当時のロシア当局の改革派たちの、市場主義経済への移行への非常に強い意志、意欲があり、そのすばやい動きには魅了された。
グリーンスパン氏は「中央計画経済が崩壊したとき、資本主義が自然に確立するわけではない」とし、「自由市場には、文化や制度の面で膨大な基礎があり、それが長い年月をかけて発展してきている」とする。
法制度の整備が必須であり、財産権が担保されなければならない。
信頼や信用が成立してはじめて、市場主義経済が機能することが、ソ連崩壊後の実例に学ぶことができた。
「第8章 根拠なき熱狂」では、1995年8月9日ネットスケープ株の新規公開に始まるインターネットのゴールドラッシュについて、グリーンスパン氏が、従来の指標では通用しなくなった世界をいち早く見通している。
グリーンスパン氏の仮説はこうである。
「情報技術が吸収され、その活用方法が学ばれていったことから、インフレ率が低く、金利が低く、生産性が上昇し、完全雇用が実現する状態が長期にわたって続く可能性がある。」
今もってすればまったく正しく当然である。
それを当時に見破ったグリーンスパン氏はさすがである。
グリーンスパン氏は、「1940年代後半から景気サイクルをみてきたが、今回のようなことは1度もなかった。」
「50年か100年に1度のもののように思える」と発言している。
FOMCは利上げをしなかった。成功であった。
金融政策の決定にあたって、経済モデルだけに頼るわけにはいかないことを示した。
「シュンペーターならおそらく、こう主張したはずだ。経済モデルも創造的破壊の対象になるのだと。」
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前FRB議長(09年6月)「堕ちたマエストロ」アラン・グリーンスパンの自伝。
ここまでバブルを増幅された理由がつらつらと書かれている。
一人の人間の自伝であるので読んでいて面白いが、バブルの増幅がいかに起きたかを当事者の視点で覗くことができる。
良書。
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単純に能力のある人はいるのだなぁと感じながら読んだ。今に至ってグリーンスパンの行なったことに対し様々な批判が起きているが、それでも私はこの人の能力はすごいなと思う。
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FRB議長のような大きな経済をコントロールする責任を持つものは、頑固さと柔軟さを兼ね備えていなければならない。
何度もあった危機との対面の仕方、各大統領の性格に合わせ且つ最適に経済をコントロールしてきた経緯、本当に勉強になる。
アメリカの経済史も一緒に学ぶことが出来る。
個人的にはグリーンスパンのポリシーを語った下巻より、その歴史が記された上巻の方が面白かった。
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翻訳なのに、すごく読みやすい。
この人の半生を綴った話。
この本を読んでいると、アルフレットスローンJrを思い出す。
スローンと同じようなことを言っていたから。
この本で感じたこと。
・事実を事実として認識することが大事であること
・的確な情報をより早く入手して、その情報の元判断すること
人間は、自分の信じたいことを信じる傾向にあるけれど、
やはり経営者として成功するために重要な要素のひとつとして、
事実をありのまま受け入れることは必須であると思った。
自分も判断をするときには、自分に問いかける。
「自分のよい方向に考えていないか?事実に目を瞑ってないか?」
ただ、疑いすぎれば逆に事実が良い方向を示しているのに、
良い方向の結論を疑うこともあるから、それも要注意。
簡単に言えば、マイナス思考に陥る可能性があるってこと。
まあ、事実を認識してれば、プラス思考もマイナス思考も無いのだけれど。
クリントンが議会で苦戦した理由が、
『人間、この信じやすきもの』と違った部分の記述が興味深い。
この『波乱の時代』では、
クリントンの政策が議員にとってメリットのないものだから、
と書いてあるが、『人間、この信じやすきもの』では、
クリントンが、他の議員に「貸し」が無い人物だったからと書いてある。
どちらか一方が間違っていて、どちらか一方が正しいとは思わない。
波乱の時代の意見のほうが真実性は高そうに思えるけれど、
『人間…』で書いてあることもひとつの要因であった可能性も高い。
ふむ。面白い。いまさらながら経済学が面白いと思った。
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著者のグリーンスパンは広瀬隆の『資本主義崩壊の首謀者たち』でバーナンキ、ガイトナーと共に金融恐慌を引き起こした悪人として批判されていた。しかし本書を読んでいて文面から伝わってくる印象は物静かで大人しい、人当りの良さそうな紳士といったもの。経済の専門家でいながら音楽好きで元プロの演奏家という意外な一面もあり、幼い頃から音楽に触れて育ってきた環境も彼の人格に大きな影響を与えた事は間違いないだろう。
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ゴードン・ブラウン「需要を増やすこと、雇用を創造すること。それには経済に柔軟性を取り入れる。弱者に配慮したグローバル化とは、安定性と自由貿易、開放的な市場、柔軟性といった点を、主に教育を通じて国民が将来の職への備えができるようにする投資と組み合わせることだ。イギリスは、保護主義ではなく、自由貿易を標榜し、世界一開放的な競争政策を取り、市場を柔軟にするとともに、教育関連の施策によって人材への投資を大幅に高めることによって、安定性をもたらす政策を強化し、グローバル経済の課題に対する備えが出来たと思っている。」