紙の本
世の中を動かしているもの
2009/03/10 22:49
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
《この世は、「○○主義」「○○イズム」で動いている。》
まことにごもっともです。著者は、人間の考えはすべてそれで分類できるのだとまでおっしゃいます。思想信条だけでなく、性的趣味、美意識、宗教心などの人間の考え方・感じ方・行動のパターンを包括的に示せるのが「○○主義」「○○イズム」なのだそうです。
本書の眼目は、さまざまな「○○主義」「○○イズム」をカタログ総覧的に並べて、その基礎知識を伝授してくれることです。サンプルをすこしづつ試すことで自分なりに違いがわかるように工夫した、消費者マインドに配慮したものになっているそうです。専門書には箸がのびないという人でも、コンビニエントに理解できることが売りです。
さらには、多様な「○○主義」「○○イズム」を問題意識別に整理しています。各主義間の連関性を図示することで、おおざっぱでいいから「世界全体」のイメージをつかんでもらえるように腐心しています。
こういうことをやりとげるには、そうとうの広くて深い教養が必要だと思うのです。まずは、著者の「決断主義」に敬意を表しましょう。
ここからは苦言を呈したいのですが、「私の解釈」ではなく「基礎知識」とおっしゃるからには、ある程度の「正確さ」が求められるのではないでしょうか。別言すれば、「基礎知識」というのは一般に広く共有されるべきものでしょうから、間主観的な「正確さ」が要求されるのです。なにも完璧を求めているのではありません。定義をめぐって論争的な概念もすくなくないでしょうから。
しかし、《もちろん、これはサンプルにすぎないから、正確さを目指すものではない。》などと、「逃げ」をうたれるのは感心しません。プロならば、可能なかぎり(能力のかぎり)「正確さ」を目指すぐらいの気構えはあってしかるべきでしょう。それとも、「謙遜主義」からの発言なのでしょうか?
じつは、「正確さ」がどうということ以上に、そういう姿勢が執筆に影響しているのではないかということを危惧しているのです。初歩的なレベルで首を傾げたくなるような乱暴な表現が散見されることが、それを裏付けているように思えるからです。
たとえば・・・
《そもそも民主主義者の間では、議会の評判は悪い。》
《だから、根本的には、民主主義と議会の相性は悪い。とくに急進的な民主主義者は議会を信用しない。》
周知のように民主主義には直接民主主義と間接民主主義の基本類型があり、間接民主主義者は議会制民主主義を評価しているはずなのに、これを捨象しているかのような表現は乱暴です。
引用文の周囲の説明からは、直接民主主義(制)こそが民主主義の根本だとの著者の思いは読みとれます。しかし、それでもひと手間かけて「そもそも直接(参加)民主主義者の間では、議会の評判は悪い。」といった説明をするのが消費者への配慮でしょう。
《たとえば、博愛主義(humanitarianism)はすべての人間を「他我」としてとらえ、自分と同じように接する。(中略)愛国主義(nationalism)は同じ国籍を持つ人しか、「人間」と認めない。だから、「鬼畜米英」や「小日本鬼子」なんて言い方も成り立つ。人種差別(racism)では、同じ人種同士しか「人間」と認めない。だから、肌の色が違う人間を平気でリンチする。》
愛国主義のところですが、私がこの主義者だったら怒りたくなりますね。いくら「他我」としての「人間」と断っていてもです(ここでは、他人の身になって考えようとする態度は、「人間」として認めた範囲の相手に対してのみ適用されるとしている)。
「同じ人間であることは認めるが、民族性・国民性の違いや国境線で囲まれた共同体的利益を重視していて彼我の差異を強調する傾向が強い。それが亢進して排外主義的愛国主義におちいることがある」・・・とでもしておくならまだわかるのです。引用文がストレートに当てはまる相手は、差別主義的愛国主義者や狂信的愛国主義者とでも呼ぶべきものだと思いますよ。
ほかにもコミュニタリアニズムについての説明などいくつか疑問点がありますが、これくらいにします。
こんかいは「つっこみ主義」「アラ探し主義」者と化しましたが、おもしろく読めるところもありますので、星は3つとさせていただきます。
投稿元:
レビューを見る
世の中の○○主義の導入書、サンプル集です。
教科書を読めばすぐに何とか主義だのテレビでもすぐに言ってますが、実際
その場では理解できなくてよくあとで調べてましたがいまいち理解できませんでした。ですが、この本はそういう主義を網羅して余すところなく書いています。
よく理解している人にはひとつの主義が数ページと短い印象を受けますが、それでも対立する他の主張が整理されて述べられていたり、まとめてフローチャートで描かれていたりと理解が促進します。
ただ、筆者も述べているように世の中の主張はこのようにはっきりと線引きして分けられるものではなくて、その主張間のグレーゾーンがあるということ。両方の主張を理解することによって自分の立場を理解することが重要だと述べています。
自分の考え、主張に論理性、一貫性を持たせるためにもこの本は一読してみるのがよいと思います。
投稿元:
レビューを見る
「なんとか主義、フェミニズム、…」あなたは正確に答えられますか?
