「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ—。二転三転する真相、リフレインし重きを増す主題、押し寄せる感動!自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。【「BOOK」データベースの商品解説】
【大薮春彦賞(第10回)】競技中に起きた悲劇は、単なる事故のはずだった−。二転三転する「真相」と共に駆け抜ける物語の結末とは。自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
近藤 史恵
- 略歴
- 〈近藤史恵〉1969年大阪生まれ。大阪芸術大学文学部文芸学科卒。「凍える島」で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。著書に「ねむりねずみ」「モップの魔女は呪文を知ってる」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
犠牲となってだれかをなにかのために支える。
2010/06/05 16:45
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
サクリファイス 近藤史恵 新潮社
読み終えて背筋に電流が流れるような感動がありました。サクリファイスというのは英語で「生贄(いけにえ)」とか、「(だれかのために)犠牲になる」という意味だった。
素材は自転車のグループによる競技です。日本ではなじみが薄いので、ルールを知りませんでした。前半部分で、その精神が語られて納得します。チームのエースを勝たせるために犠牲になるアシスト役の選手が必要なのです。エースは石尾豪さん33歳です。アシスト役が白石誓(ちかと読むのかちかしなのかわかりませんが、ふられた彼女初野香乃さんにはチカと呼ばれています。)23歳です。チームの名称はなんとかオッジとかそういう名称でした。ほかに赤城さん36歳、エース候補の伊庭君23歳(いばくんで読み方はいいでしょう。)斎木監督に篠崎さんという選手もいました。
主人公がしゃべるときに「ぼくは」という単語は入れないほうがいい。幼くなります。それから語尾が弱いと感じました。
ドキュメンタリーのようです。レースシーンには血が湧き踊ります。覚醒効果があります。アシストの白石君は自分の高い実力を知らない。読んでいる最中は、自転車のサドルにまたがっている気分でした。スピード感あり。最高です。
過去に石尾さんの生贄(いけにえ)となったらしき袴田(はかまだ)一平さんはなにかをたくらんでいる。正直言って、最後のほうの種明かしはめんどくさい。こんがらがりすぎです。されど心に残ったいい作品でした。
紙の本
ノリにのった小説の醍醐味
2008/12/19 13:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
白石誓(ちかう)はチーム・オッジに所属する
プロのロードレーサー。レースではアシスト。
オッジにはエースの石尾がおり、
それを白石と同期の伊庭が脅かしています。
日本ではマイナーなロードレースの世界や
自転車競技のおもしろさ、深さを描きながら
3年前、石尾によってクラッシュされた選手が
半身不随になった事件の真相を追います。
無口なエース石尾に、忠告と称して、
石尾の怖さを吹き込んでくる先輩、
その半身不随になった、現在はウィルチェアラグビー
(障碍者による車椅子ラグビー)選手の袴田。
この登場人物たちの言動が絶妙なアップテンポを醸し出します。
スペインのプロチームが日本人アシストを探していたり
初恋の恋人・香乃の存在といった、
白石の心を揺さぶる出来事もいい。
改行を多く取り入れて、ロードレースの伸びやかさ表現。
二転三転する真相にハラハラさせられます。
近藤史恵のノリに乗った小説。
紙の本
三浦しをん『風が強く吹いている』や森絵都の『ダイブ!!』には及ばないんですが、ミステリ作家のスポコンものとしてはトップレベルでしょ。ま、女はつまらないですが・・・
2007/12/03 20:30
11人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
娘たちの反応ですが、「これってスポ根?」でした。ただし、またかよ、っていうネガティヴなものではありません。三浦しをん『風が吹いている』を思い出して、胸をときめかせる、そういうリアクションです。無論、それには私の「絶対に面白いから」という一言が利いているのは間違いありません。
そして読後、長女と話をしました。開口一番言ったのが、「あのおんな、だめじゃん。簡単に男変えるし」です。彼女がいうのは初野香乃です。幼なじみである主人公をあっさりフッタとおもったら、今度はあっさりと取材をした相手とくっつく。しかもその相手というのが実にいやな男で・・・。
ワカル、ワカル、だってこいつらくっつける必然性、少しもないもの。ま、そういう意味では三浦しをん『風が強く吹いている』の感動はないわけです。ミステリの限界というか。ま、このミステリ、っていうのもなんだか唐突ではあるんですね。だって、そういう様相を呈し始めるのが全十章(終章を除く)の第八章なわけですよ。このままスポ根で走っても良かったんじゃないか、なんて思ったりして。
でも、面白い。何より、近藤史恵が書く、っていうのが面白い。タイプじゃないですよ。だから、私にとって最大のミステリは、「なぜ近藤は自転車ロードレースの世界を取り上げたんだろう」っていうことです。案外単純なことかもしれません。でも、スポーツ好きの印象が全くない彼女が、突然レースを描く、っていうのがね、謎なんです。雫井脩介なら分るんですが・・・
とりあえず出版社のwebの言葉を見てみましょう。
ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。
勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。
だそうです。繰り返しますが、「押し寄せる感動」はありません。でも、ハラハラドキドキはあります。ただし、と但し書きばかりになりますが、胸ときめかせるのはレースの部分にであって、事件や謎解きのところではありません。私がこのお話をミステリではなくスポ根ものと捉えている所以はこんなところにあります。
