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商品説明
1988年夏、札幌。伝説的な奇術師・吝一郎の復帰公演が事件の発端だった。次々と連続する、華美で妖艶な不可能犯罪!吝家を覆う殺意の霧は、濃くなるばかり。心臓に持病を抱える、若き推理の天才・南美希風が、悪意に満ちた魔術師の殺人計画に挑む。【「BOOK」データベースの商品解説】
次々と連続する、華美で妖艶な不可能犯罪! 殺意の霧は濃くなるばかり…。心臓に持病を抱える、若き推理の天才・南美希風が、悪意に満ちた魔術師の殺人計画に挑む。不可能犯罪の第一人者が放つ史上最強の連続密室ミステリ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
柄刀 一
- 略歴
- 〈柄刀一〉1959年北海道生まれ。98年「3000年の密室」でデビュー。作家。著書に「シクラメンと、見えない密室」「マスグレイヴ館の島」など。
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紙の本
密室を愛するファンにも密室に飽きたマニアにも贈りたい
2007/09/06 00:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けい - この投稿者のレビュー一覧を見る
待つ、ということもいい、と思いませんか。
柄刀一先生のデビューまでの道のりは長いです。定職に就かず、今でいうフリーターのような形でアルバイトを続けながら作品を書き続け、投稿生活を続けたそうです。二十年も。『3000年の密室』(原書房)で98年にようやくデビューした著者はその後、『アリア系銀河鉄道 三月宇佐見のお茶の会』などの遊び心と実験精神に満ちた宇佐見護博士シリーズや、『連殺魔方陣』などの天才龍之介シリーズなど、スケールの大きさとやさしいまなざしと、そして、なにより、本格ミステリへのこだわりある作品を発表し続けてきました。読みきれないほど新刊ミステリが出される今の日本において、本格ミステリ作家クラブの年鑑アンソロジーに常連のように選ばれるクオリティの高さとバラエティの豊富さは驚くべきものです。
この『密室キングダム』は、実は柄刀先生が生まれて初めて書き上げた長編小説だといいます。当時でさえ七百枚あったという原稿は多すぎて、受け付けてくれる新人賞がないという状況。それでも熱おさえられなかった著者は日本推理小説界の巨匠、高木彬光先生に原稿を送ります。このあたりの話は雑誌「ミステリーズ! 2007年4月号」の「私がデビューしたころ」というエッセイに書かれていますので、興味のある方は読んでみてください。
『密室キングダム』は渾身の大長編として、著者のファンだけでなく、多くの本格ミステリファンに刊行が待たれていた作品。私も発売を心待ちにし、少しでも早く読みたいとの想いで時間の許す限り、書店を駆け回りました。
ずしっとくる重さに厚さはまるで辞書のよう。電車で読むには向いていないですが、片時も離さず、読み続けました。そうまでして先を読みたいと思わせる魅力ある一冊。そうまでしても読み終えるまで一週間、久々にどっぷりミステリにつかった幸せな時間でした。
“壇上のメフィスト”と呼ばれる天才マジシャン吝一郎の復活ステージ。そこで起こった三重密室殺人を皮切りに、密室の連打、これでもかというほどのトリックのオンパレード。「トリックをポケットに入れて持ち歩いている」と評されるほどの犯罪の魔術師に挑むのは心臓に病を抱える青年、南美希風。
これだけのボリュームにもかかわらず、密室、謎、トリック、推理、とミステリの魅力がてんこ盛りの濃い作品。次々と繰り出される密室と謎に推理、続きが気になって仕方がないだれないミステリです。いくつかトリックを思いついたから、玉石混交で盛り合わせてみましたというレベルでは決してありません。一つ一つの密室、派手で華麗で挑発的な密室が創り出され、生み出され、演出され続けること、密室の魔術師を気取る犯人、とあらゆることに意味と企みのあるかつてない密室ミステリ。大長編であることにすら、必然性を感じます。分厚いミステリを読み終えた後に少し無駄をした気分になるときもたまにありますが、この物語にはこの量が必要だった、と思います。
そして、もう一つ、この物語には長い時間も必要だったのだと感じました。デビューまでの二十年、デビューしてからの約十年。もしこの『密室キングダム』で柄刀一という作家がすんなりとデビューしていたら、どうだったでしょうか。すごい作品・作家だと評判になったでしょうが、『密室キングダム』はここまでのものになっていたでしょうか。数々の名作は生まれたでしょうか。
