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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2007.7
- 出版社: 筑摩書房
- サイズ:20cm/318p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-480-81491-3
紙の本
わが推理小説零年 (山田風太郎エッセイ集成)
著者 山田 風太郎 (著)
敗戦後、若き山田風太郎はこう書く、「真に新しい面白さを読者の前に展開しなければならない」。作家誕生となった推理小説とその世界、江戸川乱歩、高木彬光、阿佐田哲也、横溝正史ら...
わが推理小説零年 (山田風太郎エッセイ集成)
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商品説明
敗戦後、若き山田風太郎はこう書く、「真に新しい面白さを読者の前に展開しなければならない」。作家誕生となった推理小説とその世界、江戸川乱歩、高木彬光、阿佐田哲也、横溝正史らとの交遊、執筆裏話などから浮かび上がる「物語の魔術師」の素顔。単行本初収録エッセイの逸品。【「BOOK」データベースの商品解説】
作家山田風太郎誕生となった推理小説とその世界、江戸川乱歩ら仲間との交遊、執筆裏話などから浮かび上がる「物語の魔術師」の素顔。単行本未収録エッセイをテーマで纏めた魅力の一冊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
山田 風太郎
- 略歴
- 〈山田風太郎〉1922〜2001年。兵庫県生まれ。東京医科大学卒業。作家。「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で第2回探偵作家クラブ賞を受賞。ほかの著書に「甲賀忍法帖」「警視庁草紙」など。
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紙の本
敗戦でみんなが飢えている時に、作家はこんなにも豪勢な食事をしていたんだ、って驚きます。作家って儲かる商売?
2007/11/07 21:16
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
山田風太郎の『戦中派不戦日記』を読んでからどのくらい経つのかしらん?でも、その反権力的な日記を読んだ時の驚きは、今でも覚えています。戦時下の想像できないような耐乏生活の中で、こんなに本を読む人がいる、その姿勢は決して高等遊民のそれではなく、まさに必死、というか戦うもののそれのようです。
まさに命がけの読書。食べるものを削ってでも本を求め、人目を避け、乏しい光を頼りに読む。それに比べて、自分の読み方に風太郎の必死があるのか、そう思ったものです。風太郎の日記を読んだことで、私の山田風太郎観は180°変わりました。軍隊生活こそしなくても、戦火の中で青春を送った人間だけが持つ虚無、余生としての戦後、死んでいった人たちへの後めたさが、彼が戦後すぐに発表した、目を背けたくなる人間心理を扱ったミステリに繋がった、と。
この本は、戦後、風太郎が推理小説家として世にでてから晩年までを扱う文を集めたもの。渋めの装丁は、意外や南伸坊です。最近の南の仕事の中では最も地味な部類に入るかもしれません。そのカバー写真には
医大時代の友人と疎開先の天竜峡にて
(一九四五年六月、右端著者)
扉写真には
恩師と共に(右端著者)
と、注が付いています。ま、右端であっても中央下の人物といわれても、本人以外はだれも文句を言わない気がします。それは扉にもいえて、恩師というのは多分、浅田一先生なんでしょうが、特に記述はありません。眼鏡をかけているせいもありますが、敗戦前後の時期の学生というのは、食糧事情などもあったのでしょう、どこか似通った風情です。
第一部ですが、まず驚くのが、敗戦直後でありながら作家たちはこんなにも豊かな食生活を送っていたのか、ということです。乱歩を始め風太郎とともに料亭で豪勢な食事をします。無論、写真がないので、もしかすると山田の目にはそう映った、というだけかもしれません。でも、今まで読んだ小説にだってこういった光景はありません。だって、昭和22年ですよ。歴史が教えてくれるのは闇市の時代。作家って美味しい商売だったんだ・・・