みたいな帯の文句に、前々からフェミニズムの意味がわからなかったオレは惹かれて読んでみたけど、フェミニズムなんてほとんど比喩的に引用されてるだけじゃん。
つーわけで、ホントに勉強したいんなら別の本を買うか、wikipediaの方がよっぽど情報多い。
でもあらためて俯瞰してみると、世の中こんなにも主義に溢れているのかと驚く。そしてそれぞれに経緯や主張があって、面白く、複雑な人間社会の縮図になっている。そこから見えてくるものも興味深い。
ポジティブシンキングがブートストラップ的性格を帯びていることや、そこからスピリチュアリズムへと流れる過程や、古典主義は蘇らないなど、なかなかに鋭い指摘だと思った。
(2007/12/07)
投稿元:
レビューを見る
○○主義には詳しくないので、入門書として購入。読みやすかったが、自分の詳しい箇所(主義)については、記述があまりに断片的すぎると感じた。ある程度勉強をしている人が読めば批判の対象となる本なのかもしれない。最低限、政治学系思想をおさえた後で再読したい。(てことで、暫定星3つ)
投稿元:
レビューを見る
0315-0326
/////
右を見ても左を見ても、世のなか「○○主義」、「○○イズム」のオンパレード。政治体制(民主主義、立憲主義など)、芸術の表現(ロマン主義、ダダイズムなど)、性癖や趣味(サディズム、フェティシズムなど)、人事制度(成果主義など)……。誰もが一度は耳にしたことがあるこれらの言葉の意味を、正しく説明できますか?
リベラリズムとリバタリアニズム、より自由なのはどっち? 保守主義と原理主義はどう違う? 民主主義と独裁制が矛盾しない? 構造主義、ポスト・モダニズムって何?
本書は、知っているようで知らない「主義・イズム」を、根本からやさしく解説。哲学から個人の生き方まで90余の「主義・イズム」を網羅しました。さらに各章末には「主義・イズム」の相関図がついており、あらゆる思想の「脳内マップ」を構築することができます。学生や、もう一度教養の基礎を学びなおしたい方に、ぴったりの一冊です。
/////
簡素な明示と問題提起で、思考の手助けをしてくれます。
少々主義・主張に偏りが見られますが、あからさまなので自分で取捨出来るでしょう。
しかし、所々説明の無いまま固有名詞や用語が出て来るのがイマイチ。
投稿元:
レビューを見る
尊敬する友人F田君の本棚にあって興味を引かれた本その1。
実に分かりやすく要点を押さえてある良書。
投稿元:
レビューを見る
世の中を知りたいと思って読んだけど
やっぱ世の中は○○主義という概念だけでは測れないっす!
手短に書いてあって勉強にはなったと思う。
ただ、個性的、独創的になるにはスキマを攻めるしかないという項目には猛烈に反対。
投稿元:
レビューを見る
「○○主義」といわれるもの,とくにリベラリズムとリバタリアニズム・ネオリベの違いがよくわからなかった私としてはその部分は役に立った。
文章は読みやすく,内容もさらっと頭に入ってくるので,知らなかった定義についての整理に,非常に有用である。
だからといって,世の中がわかったかといえば,
ますますわからなくなったというのが正直なところだ。
似たようなものを1章にまとめて示しているのはいいのだが,
章相互にも,関連があるはずだ。1章完結でそれだけ見ればわかった気になれるのだが…
簡単にイズムを理解しようと考える自分のほうが未熟なのかもしれない。
特に後半は,吉岡の得意分野と不得意分野で,記述の濃淡があるので,個人として納得しかねる記述も散見。
「吉岡の顔」が見えてしまうわけだが,著者の顔が見えることをこの本に求めていなかったので,戸惑う。
ところで,この本は,浅く広くの教養書という位置付けだと思うのだが,
きちんと読んで飲み込んでいい本なのか,
話半分に聞いておくべきなのか,少し気になっている。
こういう考えに至った事情として,この人の引用作法への疑問があるので,メモっておく。
*******
pp66-67で森村進を引用して「臓器くじ」の提案を紹介しているが,臓器くじの考え方を示したのはジョン・ハリスである。
森村は引用元「自由はどこまで可能か(講談社現代新書;P47)」において,ハリスの提案であることを示しているし,ハリスがどの論文で示したかも紹介している(引用元の明示)。
が,吉岡は引用文の頭にあったはずの「ハリスは」の4文字を抜いてしまっている。
吉岡の文中では,臓器くじの例さえ示せれば話が進むので,「ハリスは」の4文字は論旨に関連しないし,これを知らないと読めないというところでもない。しかし,抜いてしまうと,知らなければ「臓器くじ」が森村進の提案であるように見えてしまう。
どうなの,それ。
どうしてもハリスの臓器くじの「提案」だけを引用したいのであれば,ハリスの原典に当たるべきなのではないか?
