紙の本
やっぱり横暴というより暴行・セクハラ教師っていうのはいつの世にもいて、それを庇うのが教育界ていうのも変わらない構図。そろそろ問題教師の名前は公開されるべきでは
2007/10/15 18:13
10人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
西澤保彦の本にしては珍しいかな、って思います。まず、カバーですが装幀の鈴木成一デザイン室はともかく、装画がジュゼッペ・アルチンボルト「夏 1563年」Bridgeman/PPS というのがらしくないです。ま、収穫祭というタイトルをグロテスクな内容と考えて採用したようですが、かなり珍しい。悪くはないですが美術書風といった印象は否めません。
それから内容ですが、どちらかというとエロ、ナンセンスはありましたが、スプラッターや残虐ものは少なかったと思います。それが横暴な教師と、彼の暴力に翻弄される中学生、そして性の奴隷となる女生徒というまさに現代の教育界を揺るがすリアルな問題がテーマになっています。
ま、実際には現代の教育界はこれほどの大波がやってきても少しも揺るがない、なにせ実際にあったことは「なかったこと」にすることで問題そのものを消滅させるという、明治維新以来日本の官僚がおこなってきた離れ技(普通でいえば反則・禁じ手なんですが、東大出身の頭のいい人たちは徒党を組んだ合法化が上手)で身を守る。
この本に出てくる川嶋から私は今度の教科書検定で第二次大戦の沖縄の集団自決に軍が関与したという事実を、なかったことにしようとした文部科学省のことを連想するんです。歴史を書き換え、あの皇軍の自国民に刃を向けたことを抹消する。己の卑劣を、殺人行為を他人のせいにし、口封じをする。
それを正そうとする行為は、政治的で、事実を捻じ曲げることは政治的ではないと大臣はおっしゃる。こういう愚かな行為、発言が若者から希望を失わせていることに気付かない愚かさ、鉄面皮。出版社が自主的に直して再検定を受けることは構わないとは、噴飯を通り越して体が寒くなってきます。
この物語は、現在の検定制度、或は教育界同様に私を苛立たせ、絶望させます。まず1982年の大量殺人事件があります。暴風雨の首尾木村北西区では当時、南白亀中学校首尾木分校三年生だったブキこと伊吹省路、マユちゃんこと小久保繭子、カンチこと空知貫太と分校の社会科教諭だった川嶋浩一郎の四人だけが生残りました。そして犯人は南白亀町の英会話教室講師だったマイケル・ウッドワーズ。
その9年後、東京在住のフリーライター涌井融が事件の再調査に乗り出し、再び悪夢が再来します。
読んでいて胃が痛くなるのは、大量殺人という一点さえ除けば、この話は今、身の回りで起きても少しもおかしくない点にあります。監禁やストーカー行為はごく日常的な事件となり、本来は子供たちの防波堤となるべき教師は率先してイジメに荷担し、女生徒に悪戯をしても、教師というだけで名前も公表されずに密に異動し、再び他校で同じことを繰り返す。
校長も教員仲間も教育委員も、口を噤めば事件はなかったことになる、と沈黙を守り、むしろ生徒に緘口令をしく。子供たちは過去の記憶を自分のなかで消し去り、真実は決して明かされることはなく、マスコミは扇情的で表面的な取材だけをして、無責任な映像と記事を垂れ流し、事件を風化させ、同様な事件が別の誰かによって繰り返されていく。
いやはや、西澤にしてはやけにマジなお話でした。娘たちには読ませたくないですね、夢も希望もないもの・・・
以下は本をお借りしてデータ篇。まずは主な登場人物。
首尾木村北西区の住人
伊吹省路(ブキ)南白亀中学校首尾木分校三年生
小久保繭子(マユちゃん)省路の同級生
空知貫太(カンチ)省路の同級生
北西区外の人々
元木雅文(ゲンキ)省路の同級生
鷲尾嘉孝 南白亀中学校卒業生・省路の二学年先輩
花房朱美 南白亀中学校首尾木分校英語科教諭
川嶋浩一郎 南白亀中学校首尾木分校社会科教諭
涌井融 東京在住のフリーライター
マイケル・ウッドワーズ
で、部構成ですが
第一部 一九八二年八月十七日
第二部 一九九一年十月
第三部 一九九五年八月~十月
第四部 二〇〇七年八月十七日
第五部 一九七六年五月
となってます。
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1982年、首尾木村で大量殺人が発生。生き延びたのは中学3年の少年少女
3人と分校の教諭ひとり。犯人は逃走後、事故死した。そして9年後、ひとり
のライターが生き残った者達への取材を開始するや、再び殺人事件が起きる。
