紙の本
贅沢な時間に酔いしれる。
2007/08/23 01:40
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大好きなヘミングウェイの、あの『武器よさらば』を、金原瑞人さんが訳す!
光文社古典新訳文庫のラインナップにこの作品が挙がった時、私は密かに喝采を叫んだ。大久保康雄訳が手元にあるとはいえ、ヘミングウェイを好きだと公言している訳者の手による新訳には、期待が高まる。去年新潮文庫から高見浩訳が出た時は、熟慮の末見送ったが、今回は迷わず購入。
早く読んではもったいないと思いつつも、ぐいぐい物語に引き込まれていき、時は瞬く間に過ぎてしまった。今、なんともいえない脱力感の中、この書評を書いている。新訳に触れるのは、ひとえにヘミングウェイの魅力を再確認する作業だったように思う。何度読んでも、否、読めば読むほど、物語の奥深さに魅了される。
そっけないほど簡潔な文体なのに、どうしてこんなにも心揺さぶられてしまうのだろう。ヘミングウェイの作品は、心の深いところまで届いてくる。
物語は、第一次世界大戦のイタリア戦線を横糸に、アメリカから志願兵としてやってきた青年と看護婦の恋愛を縦糸にして紡ぎ出されていく。
冒頭の一章は、主人公のフレデリックが負傷兵運搬の任務に就いている土地の情景を描いている。この場面が、私はとりわけ好きだ。
川には澄んだ水が流れ、平野には作物が豊かに実っている。その中を、土埃をあげて武装した兵士やトラックが次々と通り過ぎ、ここで今戦闘が行われていることを如実に物語る。美しい田園風景と、殺伐とした戦場のギャップが、皮肉で悲しい。
本書には、この種の違和感が終始つきまとう。
戯れに始まったフレデリックとキャサリンの恋は、戦況が悪化するにつれて激しく燃え上がる。そして戦地では多くの兵士が死んでいく一方で、キャサリンのお腹には新たな命が宿る。だが、二人の幸福は長く続かない。悲劇的なラストを迎えて始めて、相反するように見えた事象が、最初から逃れられない宿命の元にあったことに気づくのだ。
この作品の根底には、戦争批判が脈打っているのは言うまでもない。ただ私はここには戦争だけでなく、人の身に降りかかるあらゆる暴力や理不尽な現実に対する「怒り」があるのだと思う。
冷たく突き放したラストは、孤独や空しさと共に、やり場のない主人公の怒りが滲み出ている。大久保訳に比べて一文を短くした金原訳が、ラストシーンで生きてくる。この短い場面に込められた意味に思いをはせると、ただため息がもれるばかりである。
雨の降る日には、ホテルに向かって歩くフレデリックの姿が思い浮かんでしまうことだろう。
紙の本
戦争の中でいきるということ
2019/03/03 17:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆきき - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品を読めば、作品の中からたしかに戦場の風が、戦場の中にいきる人間臭さが、人間らしさがはっきりとにじみ出てくる。
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非常に軽いタッチで翻訳されていて、文学作品を読んでいる感覚がなかった。ヘミングイエイ!って言いたくなるくらい軽い。やたらと印象に残るのは、戦争中なのにグラッパ(酒)を飲んでいること、イタリア人は戦争中でもイタリア人、この民族とは手を組んで戦争したくないな。ドイツ兵の様子が描かれていましたが、さすがは統率が取れてます。
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今まで読んだ中で一番オススメ!!