長い冬に耐えた後だからこその春の輝き。そんなものを感じます。
待つこと、といえば、たくさんの人がこの作品の刊行を、柄刀一渾身の仕事を心待ちにしていました。その仕事に対して、時間とお金を対価として支払いました。ハードカバー2940円は一冊の本としては高いほうです。買うのを躊躇った、躊躇っている人も多いでしょう。でも、できるなら、一流の仕事に対してはお金を払ってほしいと思います。
今、私がしている仕事は多くの人に心待ちにはされていないでしょう。たぶん、世の中の仕事の大半は心待ちにはされない仕事です。作家のような仕事は少ない、一握りからこぼれ落ちたちょっとくらいなものです。でも、自分の仕事も必要なんだ、と思ってがんばって稼ごうという気持ちになりました。
紙の本
正直いって厭きます。話が長くなる必然性が物語から生まれるのではなくて、作者の都合でなっちゃった感じ。だから折角のトリックが死んでしまう。無駄な長さです
2007/12/18 19:43
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ええ、光文社のハードカバーっていうのは、どうもデザインがパッとしないんですが、今回の本はいいです。なんだか、講談社本みたいな印象で、遠目には横尾忠則風、っていうか。でも、装幀は坂野公一( welle design )です、はい。
造本もしっかりしていて、本文の紙厚が薄いのでしょうか、900頁を越えている印象はありません。私はてっきり600頁本だと思って読み始めたので、田舎の道じゃありませんけど、いつまでたっても先が見えてこないのには、正直疲れました。原稿用紙1770枚ですから、乱歩賞本四冊分のボリュームです。
さてさて、大変長いお話ですが、密室が五つ出てきますから、一つの密室につき原稿350枚と考えると、チープな本格ミステリなら単行本5冊、普通のミステリなら2冊分です。続けて読まされたら、傑作だって飽きるでしょう。しかも、叙述の大半が密室が如何に構成されたかの解説だったとしたら・・・
その機械的トリックの謎解きのボリュームが大きくなるわけが分らないではありません。なぜかといえば、一つの事件の密室というのが必ず入れ子細工になっていて、複数の密室から成り立っているからです。そういう意味で数えなおせば、この一冊には十を越える密室があるのです。山また山、田舎の道ではなくて山道ですから、なおさら目的地が遠くなり、疲れが倍増します。
本来であれば、歩きながら景色を楽しむ、ということになるはずですが、この小説、人物描写がプア。感情移入できるようには描かれていません。印象としては機械的密室集成。これが実に勿体無い。本当の仕掛けは別にあって、それは極めてモダンなものです。都筑道夫説くところの「犯人が警察に仕掛けたトリック、ではなくて作者が読者に仕掛けた」大技があるんです。でも、それまでに飽きちゃう。
何ていうのか、前菜類がこってりしすぎて、折角のメインディッシュが出てきたときには、もういいから、っていいたくなることあるでしょ。人をもてなすのが下手な奥さんとか、サービスを量だと勘違いしているお店とか。まさにあれなんです。折角の努力が空回り。体育界系のコンパじゃないんだから・・・
でも、こういうのが好きな人が多いのがミステリマニア。だから年末のベストミステリなんかでは上位に食い込んできます。でも、私にいわせれば桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』『青年のための読書クラブ』の足許にも及ばない。え、桜庭の作品はミステリじゃない?そろそろ本格という、それだけで価値をもっていそうな名称をやめるべきでしょう。その点で、このミスの採点には納得です。
一応、各章のタイトルを書いておきます。
白のプロローグ
第 1 章 棺に入る生者
第 2 章 三重密室への扉
第 3 章 ガラスなき部屋の謎
第 4 章 大いなる進展
第 5 章 キヌという老婆
第 6 章 迷宮脱出の地図
第 7 章 優しい密室
第 8 章 密室第三弾
第 9 章 鏡の多すぎる部屋
第 10 章 迷宮突入
第 11 章 ついに第四の密室
第 12 章 Xを含む方程式
幕間 南美希風のいない三日間
第 13 章 解明の表扉
第 14 章 第五の、そして最後の密室
最 終 章 密室の果て……
白のエピローグ