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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2007.6
- 出版社: 角川書店
- サイズ:20cm/420p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-04-873784-5
紙の本
首挽村の殺人
著者 大村 友貴美 (著)
「ますます事件は奇怪だ。尋常ではないね」岩手県の雪深い村・鷲尻村。無医村の状態が続いていたこの村に、東京から待望の医師・滝本志門がやってきた。しかし、滝本の着任以後、村で...
首挽村の殺人
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商品説明
「ますます事件は奇怪だ。尋常ではないね」岩手県の雪深い村・鷲尻村。無医村の状態が続いていたこの村に、東京から待望の医師・滝本志門がやってきた。しかし、滝本の着任以後、村では謎の変死が立て続けに起こる。それは、殺害後の遺体を異様な形で人目に触れさせるという、前代未聞の連続猟奇殺人事件だった。この村が「首挽村」という不吉な名前で呼ばれる理由とは?村人すら忘れかけていた忌まわしい過去が、事件の真相を浮かび上がらせる—。第27回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【横溝正史ミステリ大賞大賞(第27回)】岩手県鷲尻村の診療所に、東京から医師・滝本がやってきた。着任後、村では謎の連続猟奇殺人事件が立て続けに起こる。村の忌まわしい過去が、事件の真相を浮かび上がらせる−。横溝世界を見事に現代に甦らせた本格推理小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
大村 友貴美
- 略歴
- 〈大村友貴美〉1965年岩手県生まれ。中央大学文学部卒業。2007年「首挽村の殺人」で第27回横溝正史ミステリ大賞大賞を受賞。
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紙の本
民俗学ミステリに新しい風
2007/08/29 18:01
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いかにも横溝っぽい陰惨な雰囲気漂う題名だが、名前負けすることなく中身が見事受賞を決めただけあってなかなか面白い。舞台は岩手すなわち民話や昔話が色濃く残る地。しかも冬の間は雪山により「外部」との行き来が断絶する鄙びた鷲尻村で一人又一人と村人が死んでいく。
医者を切望する「地方」であるこの村に東京から一人の医者(杉)が赴任し、彼が死ぬことから事件は始まった。殺人とも自殺とも熊による殺戮ともとれる死体が次々と上がり、やがて杉の後任・滝本とその妹であり杉の元婚約者・瑠華が現れ、事件の真相を探っていく。
「首挽村」=鷲尻村の血塗られた昔噺がささやかれ、その昔噺になぞらえる様な変死体が次々と上がる。犯人は昔噺を知る村人の中に犯人の目星がつけられるが・・・
数多くの横溝系ミステリが存在するが、私にとってこの作品はかなり異質である。古い伝承を模した殺人や鄙びた地方で、愛憎や確執が猟奇殺人を引起こす、というのが民俗学ミステリの多くを占めると思う。
その陰惨な昔話を知る人物(地元民)が犯人だ!というのが既存に多く見るパターンだが、この作品はそれを根底から覆すものである。
昔話はこの村の陰惨な歴史を後世に伝える為のアイテムであり、外=中央に向けてではなく内=共同体(身内)の中でのみ語り継がれるべきタブーである。その昔話が見立て殺人に使われおおっぴらにしていく犯人が果たして内部の者でありえるだろうか? ・・・私は目から鱗が落ちる思いがした。
ここには、現実に今も我々と同じ世界を地方で生きている「村人」の本音がある。
同時に他の作品よりも(民俗学的な意味で)昔話そのものの構成にとても通じるところがある。すなわち、外部からの来訪による隔離された共同体内の変化>破壊>来訪者の帰去>再生という図式だ。折口信夫により提唱された客人(マレビト)つまり地方から見た中央からの来訪者が福や災いをもたらすという信仰のパターンである。
まあそこまで深読みすることもないかもしれないが、なんにせよ、民俗学ミステリというジャンルに襟を正すよう呼びかけるような作品であると、私は思う。