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商品説明
大物の沈底魚が、日本に潜っている。亡命中国外交官による衝撃情報。流出した国家機密。「眠れるスパイ」は実在するのか。公安刑事たちの極秘捜査が始まった!乱歩賞史上、もっともスリリングな公安ミステリー、堂々登場!第53回江戸川乱歩賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【江戸川乱歩賞(第53回)】眠れるスパイ「沈底魚」が動き出した。正体は大物政治家か、それとも中国の偽装工作か…。真相究明に暗闘する公安刑事たちの姿をリアルに描いた、本格公安ミステリー!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
曽根 圭介
- 略歴
- 〈曽根圭介〉1967年静岡県生まれ。早稲田大学商学部中退。サウナ従業員、漫画喫茶店長を経て、その後無職に。「鼻」で第14回日本ホラー小説大賞短編賞、「沈底魚」で第53回江戸川乱歩賞を受賞。
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紙の本
小説「沈底魚」-中国長期潜伏スパイ
2007/08/20 11:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
沈底魚とは、敵国あるいは対象国のエリートを取り込んで長期間は何もさせずに出世させ、時が来たら国を裏切らせる長期潜伏スパイのことである。
尚、沈底魚はもともと中国語である。「ちんていぎょ」は日本語読みであって、中国語的に読むなら「チェンティユィ」とでも表現しようか。
つまり、中国得意のスパイ工作と言えるだろう。
かつての国共内戦でも、国民党内に潜伏させた共産スパイを活用し共産党を勝利に導いた様子がユン・チアン著「マオ」に描かれている。また、日中戦争を誘導したのは張治中という沈底魚だったともしている。
さて、物語は、ある有力国会議員が中国の沈底魚だという情報がもたらされることに始まる。情報の真偽は?ガセネタか?亡命は偽装なのか?
敵側にいる協力者の存在。消された女秘書。捜査チームの内紛。二重スパイ。・・・
ストーリーは二転三転・・・いや、四転五転六転か。
何が真実なのか、頭の中が混乱してくるほどだ。最後まで読者を飽きさせない。
これは小説だが、現実にもこうしたことがあるのでは、と感じさせるインテリジェンス小説である。
ところで、本書で工作員の接触場所として都内の中華レストランが登場する。実際、日本国内の中華レストランでも中国当局の息のかかった店が少なくないと聞く。そうした店を政治家や政府高官が安易に利用することについて疑問を呈する声も少なくない。本書を読みながら、そんなことも考えた。
紙の本
ここ2、3年の江戸川乱歩賞のなかではいちばん
2007/09/01 16:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
第53回(2007年)江戸川乱歩賞受賞作。
アメリカに亡命した中国の外交官がその手土産として、
大物の沈底魚が日本におり
中国国家公安局に情報を流している、という情報をもたらします。
その沈底魚は若手の国会議員で閣僚経験もあるという。
しかも全国紙の一面にスッパ抜かれます。
アメリカと日本は当初、中国の偽装工作と判断しましたが
外務省からの情報で確かに北京に情報をもたらしている
コードネーム「ホトトギス」という人物がいるという。
警視庁公安部外事二課の不破刑事はこの捜査に加わります。
捜査名は沈底魚のコードネームを取って「マクベス」。
登場人物が多様でまずおもしろい。
不破と同じく、マクベス捜査に加わった外事二課の五味は
徒党を組みたがり、自分の思い通りにすべてを指揮したがります。
マクベスの理事官、ガタイのいい女性・凸井(とつい)は
官僚としてマクベスがつかまってほしくない。
不破の相棒で暗い顔つきの小柄な男・若林は
人とのコミュニケーションが苦手ながら
S(捜査の協力者、スパイ)を獲得しようとしています。
捜査は常に人物や出来事や情報が偽装工作か、
本物かを見極めながら進み、それに伴って物語が二転三転します。
息をつかせないスピード感で駆け抜け、
人の表と裏、組織の表と裏、国家の表と裏を
浮かび上がらせます。
江戸川乱歩賞受賞作ではここ2、3年でいちばん。
紙の本
今年度の江戸川乱歩賞受賞作。このところ連続して読ませる作品を決定してきたが………。
2007/11/06 12:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカに亡命した中国外交官の証言によれば、日本の現職国会議員が機密情報を中国に漏洩している。この新聞報道で中国と朝鮮の事案を担当する警視庁公安部外事第二課は騒然とする………とスタートは快調ある。
「沈底魚=スリーパー。潜伏期間二十年余り。素知らぬ顔で暮し、覚醒の時を待っているーーー。」
スパイ自身が派手な立ち回りを演ずる冒険小説ではない。ガセネタかも知れない沈底魚をあぶりだそうとする公安部現場の捜査官たちの苦闘の物語である。
親分子分関係が現場に残る古参の集団。空威張りの中間管理職。対立する警察庁と警視庁。警察の横暴に圧力をかけようとする永田町。ただしこういう構図には新鮮さがない。登場する人物、主人公も含めて類型的だった。
私はこの作品を読む前にある人の講演を聞いた。なかなか面白かった。彼は中国の脅威によって今世紀には世界戦争が起こるという。その際、日本が生き残るには圧倒的に力のある国についていくことだ。つまりアメリカとの同盟関係の一層の強化。彼は当時の安倍内閣のスタッフとして集団自衛権の確立を実現すべく、有識者会議の組織化に尽力していた。ところが今一歩のところで安倍政権が瓦解してしまったことを切歯扼腕していた。かなりのお歳の方でまた何年後かには機会をとらえ、再チャレンジする執念を壇上で見せていたが本当にくやしそうであった。私はそんなことにならずに良かったとするほうだから、「俺が国家戦略を動かしているのだ」との驕りをなんとなく滑稽に見ていたのだが、一方でそういう人物の存在は異様に思えた。
スパイ、逆スパイ、二重スパイ、そして内部の裏切り者。それらを暴き出すゲーム的ドタバタにとどまった底の浅い作品だった。殺人が起こるような国家機密ってなんだったんだろう。講演会を聴いた直後だったせいもあるだろうが、背景にあるはずの現実の外交戦略にもう少し肉薄すれば深みが出たであろうと思われた。