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商品説明
かつてなくリアルに描かれる捜査の実態と癒着、横領、隠蔽、暴力、…日本警察の真実のなかにあぶりだされる男たちの強烈な光と闇。【「BOOK」データベースの商品解説】
大阪今里署のマル暴担当刑事・堀内は淇道会が賭場を開いているという情報をつかみ、金曜日深夜、賭場に突入し28名を現行犯逮捕する。堀内は、賭場に参加していた学校経営者をゆすり始め…。警察ハードボイルド。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
黒川 博行
- 略歴
- 〈黒川博行〉1949年愛媛県生まれ。京都市立芸術大学卒業。「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞を受賞。ほかの著書に「疫病神」など。
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紙の本
マジでどす黒いノワール物、そして、これは傑作です。
2009/06/12 00:59
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書ですが、凄い、凄いって聞いていましたが、
(本の雑誌でも警察小説として西の横綱だと紹介されておりました)
本当にマジで凄かった、、。
ノワール系の警察小説のひとつの到達点だと思います。
大阪府警のB級署の今里署(因みに架空の署です、たぶん)
のマル暴担当刑事の堀内は、ネタ元から、賭博開帳の情報を仕入れます。
現行犯逮捕に執念を見せるのですが、、、。
所謂、悪徳警察官ものです。
この堀内という刑事。とにかく悪い。
しかも、設定が本当によく出来ていて
ヤクザから金をもらっていて犯罪を目をつぶっているとか、情報を流しているとか、そんな単純なものではありません。
きちっとやるべき"マル暴"の仕事はやっています、が、その捜査情報、費用の入手方法として闇金や裏金に犯歴データを横流しし仕入れます。
本来使われるべき捜査費用はそのまま上司への餞別になるからです。
で、メイン設定の堀内がシノギと称する、副業ですがこれもめちゃめちよく出来ているというかリアル(リアルかどうか知りませんが)。
やみ賭博に客として参加している"堅気"に恐喝(ゆすり)を持ちかけます。
これも単純にこの客をゆするのでなく、業界紙のライター間に挟みます。
このライターが堅気の客のプライベイトマネーをゆすり取るのではあまりにも身に詰まされ警察に駆け込まれる可能性があるので、この業界紙に会社のお金で広告をだしてくれと持ちかけるわけです。
自分のお金ならしぶったりし、何をするかわからない堅気も客も、
会社の金となるとびっくりするぐらいぽんぽん出すといった具合です。
そのせしめた金の何%かを堀内が得ます。
堅気の客も会社に金を出させて、そのお金は、価格なんかで
会社のコストとして社会で圧縮されるわけで堅気の客も悪い。
本書、前半は、上記したプロットの賭博場への踏み込みの模様をスリリングに
そして、後半は、この堀内のシノギがとあるフィクサーの教育業界への乗っ取りに関わることにより危機に瀕します。果たして、、、。
悪徳警察ものってあんまり読んだことがないんですが、
ここまで赤裸々かつりアルに書ききったものは、珍しいというか、ないでしょう。
ストーリテリングも充分でスリリングなのですが、
なによりこの悪徳ぶりが得もいわれぬ迫力となって読者に迫ってきます。
しかも、ラストも凄い、、。
こういったノワール系には、一つの終わり方があります
(天網恢恢疎にして漏らさずです)
が、それを仄めかすかのようなこの終わり方、、。
ラストまで、読者になにかをつきつけている様で圧倒されます。
紙の本
マル暴担当刑事の日常
2007/11/11 18:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
大阪今里署のマル暴担当刑事である堀内と相棒の伊達の日常が超リアルに描かれている。と言っても、マル暴担当刑事の日常なんて知らないから本当にリアルかどうかは知りようがないんだけど、描写が真に迫っているのは間違いない。