それと風太郎の幸運ですね。自分でも住宅には困らなかった、とありますが、今、長期にわたるローンを抱える我が家にとっては信じられない話です。安価に家を借りる、都合のいいときに自宅を建てる、借金は数年で返す。風太郎の実家が資産家でないことを思えば、運がいいとしか思えません。やっぱり、作家って美味しい商売だったんだ・・・
そして無頼。大乱歩、神横溝に対してそんなこと言うか?やるか?って思うような記事がたくさんでてきます。戦争を潜り抜けてきたがゆえの怖いもの知らず、とでもいうのでしょうか。そして、そのような言動を生み出すお酒。巷ではメチルで失明する人がいた時代に泥酔ですから。ま、風太郎の医学部卒、っていうのは知っていましたが実体を知らなかったので、そこでも納得。
それと私事に関連しますが、今年の夏、家族で格安北海道横断バスツアーに参加しました。千歳から富良野経由阿寒湖、摩周湖・知床経由網走、旭山経由千歳という1100キロ三日の強行軍。で、二日目が網走泊で、三日目の移動のとき、ガイドさんが道路沿いにある土饅頭と北海道の道路工事と囚人の話を詳しく教えてくれました。
そう、第二部で触れられる囚人道路がそれです。しかし、明治維新を成し遂げた薩長土肥の行なった非道、数々の汚職が、そのまま日本を敗戦に追い込み、それが今も政官界に受け継がれているのですから、日本人は変わりません。自分たちの過去を正当化するためなら沖縄の悲劇も、中国人や朝鮮人の強制連行すらなかったことにする、それを告発することは政治的で、自らは正しいという鉄面皮。風太郎ならずとも怒り心頭です。
第三部、筒井康隆作品への言及がいいです。あの大○にナイフをいれ、断面から見えるものを愛しそうに眺め、舌鼓をうつ、私も昔、読みながらこみ上げてくるものがあって、参りました。高校時代の友人が盛んに言っていた阿佐ヶ谷の痰壷男の話と双璧をなす気持ち悪さ、今書いていても、うぐぐぐ・・・
第四部は全集の月報。確か我が家のどこかに全集があったような気がしますが、月報まで残っていたかしら。ともかく、風太郎の凄さだけではなく戦後の推理小説界の赤裸々な姿がよく分ります。ミステリファンのみならず、時代小説、SFを好きな人なら、そして敗戦直後の出版界の様子に興味がある人には格好の贈物。いえいえ、もっと広く、活字ファン必読の本、と断じてしまいましょう。最後に目次紹介。
1 探偵小説の神よ
・わが推理小説零年―昭和二十二年の日記から
・小さな予定
・旅路のはじまり―わが小型自叙伝
・小説に書けない奇談――法医学と探偵小説
・高木彬光論
・浅田 一先生追悼
・シャーロック・ホームズ氏と夏目漱石 など
2 自作の周辺
・奇小説に関する駄弁
・離れ切支丹
・川路利良と警視庁
・今は昔、囚人道路――山田風太郎、“地の果ての獄”を行く
・「八犬伝」連載を終えて
・山田風太郎、〈人間臨終図巻〉の周辺の本を読む など
3 探偵作家の横顔
・日輪没するなかれ
・御健在を祈る
・疲れをしらぬ機関車
・銭ほおずきの唄
・筒井康隆に脱帽
・乱歩先生との初対面 など
4 風眼帖
編者解説 日下三蔵
紙の本
山風ファンにおすすめの好エッセイ集
2009/02/06 15:41
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『妖異金瓶梅』『明治断頭台』『甲賀忍法帖』といった無類に面白い小説を書いた山田風太郎の、ミステリ関連のエッセイを集めた単行本。【探偵小説の神よ】【自作の周辺】【探偵作家の横顔】【風眼帖】の四部で構成されています。
読みごたえあるミステリ作家の「おっ、これは!」という作品を選び出すことにかけては名うての日下三蔵(くさか さんぞう)が編集を手がけているせいか、出来のいいエッセイ集だと思ったなあ。
◎ミステリ作家の立場からの考察が興味深い・・・・・「探偵小説の<結末>に就て」。
◎地の果ての獄の過酷で凄惨な歴史を綴って強烈な・・・・・「今は昔、囚人道路」。
◎この作家の死生観に粛然として襟を正す思いに駆られた・・・・・「山田風太郎、<人間臨終図鑑>の周辺の本を読む」。
◎なつかしの乱歩の面影が彷彿と浮かび上がる・・・・・「私の江戸川乱歩」。
この四篇は、なかでも味のあるエッセイでとして忘れられません。
「山田風太郎」という作家の根底にある虚無的な観念、ミステリ小説のどういうところを一番の妙味として捉えているか、敬愛するミステリ作家に向けた気持ちのいい讃辞など、山風ファンには好個の一冊と言っていいのではないでしょうか。
ひとつ、わずらわしく感じたのは、それぞれのエッセイの初出が、本書巻末の「編者解説」の中に記されていたこと。これは、個々のエッセイの末尾にでも掲載されていたほうが有難かったですね。