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商品説明
時代によって、時に親しまれ、時に蔑まれてきた「妖怪」。言葉や図像から変遷の歴史を辿り、不確実なこの存在について考える。徹底的に妖怪と向き合ってきた著者がものす、画期的な妖怪解体新書!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
京極 夏彦
- 略歴
- 〈京極夏彦〉1963年北海道生まれ。小説家・意匠家。「姑獲鳥の夏」で小説家デビュー。「魍魎の匣」で日本推理作家協会賞、「覘き小平次」で山本周五郎賞、「後巷説百物語」で直木賞を受賞。
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紙の本
ただただ緩慢に、巷にあふれる妖怪たちを感じたい
2010/06/09 17:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつも思うのだが、京極氏は生きた妖怪を観察し共に戯れる作家だ。
京極氏は作家であって学者ではない、だから好きなように思うところを豊かに著せる。「学者」ではこうはいくまい。学者はその対象を調査しデータを統計するために、研究対象の「動かぬ死体」を解剖するのが不可欠だ。学問は動かぬ証拠を寄せ集め、動かぬ結論・解答を求め続けるモノだからである。
しかし物書きはどうか。彼らの書き著す対象はいつでも「今、生きているもの」である。今日の我々の生活・視点・感情・環境がある、その上で描かれるのだから 今を「生きているモノ」が対称になるのは当然のことであろう。だから京極氏の書く妖怪は今を生きているのである。
妖怪という言葉、妖怪の成り立ち、歴史、近代における姿、怪獣やホラーとの違い・・・本書には妖怪たちの発生や認識、その現象を一つ一つを丁寧に紹介されている。と、これは「妖怪の作り方」ではないかと思ったりする。
今現在、妖怪を作るにはどうしたらいいのか?何が必要なのか? なんて。
どうして妖怪は妖怪なのか? なぜ発生したのか?
はたしてそれは「居る」のか?いないのか?
いやいや、答えなど出ずともいいではないか。
私達は学者でもなく研究者でもない。ごくふつうの人なのだ。巷説百物語をしていればよい。巷に溢れる妖怪を、温かく抱いていればいいのだ。それがいつしか郷愁をさそう妖怪となるのかもしれない。
紙の本
水木しげるの凄さが伝わってきます。いや、偉さというべきか。彼なくして妖怪は語れない、そういったことが様々な論考から浮かび上がってきます。さすが京極が敬愛するセンセー
2008/01/22 19:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルだけ見ると小説のようですが、妖怪についての極めて真面目な論考です。真面目であっても読みやすい、それが学者のつまらん文章と、作家のそれが大きく違うところ。ま、「妖怪」テーマに小難しくモノゴトを考えよう、なんてぇ発想自体あまりないかもしれません。とりあえず帯の文句は
本当は
みんな
知っている。
“妖怪”とは
何なのか。
誰もが知っているけれど
誰も語れなかった
不思議のすべて。
です。装画は、加藤円正(風眠庵)、装丁は片岡忠彦。ついでにデータに走れば「怪」vol.0011 vol.0023に連載されたものを再構成、加筆したものに、「大阪大谷国文」(平成19年3月刊)に掲載された「講演録 通俗的妖怪と近代的怪異」を合わせています。読みやすい内容なのは、学問として妖怪を捉えていないからです。
私などは、妖怪は学問になるんじゃないか、という単純な発想をしていたし、そう思う大学生も多いようですが、京極はそれを否定します。理由は、「妖怪」の定義が、現在なされていない。人によって様々な見方があって、まとまっていない。定義がされていないものは研究できないし、学問にならないからだそうです。
正直、本当にそうかいな、そこまで堅く考えるから学問の世界が面白くなくなるし、実際の大学にはもっとろくでもない学問があるじゃないか、なんて思いもします。人々が思っている様々な妖怪、それを通じて妖怪を定義していくような研究の存在は、京極も認めていますし、自らその研究に参画してはいる。でも、これは始ったばかりなんだそうです。そこだけは???です。
そういう意味で首を傾げるところはありますが、鳥山石燕、井上円了、柳田國男、水木しげる、江馬務、大伴昌司といった馴染み深い名前がたくさん出てきますし、藤澤衛彦、佐藤有文など初めて知る人たちについても、いやでも興味が湧くような文章で、ともかくこれを読んでおけば現在日本の妖怪ブームの流れは楽しく理解できます。
「妖怪」を語るときに使われるモノとコト、近代と以前、妖怪と幽霊、妖怪と怪獣の違いもよくわかります。でも、この本を読んでつくづく思うのは、現在の妖怪ブームにおける水木しげるの存在の大きさです。水木しげるなくして妖怪を語ることができない、とまで言っていい。彼の絵が出版界に流布し、それが一つの事実となってさらに広まっていく、その流れがよく分ります。
水木しげるの天才は、ヌリカベ、油すまし、見上げ入道、ぬらりひょん、あしまがり、に姿を与え、それを見た人が、殆どそのままの形で他のメディアに流す、伝説の誕生を見ているようなものです。梅原猛や松本清張、司馬遼太郎の発見が誰のものとも記名されずに使われていくの似ていますが、水木には京極などの強い味方がいて、彼の事跡をきちんと評価してくれる、まさに人格がものを言っています。
目次
・妖怪のことを考える前に
妖怪ブームはあったのか/妖怪的なモノゴトとは何か
・妖怪という言葉について
鳥山石燕と様々な百鬼夜行を巡って/井上円了の妖怪学を巡って/江馬務の妖怪変化史を巡って/藤澤衛彦の風俗研究を巡って/柳田國男の妖怪談義を巡って など
・妖怪のなりたちについて
水木しげるの登場/通俗的妖怪の完成/通俗的妖怪の戦略/通俗的妖怪と怪獣 など
・妖怪の形について
受け継がれるスタイル/キャラという仕掛け/怪しくて、懐かしいカタチ など
・講演録 通俗的妖怪と近代的怪異
ヌリカベを例にして――民俗学的妖怪/モノとコト/妖怪学から怪異学へ など
・妖怪のことを考えているうちに
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