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1982年小さな村で14人が殺される大量猟奇殺人が発生。生き残ったのは三人の学生と一人の先生。犯人は外国人で殺人を犯した後に死亡。しかしその数年後同じ手口での連続殺人が始まり…。600P近くあって分厚かった〜。でも面白くてノンストップで読んでしまいました。ラストでこのタイトルの意味がわかります。おっそろしい。しかし性描写多いな…
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レビューでやたら「性描写」が多いと書かれていたが、そんなことないだろというのが正直なところ(確かに必然性はあまり感じなかったけど)。中学の頃に読んでた菊地秀行の方が数倍エロかった気がします。それはともかく、素直におもしろかったです。2段組600ページを一気に読みきりました。
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二段組でヘビーな割には短時間で読めてしまう。村民虐殺事件が陰惨だったのに対し、九年後の事件は荒唐無稽で実に馬鹿馬鹿しい。逆に、そのスットコドッコイな展開がなかったら、読了するのにもっと時間がかかっただろうと思う。第一部の終わり方がすごくよかった分、もっと無難なアプローチの方法があるだろうとは思ったが、それでも読者の想像を超えた大風呂敷の拡げ方には素直に感心した。
伏線の張り方は目立ってはいるが実に巧妙。同じようなシチュに読者は好奇心をそそられるだろうが、それを繋ぐ糸が全く見えないため、大いなる謎として後半まで持ち越すことになる。うまく収束できてはいるが、真犯人、動機等、インパクトが弱いので、なんとも矛盾したいやーな気持ちになった。一番よかったのはタイトル。ここ数年でも、これだけ大きい意味を持つミステリタイトルは珍しい。いろんな意味で、いじわるな作家だと思った。
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地方で起きる猟奇的な連続殺人事件。時を超えて繰り返し起こる事件。その真相は。かなりの力作ではあるが。
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小野不由美の「死鬼」からホラー要素を抜いて、代わりにミステリ要素と性的倒錯をぶち込んで、満遍なくシャッフルしたような話だなーと思いました。
こういうの嫌いじゃないです。
ていうか面白かったです。西澤さんらしくて。
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最近の西澤さんの作品にしては、比較的「まとも」な部類なんじゃなかろうか?っていうか、いつも「まとも」じゃないか・・。性描写が無駄に多くて不愉快だ!っていう話をよく聞くけれど、そんなん最近の他の西澤作品に比べたら・・まだまだ少ないほう!内容は、閉鎖的な小さな村で起こった連続大量猟奇殺人。どんどん村民が殺されていくところは本当に背筋が寒くなりました。それに加えて西澤お得意の性描写が絡んでくるから、余計ジメジメした雰囲気になっている。雨も降ってるし、血の臭いまで感じるし。第一部がかなり面白かっただけに、中盤からラストにかけてがあまりにも馬鹿馬鹿しいんで、本当にもったいないなーと感じました。
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1部の迫力凄かった
2部以降…
気になってゴリゴリ読んでいったものの疲れました
特異な性的描写が多くてね…
そういうところを見せることで異常な殺人を犯すのも
当然みたいな雰囲気にもっていってるような感じを
うけてしまいました
それもまた本能の部分だから行動原理にはなるのかな?
とは言いつつ展開が気になりゴリゴリ読まされてしまったのは事実なんでその筆力に星1つプラスです
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★あらすじ
1982年8月。四国(多分)の過疎の村のそのまた過疎地域、首尾木村北西区では、区の住民と関係者14人が惨殺されるという、前代未聞の連続殺人事件が起きた。
その事件で生き残った3人の中学生と、たまたま北西区を訪れていた村の中学の教師は、川に流された外国人が犯人であると証言し、事件は被疑者死亡で一応の解決を見る。
しかし、その供述や、状況証拠には矛盾点が多く残された。
10年ほど経ち、大人になった生き残りの中学生たちは、それぞれのきっかけから、事件の記憶のあいまいさに悩まされるようになる。
しんどい思いをしながら記憶をたぐるうちに、あいまいさの理由、そして事件の真相が見えてきて……
★感想
すごい〜〜〜〜
なにがすごいって、伏線の張り巡らし方と、収束の勢いがすごい!!