瑣末な点だと思われそうだが,この点だけに限定していえば,吉岡は森村の当該書のみを見て,孫引きを行ったということになるし,それが孫引きであることを「ハリスは」の4文字を引用しないことによってごまかしているということになる。
はっきり言えば,研究者としてはありえない行為だ。
これが一つ発見されただけで,他が立派でも,「もしかしたら知らないだけで…」と思ってしまうから不思議なもの。
それだけ,論文を書くときに「引用」には慎重になれと刷り込まれてきたということかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
世の中にあふれている○○主義や○○イズムという言葉。国家主義とか軍国主義とか民主主義とか、社会主義とか。
なんとなくイメージでは理解しているものの、詳しく知らずになんとなく使っているのが実情。民主主義は独裁主義に通じるというのは本書を読んで一番びっくりしたこと。
色々な○○主義・イズムが簡単に書かれているので、なんとなく理解をするにはちょうど良い。ただ、簡単に書かれ過ぎて物足りなさもある。それは著者が最初に一言述べているので、これをきっかけに、それぞれの主義を勉強してみればよいと思う。
投稿元:
レビューを見る
自由主義、実存主義など○○主義、リバタリアニズムやサディズムなど○○イズムと付くいろいろな言葉について、成立の背景や内容を簡潔に解説した本。
内容そのものはためになるけど、浅く広くという感じ。タイトルに「基礎知識」と銘打ってあるぐらいだから。
投稿元:
レビューを見る
あらゆる「〜主義」についての説明本です。単なる単語の説明で終わらず、社会的背景や他の単語との関連での説明をストーリー仕立てで書かれており、読みやすいです。
投稿元:
レビューを見る
○○イズム、○○主義、とは結局どういうことなのかが、かなり具体的に書かれている。正直こんなにも種類や関係性があるとは思わなかった。それぞれの主義主張の押し付けではなく、比較的中立的に書かれていると思う。
これをスタートに、他作者の同様他書も読んで比較してみたい。
投稿元:
レビューを見る
いろんな「主義」「イズム」が登場するので、なかなかアタマがついていかないが、いかにいろんな「イズム」があふれていて、自覚なしにその型にはまりがちか、考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
世の中に色々ある「○○主義」についてすごく簡単に一般論と著者の独断と偏見を織り交ぜて説明した一冊
面白かった。基本的なコンセプトが、すごく簡単にエッセンスを説明するから、興味があるのを見つけたら各々詳細は自分で勉強してね!というものなので、とにかくわかりやすい。というかシンプル。辞書に毛が生えた程度とも言える。
そこに著者の独断と偏見に満ちたコメントが続く。コメントは、なるほどと思わせるものもあれば、「アンタ、インスピレーションビンビンのダンサーにフラれたのかい?」と思わずにはいられない偏りに満ちたものまで様々。
でもこういう「勉強ってそんな堅苦しいもんじゃないよ」ってスタンスの本は好き。何かを学っていい意味でこの位適当(?)でいいよなぁと思ったりした
投稿元:
レビューを見る
知的6
かかった時間120分
表題のとおり、リベラリズムとかポピュリズムとか功利主義とか清貧主義とかについて、サラサラっと感覚的に説明してある本。
ことばを知ると世の中の見えかたが変わるし、そのことばを我々は日々忘れていくので、たまにこういった本で確認すると、そうだったなぁーと思い出せる感じが良い。
なんとなく、PHP新書っぽくない感じがした。
(PHP新書っぽいってなんだろう…笑)