前半の山場は賭場のガサ入れだが、このガサ入れの段取りが微に入り細を穿って書かれていて臨場感たっぷりだ。小説というのは非日常を味わえる最も手軽な娯楽だ。小説の中でなら、空飛ぶヒーローになることもできるし、悲恋のヒロインになることもできる。それがこの本の場合はマル暴担当刑事になってヤクザと渡り合うことができるのだ。実生活ではマル暴担当刑事ともヤクザとも関わり合いを持ちたくないが、小説の中でマル暴担当刑事になってみるのは意外と悪くない。「ガタガタ抜かしてると、いわすぞこら」とか言ったりしてね。
中背中肉の堀内に対して、柔道をやっている伊達はガタイが良くて二分刈りなので、刑事よりもむしろヤクザに近い。この二人の掛け合いも本書の魅力の一つだ。仕事の上ではお互いに助け合うが、相手がどんなシノギをして副収入を得ているかには立ち入らない。この辺の距離感もリアルだ。
後半は謎解きの要素も強くなり、さすがにサントリーミステリー大賞出身と思わせてくれる。黒川博行は久し振りに読んだけど、やっぱり大阪弁の会話が素晴らしいね。
k@tu hatena blog
紙の本
前回の直木賞選考で二つの「本格警察小説」がノミネートされた。この作品と佐々木譲『警官の血』だったが受賞できなかった。両作品とも警察組織の暗部を鋭く突いたものだけに受賞して話題性がでれば、苦々しく思う向きもあったのだろう
2008/05/02 12:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
全国の都道府県警は組織ぐるみで何十年間にもわたって裏金を作ってきた。この警察の腐敗体質が発覚して何年になるだろうか。今でもときどきマスコミ沙汰になっている。事実として裏金は捜査費、捜査報償費(捜査協力者や情報提供者に対するお礼)の架空領収書、「カラ出張」、警備員の水増しなどで作られている。
それがなにに使われているか。この『悪果』によれば、「幹部のヤミ給与、彼等の異動の際の餞別」「署長経費は月百万と噂され、飲み代からゴルフ代、官舎の家具、電気製品、カーテンから味噌、醤油にいたる」のだそうだが、市民としては腹立たしい限りだ。
上が上なら下は下である。サラ金、ヤミ金に個人情報を流す。税務署、ヤクザ対策の口利き役を風俗営業者などから引き受ける。マンションころがしにつきものの居座りヤクザを追い払う。飲食業、風俗業に対する許認可権、取締権をバックにした過剰供応。などなどこれらをヤクザ並みにシノギというらしいが、腹立たしいというより、むしろ恐ろしい。この作品は警察の腐敗体質を暴く一種の告発小説である。
ただし単なる暴露小説ではない。
大阪今里署、暴力団犯罪係の刑事・堀内、38歳、妻帯。ブランドもののスーツと靴で南のクラブ通い、女もいる。帰りはいつもタクシー。持ち家あり、車はBMW。相棒の伊達、37歳、家族持ち。ものいい、服装、目つき、体形、歩き方、すべてが極道以上に極道らしい。マル暴担は情報源と付き合うために金が要る。しかし正規の捜査手当は裏金として上層部に吸い上げられてしまう。だから堀内のような働きのある刑事ほど自由になる金が必要になり、ひいてはぬかるみにはまって必要以上に贅沢がしたくなる。堀内の場合、得意のシノギは金のありそうな奴の弱みにつけこむ、やくざ顔負けの強請りである。警察組織に残る闇の末端に居直った男たちのこの暗い欲望とふてぶてしさを強烈なタッチで描き出している。そしてこんな悪徳刑事が本当にいるのだろうかと思わせつつ、優秀な警察官として情報をつかみ内偵し証拠を固め検挙する。実に丹念な捜査活動で犯罪を追う。よくあるご都合主義のアクション捜査ではない。手順を踏んだ、まさに地に足のついた捜査のリアルな描写は読み応えがある。地道な捜査活動と期待を裏切らないバイオレンスシーンとが絶妙に調和しているあたり、この作品のユニークな魅力があると言えよう。
なかなかサスペンスフルで、読者はいつこのシノギがばれるのかとハラハラしながら読み続けることになる。
堀内が得た賭博開帳の情報から、二人は丹念な内偵の末、組員や参加者を一網打尽にする。だが堀内の目的は別にあった。客の中には賭博をしていたことを隠しておきたい身分のものがいる。この機密をいつものようにブラックジャーナリストの坂部に流し、坂部が強請りにかけるその分け前にありつく寸法だ。ところが坂辺がひき逃げされて死亡するあたりから事件に奥行きが加わる。巧妙な地上げ、脱税、マネーロンダリング、不正経理、内部告発、殺人と暴力団。この種の企業犯罪は昔からあって特に目新しい手口ではないが、構想がしっかりしているから劇的に、そして現実性ある全貌が浮かび上がってくるところ、経済事件小説としても完成度は高い。