うわ、そこでソレが関係してくんのか、うわーうわー!! みたいな箇所が山ほどありました。
伏線マニアとしては(;´Д`)'`ァ'`ァ な作品でございました。
犯人や(元)中学生たちの心の変遷に多少強引さを感じるところもありますが、さすが西澤さん、設定の鬼! 独特の黒い世界観にひっぱられてどんどん読んじゃいました(600p超を2日で読みました^^;)
いいのよ、少々強引だって! だってそういう世界なんだもんっ。それにこんなに面白いんだしっ。って感じ?
テーマは、
1)記憶の改ざん
2)エロス
3)青春
4)クローズドサークル(嵐の孤島とか雪の山小屋とかに代表される、閉鎖状況)
5)暴力と復讐心の連鎖
あたりかなと思います。
エロスはかなーり生々しくて、いささかアブノーマルなので(必要エロだと、どりは思いますが)苦手な方は心構えをしてからお読み下さい。
そして最後に判明する「収穫祭」の意味がっ……怖いよ怖いよ・゚・(ノД`;)・゚
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台風が来る日、出かけて帰ってきた村は
死体だらけになっていた…。
台風、という非日常から更なる日常へ。
むしろ犯人誰ですか? という状態です。
最後を見て、あぁ…と思いましたが
まさかここまで長いとは!!
謎が終わったと思ったら、また別の謎。
事件が終わったと思ったら、思い出される謎。
女ってすごい…としか表現がないです。
題名は、最後まで読み進めれば分かります。
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よくぞこんだけ殺しました(笑)。しかしこれ、犯人当てようと思って読むのはちと難しいかも。なんせ……ねぇ?(まあこれはネタバレなので言えません)
論理的に考えて分かるところも多少はあるけれど、ほとんどの部分でメインになっているのは、論理よりもむしろ狂気の動機ではないかと。どの動機も、インパクトあるんだよなあ。その動機の奥に根付いた心理だとかトラウマだとか、これが妙に怖い怖い。特にとある人物の復讐法と来たら! 恨みは分かるけどさあ、よくぞそこまで……。
しかし一番怖かったのは。ラストですね。そこで明かされるこのタイトルの意味ときたら!!! うわー、もしかしてこの人がすべての元凶だと言えなくもない?
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1982年、8月17日、夜。暴風雨の首尾木村北西区で、ほとんどの村民が虐殺される大量殺人の発生が警察に伝えられる。しかし悪天候と現場に通じる2脚の橋が流れたため地区は孤立、警察の到着は翌日になってからだった。かろうじて生き延びたのは中学3年の少年少女3人と彼らが通う分校の教諭ひとり。被害者は、3人の家族ら14名で、そのうち11人が鎌で喉を掻き切られていた。不明な点もあったが、犯人は、事件当日、逃走後に事故死した英会話教室の外国人講師と断定された―。そして9年後、ひとりのフリーライターが生き残った者たちへの取材を開始するや、ふたたび猟奇的な殺人事件が起こる。凶器はまたもや鎌だった…。著者渾身の1944枚、傑作『依存』を超えた書き下ろし長篇ミステリ。
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「ひぐらしのなく頃に」や「屍鬼」を思い出した。雰囲気がそんな感じ。過疎化した村、嵐の中で起こる連続殺人事件。
分厚いけど、つっかえることなく読める。面白かった。
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大作である。その量になかなか読むのに骨が折れるかと思ったが、面白さに一気に読みきってしまった。閉鎖された山村で起こる大量殺人。いかにも本格推理と思いきや、エロと血の匂いが作品内に横溢する。もちろんフェアな犯人当ても楽しめるが、その長さゆえに最後の方で犯人を指名した理由を聞かされても、最初の細かい描写を思い出すのは難しい。そこが難点。一昔前に流行したサイコサスペンスが焼きなおされて面白くなったといえばいいだろうか。変ミスなどと言われる一連の作品群とは違うテイストながら、底辺に流れるものは、ロジカルな犯人当てという意味で同じかもしれない。