大学の宿題で読まされました。
正直、おもしろいかといわれればおもしろくはないがとっても為になる本だとおもいます。先生いわく、本とは「読んだ後でその後の人生に影響を与えるものでなければ、価値はない」らしい、、、、
読んだ後、何度も主人公の境遇やもし自分にも同じことが起きたらと考えさせられもう一度読んでしまいました。
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一番大好きな本。ヘミングウェイ文学はかっこよすぎ! 男性的なロマンチック・ラブストーリーです。翻訳が上手くて、しっくりきます。
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古典文庫に分類されていますが、現代小説と変わらない読みやすさで、古典文庫初心者にはぜひお勧めしたい作品です。
第一次大戦のイタリアが作品の舞台。今の日本人にとっては遠い過去の異国の地であり、なかなか実感しにくい話ですが、いつの間にか作品に吸い込まれるようにして読んでいました。
極端にシンプルな文体がよかったです。そのおかげで、登場人物の会話がすらすら進んでいき、読んでいて気持ちがいいです。
それから、様々な登場人物がたまに冴えたことを言うので、色々と考えさせられるところなんかも面白かったです。
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「うざったい」なんていう訳が出てくる新訳版。文学史に残るような作品であってもきわめて読みやすい。
読みやすさは原文によるのか、新訳によるのかは解らないが、さすがに「うざったい」は要らなかったんじゃないか。
そこだけ妙に浮き上がって見えた。
主人公がミラノのサン・シーロに競馬を観にいくところがある。今もここに競馬場があるどうか知らないが、サン・シーロといったらセリエAの聖地。
知ってる場所が時を越えて出てくるとなんだか嬉しくなる。
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ヘミングウェイの作品て文書がサッパリしてて読んでて感情が乗ってこない。翻訳がいけないわけでもないだろうけど。
やっぱ原文で読むかな
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戦争中、前線で出会った看護婦の女性と恋に落ちる。
戦争のばかばかしさを語るシーンはなかなか考えさせられる。そして、若い二人の恋は可愛らしくてなんとも微笑ましい。女の子が語る二人の関係がとってもロマンチックでときめきます。
負傷した主人公が治療し、前線に復帰するところで上巻は終わってます。下巻の展開がとても気になる。
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スペイン内戦に参加していたヘミングウェイの過去を知らなければ、少し淡白な話に感じたのかもしれない。知らなければいけないの 彼がこの小説に込めた戦争に対するアンチテーゼとしての愛。
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凄まじい戦争の最中、兵士と看護婦が出会い、負傷者をケアする医療重視者という関係を超え、お互いに惹かれあい、愛し合っていく。先の見えない戦争の中、兵士と看護婦との距離がだんだん縮まっていく関係は映画を見ているかのようである。二人の関係はどうなるのか戦争が終わったら、そこで関係は切れてしまうのではないか、一時的な関係で終わり、寂しさを感じるだろう。戦争以前の日常に戻り、別々の道で仕事等をするだろう。戦争の描写と恋愛関係に発展するとは思わなかった関係が火がつき、どこまで行くのか気になる。下巻へ。
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戦火の下で生きる若者たちの日常は
やはり戦況により破壊的に変化していく。
一方で人と人との営み、心の動きは不変のようであり
やはり不可避的に戦争の影を感じさせるー。
豊かな筆致で描かれる情景が鮮明であり
それだけに様々な感慨が去来する。
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上巻のため起承転承のような物語構成であまり面白みは感じられなかった。しかし近代の文章でありながら心情描写(はあまりなかったけど)や場面が容易に想像出来て今まで読んできた近代文学の中で比較的読みやすい部類に入ると思う。ここまでくると下巻も読まないといけなくなるよね。ただ、それでもあまりおもろしろくないような予感がするけど...
戦争のことを揶揄する主人公らの会話には心を打たれた。
キャサリンとの恋模様はある意味「のろけ?」とは感じたけれどロマンがあってすてきだな、よくこんな語彙力高めな文章がかけるだこと...原作者も翻訳者もすごい
ただ場面場面がよわいきもする。意外性が足りないな、そりゃ戦場いく場面なら誰かが死んだり自分も怪我したりはある程度予測がつく。恋人といい関係になったなら妊娠も考えられる。ある意味ありきたりな展開。(まあ現代小説がそれを汎用してるだけなんだろうけど)
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(Mixiより, 2010年)
上巻のみ読み終わった所です。読んでいるだけで戦地に行けるこの感覚、すごく良いです。兵士達は戦地で、度数の高いお酒を割らずにグイグイやってる。これはなかなか新鮮な描写でした。朝目覚めた時のさわやかな気持ちだったり、一方救急車で死人の血が滴り落ちてくるシーンだったり、一つ一つが生々しく、また戦争というものを「悲劇の幻想」に留まらせない効果を持っています。だんだんと恋人にひかれていく過程は、描写が少ない中でも割とわかりやすいのですが、それでも早く戦地に向かいたいという感情は、すごい。僕らの理解を一線越えた心情があります。主人公の恋人、バークリの台詞の中から印象に残ったものを引用。「あなたと引き離されるのだけが心配。あなたがわたしの宗教なの。」「人生なんてなんとかなるものよ。失うものがなにもないときにはね。」
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「君は僕のいい子だ」「あたしはほんとにあなたの子」男性からみた女性の理想像を描写した純愛小説。一方、男主人公が被弾し戦線離脱した時代背景としてもちろん戦時下の小説である。この純愛と戦争の相矛盾するこの作品の独創性や新規性に興味がある。私は内容を知らないので子どもを身ごもった男女主人公の行く末が気になるところ。ノーベル賞作家であるヘミングウェイの鋭角な文章描写が女主人公のキャサリンの柔らかいパーソナリティを際立たせていると感じる。学生時代にキャサリンと出会ったらメロメロになる確率100%です。