紙の本
久々に虫を食べたくなった
2008/02/10 18:09
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲベリン - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供の頃イナゴの佃煮と蜂の子の煮転がしを食べたことがある。正直なところそれほどおいしいとは感じなかった。(まあ佃煮にしろ煮転がしにしろ、味付けが濃いと素材の味がほとんど分からなくなってしまうものだが…)そのときはなぜわざわざ虫を食べるのかが分からなかった。せいぜいその昔食料が足りなかった頃の食習慣が残っているのだろう位にしか考えられなかった。
昆虫は栄養価が高いがゆえに、他の栄養源が手に入らない場合の代用食だと一般的には考えられている。そのため食糧事情がいい国々の人々は昆虫食をする必要がなく、いまだに昆虫を食べているのは発展途上国の貧しい人々だけだと思われている。事実アフリカや東南アジア諸国では昆虫食が盛んである。
ところがそういう「代用食」としての考え方は事実とは違うと著者は言う。昆虫を食べる人たちはおいしいから昆虫を食べているのだと言う。その証拠に、彼らはおいしいと考える昆虫だけをおいしいと考える時期に食べる。産地にもこだわる。天然物を高く評価し、養殖物は「何を食べさせられてきたか分からない」と敬遠しさえする。極めつきは、市場では同じ重量の肉よりも高価な昆虫さえもあるという。
我々からすると「ゲテモノ食い」に見えるが、強烈なアンモニア臭のする魚や、豆の糸を引いたのとかをおいしいおいしいと食べている我々も、彼らから見れば「ゲテモノ食い」に見えるだろう。まさに目くそ鼻くそを笑う。いや、違う。まさに食文化の奥深さ。
この本を読んでいると実際に虫を食べたくなる。芋虫は内臓を丁寧に除いて火であぶるとほくほくとしておいしいというし、薄塩でゆでて乾燥した虫は保存が利く上、噛めば噛むほど味が出るともいう。ほうら、あなたもよだれが出てきていませんか?
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タイトルから想像される通り、虫を食べる文化の話です。
しかし、気持ち悪がって紹介するような内容のものではなく、地域の文化と人々に焦点をあてた興味深い内容です。
私も出身が岐阜なのでハチの子を好んで食べます。
よく貴重なタンパク源だから食べているとか言われますが、現在でも食べられているのはおいしいからに尽きると思います。
そんな自分でも、これを読むまでは諸外国の文化を差別的に見ている面が多いと実感しました。
世界の見方が少し変わる(かもしれない)オススメの本です。
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昆虫食について、日本はもとよりアジア、アフリカまで出向いて研究考察してある内容である。2009年正月巷に話題になってる「ぼくは猟師になった」と比肩しうる良書である。昆虫食をただの奇異行為と見るのではなく日常の生活の一部としてみる視点が楽しいし、何より著者が昆虫食大好きで大好きでしょうがないっていう感じが著作からにじみ出てるのが嬉しい。このように「今チョットブームだから」とか「コレが当たりそう」っト言うやまっけタップリな企画本より「おれはこういうのが好きでやってるんだ」って言う本が世の中にガンガン出てくれればと思います。
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昆虫食研究の旅でのエピソードをまとめた本書は正に目からウロコ。
ラオスではフンチュウ(フンころがし)の幼虫を食べ頃になるまで大事に育てる。食べ頃にシチューにすると絶品だそうだ。南アフリカではモパニムシ(イモムシ)の干物が人気の品だ。仲買人までいて評判によって値段が変わってきて、良くも悪くもしっかり競争社会が形成されている。カメムシは大人の嗜好品として東南アジア・アフリカ社会に普通に浸透している。あの強烈な匂いを試行錯誤して消してまで食する人もいれば、稲にとまっているのを直接口にしてしまう人もいてその許容範囲は広いが好みは相当分かれるところ。なんとも深いではないか。日本に帰って取り上げられるのはスズメバチの幼虫(ハチノコ)捕獲作戦。”ハチ追い”と呼ばれるスズメバチの巣を探索する方法が面白い。
ここまで面白いのに食べたいと思えないのはつまらぬ潜在意識のせい。
その壁を壊せば私の世界は大きく広がるような気がするが・・
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昆虫食にまつわるあれこれ。とりわけ、大学の授業での話が大変興味深い。手がだせない学生のその理由が、自分がどうしても気持ちが悪い、というのではなく、食べた場合の周囲の目を気にしてというのがある、というのがなんとも考えさせられた。
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大学生になったら”カメムシ食”実践予定です。
食べ物が無いから”仕方なく”虫を食べてるのではなく、
”おいしい”から虫を食べるのだ
こういう昆虫食の捉え方に感心です。
バッタって葉っぱしか食べないのに何mも飛べますよね。
同じ草食動物としてウシと比べてみるのはズルいかもしれませんが、バッタのほうがよっぽど効率のよいたんぱく源になると思います。
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虫食から文化を考える。虫の生態についても触れてあるアカデミックな一冊です。
「子どもの頃は虫取りをして遊んだけれど、最近は触れなくなった」「そもそも虫は大嫌い」という方、多いと思います。
折しも近年の人口増加で、昆虫食が見直されているとのこと、
この機会に身近な虫のこと、考え直してみませんか。
これを読んでおけば無人島でも食べ物に困らない・・・かも?