後先になりますが登場人物について触れましょう。
主人公はチカ、こと白石誓、23歳の独身男性です。170CM、60キロと日本人の平均よりは若干小柄。高校までは陸上の選手として活躍し、インターハイで一位になったこともあるスポーツマンです。ただ、高校三年のとき、好きだった女性・香乃が他の男に心を移したことをきっかけに陸上の世界から離れます。
そんなチカがあらたに興味を抱いたのが自転車の世界です。現在の彼は、ロードレースのプロとなりチーム・オッジに所属。山で実力を発揮するクライマーでも、平坦のゴールスプリントで力を出すスプリンターでもなく、どちらもそつなくこなすオールラウンダーを目指しています。自分が勝つことよりもアシストでいることが好き、というのは生まれつきなのか、失恋の痛手ゆえかはわかりません。
チカが所属するチーム・オッジのエースといわれるのが33歳になる石尾豪、162CM、52キロとチカより一回り小柄です。峠を得意とするクライマーで、自分以外のエースを認めないと噂され、彼によって潰された有望選手も多いといわれています。石尾の実力を認め、7年にわたって彼をエースにすることを自分の喜びとしてきたのがムードメーカーの赤城、チーム最年長の36歳です。
チカと一緒にチームに入った新人で、23歳ながら実力では石尾の次の位置にいるというのが伊庭和実です。平坦での瞬発力では石尾以上と言われるスプリンターですが、なにせ山に弱い。チカはそんな彼を気づかいますが、伊庭にとってのライバルは同期のチカではなくて、あくまで石尾です。
そんなチームを率いるのが今年、オッジの監督に就任したばかりで、チームに君臨する石尾と必ずしもうまくいっていない30代半ばの監督斎木です。それからレースに参加している外国人で、チカとよく話し合うのがスペインのサントス・カンタンというチームの選手でスプリンターのマルケス・イグナシオです。
最後に、我が家で総スカンを食らった尻軽女ですが、名前を初野香乃といいます。年齢は主人公と同じ23歳。チカとは幼なじみで、小学生の時からの知り合いでした。美人でつねに学校の人気者でしたが、高校までは自他ともに認めるチカの恋人でした。その後、チカと会うことはありませんでした。現在、大手新聞社の週刊誌の記者です。
もとチーム・オッジの選手で、3年前、23歳の頃、事故で選手をやめたのが、袴田一平です。現在はウィルチェアラグビーの選手となっています。ちなみに、仕事は何をしているのかは不明。チカのことなど全く忘れて男の間を渡り歩いていた彼女に、有望なロードレース選手がいるとチカのことを思い出させた男でもあります。
ちなみに、私のお気に入りの選手はマルケス・イグナシオ。なかなかいい奴であります。どんなところがいいかは作品で確認してみてください。ちなみに、この小説は書き下し。なんだか、ディック・フランシスの本を思わせるカバー写真はPanoramic Images/Getty Images、装幀は新潮社装幀室。最後に目次ですが
第一章 チーム・オッジ
第二章 ツール・ド・ジャポン
第三章 南信州
第四章 富士山
第五章 伊豆
インターバル
第六章 リエージュ
第七章 リエージュ・ルクセンブルグ
第八章 惨劇
第九章 喪失
第十章 サクリファイス
終章
となっています。
紙の本
自転車ロードレースとミステリの味わいを同時に
2008/08/30 13:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰の手になる作品なのかを気にとめずに読み始めた。自転車ロードレースの内幕が実に詳細に描かれている。よほど自転車競技の世界で活躍した経験のある人が、その思いを本にまとめておきたくて書いたのだろうと受け止めてしまった。
そのくらい、自転車ロードレースの世界に精通した書きぶりになっている。私自身は自転車競技の経験はないが、ツール・ド・フランスなどの世界的に有名なレースの報道くらいは見ていたので、興味深く読み進めた。
チームスポーツとして、絶対的な存在のエースと、それを助けるアシストに冷徹に役割分担がなされている競技であることも初めて知った。アシストが先行して風避けになり、後方にいるエースの体力温存を図る。ゴール前で、力を残したエースが一気に飛び出て、他のチームのエースとデッドヒートを繰り広げる。
例えば。エースのタイヤがパンクすれば、アシストはホイールを差し出さなくてはならない。アシストはいわば捨て駒である。自分を喜んで犠牲にできる精神の持ち主(サクリファイス)でなければ務まらない。
主人公は、アシスト役の選手である。この視点が面白い。寡黙で、勝利のためならなんでもやりかねない不気味さをもったエースの内面は直接的には描かれない。しかし、周囲の評価によって、人となりが浮き上がってくる。
自転車競技はやらないが、スポーツが至上の楽しみでもある私には、とても面白かった。一気に通読してカタルシスを覚えたほどだ。自分も自転車にまたがって、山岳レースやスプリントレースに参加してみたくなった。
そのくらい自転車競技の醍醐味を教えてもらうことができた。しかし、最後にきて、著者が近藤史恵というミステリなどを中心に書いている作家だと分かり、驚いた。たしかに、小さな伏線が謎となり、最後はミステリーっぽくなる。
力のある作家ともなると、こうしてあらゆる題材を作品にまで昇華してしまえるのかとあらためて感じ入ってしまった。この作家のほかの作品もぜひ手にとってみたい。
紙の本
自転車のおもしろさと小説のおもしろさを絡めた作品
2008/10/04 15:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いけちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自転車ロードレースというあまり知られていない世界の話と、その中で行われる人間模様を劇的に描いた小説。自転車のスピード感と話の進みづあいがすごく感じがいい。私はツール・ド・フランスがすきでよく見ていたので、事前に知識があったので、よりこの小説の世界に入り込めた。