「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
混乱する現場で対立する捜査一課特殊班とSAT。現場で指揮する竜崎の決断は。警察庁から大森警察署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。襲いくる様々な圧力に竜崎は打ち勝つことができるのか。【「BOOK」データベースの商品解説】
【山本周五郎賞(第21回)】【日本推理作家協会賞(第61回)】警察庁から大森警察署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。その管内で強盗犯の立てこもり事件が発生。混乱する現場で対立する捜査一課特殊班とSAT。現場で指揮する竜崎の決断は−。「隠蔽捜査」シリーズ第2作。【「TRC MARC」の商品解説】
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
「相棒」の右京さんもいいけど、この「果断」の竜崎もいい!
2008/09/20 00:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の警察ものの完成度の高さは、言うまでもないこと。本筋の警察の捜査の緊迫感はもちろんのこと、組織内部の人間関係、本庁と署の人間描写の巧みさにあらためて脱帽した。だからこそ本筋が生き生きと動き出すのだ。
今回は、竜崎と妻の夫婦関係にも、ほろりときてしまった。警察キャリアの竜崎は仕事一筋。けれども、それを支える妻の大きさに、今回彼ははじめて気づく。妻の支えがあってこそ自分が仕事に打ちこめたのだ、と。二人きりになると、なんだか妙に照れくさく、うまく口には出せないが、彼が妻を思うなかなかいい場面があり、ぐっとくる。
プライドは高く、まっすぐで、まじめ。人間関係には疎いが、不正や隠し事はしない。
キャリア制度には、批判が多いが、この制度でなければこれだけの自負は生まれないのではないか。そして、そうした自負があってこそ、様々な困難を乗り越え、責任あるいい仕事ができるのではないか。そういう意味では、必要な制度でもあると、この本を読み思った。
あちこちに、竜崎の思いが吐露されるのだが、彼のマスコミ批判には、思わずうなずいてしまった。
「左よりの大新聞などは、ここぞとばかりに人権派の識者を動員して警察のやり方を非難していた。」「もし、今政変が起こり、再び中国やロシアにような非民主国になったら、人権だの表現の自由だのと言っている大新聞は、たちまち政府の御用新聞になるだろう。」「だから、竜崎はマスコミをまったく信用していなかった。だが、国民は新聞やテレビにころりと騙される。だから、警察としてはマスコミを無視できないのだ。」
息子のお勧めのビデオを見ての独白にも、彼のまじめさが出る。アニメなどどうせ子供だましなのだ、とたかをくくっていたが、「不覚にも感動してしまった。」というシーン。
ナウシカ(とは記していないが、おそらく…)を見て、
「少女は戦う。…大地の怒りを鎮めるために戦う。彼女には、知恵があり勇気があり信念がある。だが、最大の武器はやさしさだ。彼女は、やさしさで不可能な戦いに勝利するのだ。…戦うため大義はいらない。ほんの小さなものでもいい。何か信じるものがあれば、そのために戦うのだ。守りたい何者かがいるなら、そのために戦えばいいのだ。」
そして、彼は、戦いに赴く。
長年の今野ファンとしては、最近急にもてはやされ、本屋に平積みされているのを見ると、うれしいのだが、何を今更…なんて思ったりする。でも、この本も、いつもの期待を裏切らない出来栄え。最初から最後まで一気に読ませるおもしろさだ。
紙の本
型破りの警察小説、『隠蔽捜査』で充分に楽しませてくれた個性、あの竜崎の再登場である。
2008/07/25 14:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第21回山本周五郎賞と第61回日本推理作家協会賞のW受賞のこの作品は警察組織を痛快に揶揄してのけるところ、前作を上回る面白さがあった。
やや詳しくこの作品の冒頭部分を紹介するが、冒頭ながらいくつか巧みなエピソードの組み立てに竜崎の個性が浮き彫りにされ、これから始まる本筋への期待をいやがうえにも高めさせてくれる、今野敏の脂の乗り切った筆の冴えが非常に印象的な導入だ。
高輪署管内で発生した強盗事件の犯人の逃走経路に大森署の管轄地区が入るかもしれないと大森署では主要なところに検問を設置するが、署長竜崎はそれとは別な場所にも設置するよう命令する。しかし署長命令は無視され犯人はそこから逃走する。結局犯人は警視庁機動捜査隊に確保されるのだが、同じ警視庁で高輪署を管轄する第二方面本部の管理官がメンツをつぶされたと怒鳴り込んできて難詰されるハメになる。しかし、竜崎は部下の失態を責めず、本庁のヨコヤリを平然と無視し颯爽としているわけだ。縄張り争いなどどうでもいいこと、警察組織全体として犯人拘束の成果が上がったことが何よりも大切だとする正論で大見得を切り、読者をうならせる。
そしてこの騒動に前後して興味深いエピソードが織り込まれている。どうやらこの程度の警察活動は副署長以下の仕事であり、お飾りである署長は区長や区議の出席する公園落成式に参列するのが常識らしいが、彼はそこへ向かう車の中でこの緊急配備を耳にし参列をドタキャンする。犯人の身柄確保がなされた後もこの落成祝賀パーティーへ出席を「国家公務員倫理規定」の原則論から断る。そして小中学教師やPTAのうるさがたで構成する防犯対策懇談会に臨む。税金ドロボーといわれかねない雰囲気ではあるが彼はその場に媚びることなく、逆に住民の果たすべき責任に言及しうるさがたをぎゃふんとさせてしまうのである。とてもとてもかっこいいのだ。
「息子の不祥事で、大森署長に異動した(左遷された)キャリアの竜崎伸也。その大森署管内で、拳銃をもった強盗犯の立てこもり事件が発生、竜崎は現場で指揮を執る。人質に危機が迫るなか、現場でそれぞれの立場を主張する捜査一課特殊班とSAT。事件は、SATによる犯人射殺で解決したかに見えたが………」
ところでこの『果断 隠蔽捜査2』だが、独立した作品ではあるが、前作の『隠蔽捜査』をまず読んでおいたほうがよい。前作の竜崎のほうがエリートのいやらしさも強調された生のままのおかしさがあったが、この竜崎はいやらしさが薄れ本来のエリートとして「立派なおとな」にやや成長したようである。流れで読むことによりこの珍妙な成長のプロセスをたどる楽しみが加わるからである。また、前作の続きで竜崎家のホームドラマも展開するが、ここでも彼は父親らしさがまして普通のお父さんに近くなっているところがある。
二つの作品を読んで気づいたことだが、皮肉たっぷりなのは間違いないのだがこの作品は警察機構に特有な組織ぐるみの悪事、不正を弾劾するという憤りの姿勢で書かれたものではない。どんな組織にでもありがちな不条理を面白おかしくさばいているようだとそんな気がしてくる。官僚機構ではない普通の会社組織に身をおいたものでも、どこか追体験している気持ちにさせられる。こんなところがまた型破りな警察小説だと感じるところだろう。