福岡教育大学スタッフ
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[ 内容 ]
東南アジアの田んぼで、アフリカのブッシュで、岐阜の森で、世界中の人たちが、顔をほころばせて昆虫を味わっている。
虫を採り、食すことで、生命と環境に五感で触れているのだ。
バッタを狙い、カメムシを買い求め、ヘボを愛する中で、カラハリ砂漠の子どもは狩猟民として生きていく術を学び、ラオスの人は都市化で消えゆく「野生」を取り戻す。
つまり昆虫食とは、自然と対話して恵みを得る智恵なのだ。
日本中、世界中の昆虫食を追って旅してきた著者が描く、昆虫と人間が相互に深く交わる、豊かで美味しい営みの姿。
[ 目次 ]
序章 虫と営みを重ねて
第1章 営みが虫をはぐくむ―虫とともに生きる人々
第2章 大地という食卓―地球のグルメ、イモムシ
第3章 野生を取り込む智恵―カメムシの「臭さ」を生かす
第4章 虫に恋して―スズメバチのロマン
第5章 虫に向かって開く―昆虫食的認識へ
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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虫を食べる話を、ゲテモノ食いとか、文化論とかではなく、フィールドワークに基づいた生体論として説く。
ラオスと南アフリカの事例が多く取り上げられており、そこは人間と自然がちょうどまじりあう「野良」として定義されている。
虫を食べるのは、貧しいからでも、貴重なカロリー摂取源だからでもなく、おいしいからである。
しかもこの「おいしい」というのは、文化的な価値も含んだ複雑なものである。
これは当たり前の話だ。日本人が魚を好きなのを、「宗教上の禁忌から肉が食べられないので魚を食べている」「肉の食べられない日本人にとって魚は貴重なカロリー源である」とか言う西欧人がいたら、「何言ってんだこの外人、アホか」と思うであろう。
文化相対主義的立場に立ったうえで、観察に基づく生態学的な解釈をするあたりは、非常に好ましい。「一面の黄金色」ではないラオスの農村とか、南アフリカのモパニムシの流通とか、目からうろこという感じである。
また、カメムシの匂いに関する、日本・南アフリカ、ラオスの比較は、素晴らしいと思う。
今までカメムシ=臭いとしか思っていなかったし、また奇食談の類では、「臭い」という感覚の主観的なゆらぎが追及できなかった。
しかし、この作者の虫食愛は、なんともほほえましい。
自分の好きなことを、一生懸命研究しているという感じがする。
こういうの、いいなあ、と思う。
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昆虫食を通して、世界の多様な食文化が垣間見られる本です。
著者の探究心と、自然と共に生きる多文化への敬意が伝わってきます。
説明も写真入りで丁寧で読みやすいです。
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正直のところ、タイトルだけを見た印象で「あんな虫や、こんな虫、奇想天外な虫を食べる文化圏が有る」ようなグロ的な期待感を持っていたのだが、良い意味で全く違った。
「食物の選択肢に乏しいから」、「味に対するこだわりが少ないから」、「それ以外は、ただのもの好き」とか、勝手なイメージを持っていたが、逆だった。
我ながら、根拠の無い見下しイメージで自分を縛っていたことに反省。
「嗜好品」であったり「ソウルフード」であったり、「狩りを行う動物としての本能」のようなものや原風景であったり。
認識を改めさせられました。
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怖いもの見たさで手にしたら、…あれ?ちょっと食べてみたいかもという自分が。(カメムシやイモムシはハードル高いけど、ハチノコなら…)。貧しくてこれしか食べるものがないから食べる訳でなく、楽しみ、嗜好品として口にし、自然を享受している事実。それが自然のサイクルとマッチして、環境にも一番いいと思…えるのですが、実際この生活は、無理だなぁ。ただスズメバチはミツバチの敵として、ジビエ感覚で食べてみたいかも。
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食料が乏しい地域の貴重な蛋白源・・・というのが昆虫食のイメージ。だがこの本には食べたいから食べる“嗜好品”としての世界各地の昆虫食が述べられている。ハチのほかカメムシにイモムシ、タガメにアリ。昆虫食の見方がかわるかも。