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商品説明
進化しすぎた人工知性体が自然と一体化したとき、僕と彼女の時空をめぐる冒険ははじまった。Jコレクション創刊5周年記念作品。【「BOOK」データベースの商品解説】
【フィリップ・K・ディック賞特別賞(2014)】進化しすぎた人工知性体が自然と一体化したとき、僕と彼女の時空をめぐる冒険ははじまった。イーガンの論理とヴォネガットの筆致をあわせもつ驚異のデビュー作。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
円城 塔
- 略歴
- 〈円城塔〉1972年北海道生まれ。2007年「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞受賞。
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紙の本
SFホラ話の傑作
2010/03/04 23:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
円城塔、2007年のデビュー作。「虚構機関」での「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」に惹かれてこちらを読んでみたけれど、これは「パリンプセスト」をがっちりとアップデートしたような感じで、とても良い。私がSFを読むのは、こういう小説を読みたいからだと思わせる本だ。
構成としては、18ページ程度の短篇が連なっていて、個々の短篇はそれぞれ結構独立しつつも、「イベント」と呼ばれる事件以降の世界を様々な視点から点描していくという風。ここは「パリンプセスト」と同じ連作短篇形式だけれど、本書ではもっと明確に諸短篇の連続性が示されていて、「イベント」という時間の進み方がおかしくなった事件と、巨大知性体という高度に進化し知性を持ったコンピューター群が鍵となっている。
人間を遙かに超える知性を持つコンピューターの超次元的な活動がまた一つの読みどころでもあるのだけれど、私にとってこの本の最大の魅力は、奇想短篇群としての圧倒的なクオリティにある。冒頭の一話目「Bullet」はこうだ。頭に弾丸が入っている少女が出てきて、主人公の友人が言うには、その弾丸は未来から撃ち込まれたものなのだと言う。さて、訳が分からないだろうけれど、確かにこの通りに話は進んでいく。かなりラファティ風な感触のあるこの一篇を皮切りに、毎年一回ずつ転がすことになっている巨大な箱だとか、26人の数学者が同時に思いついた定理、村に生え続けてくる村を日々打ち壊しながら生活する人々、亡くなった祖母の家の床下から見つかる大量のジグムント・フロイトだとか、これでもかと繰り出されて来る奇想の連続には興奮せずにはいられなかった。
冒頭の一篇はアンファンテリブルもののラファティを思わせるし、数学的ネタを用いたSFというとルーディ・ラッカーが連想され、まったく異なる原理の世界とかバリントン・ベイリーっぽくもあるし、明らかにボルヘス「円環の廃墟」ネタの文章があったり、人知を越えた機械とかはスタニスワフ・レムの「ゴーレム」かとか、ちょっとカルヴィーノの「見えない都市」っぽいところもあるし、ギャグの挾み方とかが田中哲弥っぽいところもあったりして、この手の名前にピンと来る人には強く薦めたい。帯にはレム+ヴォネガット、とあるのだけれど、ヴォネガットらしさはそんなに感じなかったなあ。
非線形物理を専門にしていた「複雑系のえらい人」だったというだけあって、奇怪な論理、奇抜な発想に、数学的な理論や発想が寄与しているところがあり、それが発想の論理的な暴走を駆動しているのだろう。メタにメタを接いでいってどんどん階層が多重化していったり、論理的には正しいのだろうけれど、何を言っているんだかわからなくなってきたりするところがしばしばある。ただ、その暴走自体が一種の笑いとして取り込まれているので、このわからなさが面白いという気分になってくる。数理的なネタや説明、あるいはラストあたりの展開はやはり難解ではあるのだけれど、華麗に流し読みしても、または深読みしても楽しめると思う。
理解するのは難しい(というか私もよく分かっていない)作品だとは思うのだけれど、奇想の洪水に流されるままになるだけでも相当に面白いので、その難解さは特に気にすることはないだろう。
紙の本
SFと純文学の間をひらりひらり
2008/06/08 23:24
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書ですが、SF書評家の大森さんが、雑誌「本の雑誌」で 「この人天才です。」って言っていました。
出版社の宣伝のうたい文句でも、イーガンとヴォネガットの、、と言及されたりしています。
というわけで、えーっどんな感じなの??と読んでみました。
大きな構成としては、
時空がおかしくなってしまった世界を描いた二部構成の連作形式でして、
その上記のくくりだけ大きくあって、後は、自由に短編として描かれています。
これ、やっぱりSFなのですが、読むと、やっぱり、むずかしめ、、。
むずかしいと言っても、ハードSF的難しさではありません。
イーガンと比べても、ちょっと違います。
イーガンって文学表現として小説を選んでいても、
何処まで行っても、理系的思考の上に成り立っています。
人の感情でさえ、数値化したり化学反応だったり電気信号だったり、
全てを解き放ってしまう方程式だったり、
すべて科学が勝利をおさめると言う立場にたっています。
(ヴォネガットは読めていないので、比較しません)
それに比べると、この著者円城さんの、小難しさは、全く違います。
理系的、足したり引いたりして勘定があっている難しさでなく、
文系的、難しさ、哲学的難しさ、文章表現してしまうことで、生まれてしまう、可能性の両面を
吟味したり、とにかく生まれ出た言葉、単語でどうにか、してしまおうという立場にたっています。
題名のSelf-Referencetというように、正に、自分で勝手にどんどん言及していくことの
知的欲求、好奇心を面白い、とか、感じているみたいです。
その証拠をもう一つ挙げさせてもらうと、
この円城さん、実は、本作のまえに書いた、一作目は、純文学系の作品です。
で、そこからの文章表現の一環として、早川がアプローチして
SFへとなったみたいです。
(勝手に推測して書いています。どちらからアプローチしての企画かは知りません
小松左京賞の実は落選作との噂もあります)
使われている用語の整合性は、置いといて、
(衒学でないかと言う疑惑もありますが、アニメでエヴァがあるとおり
衒学でも、小説としておもしろければ、作り手の勝利です)
凄い書き手であることは、間違いなしです。
意外に、SFはパートタイムとしての仕事で
純文学に戻るかもしれませんね、、。
紙の本
挑み続ける
2017/08/06 09:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
言葉の可能性について挑戦している本です。ハノイの塔のように、無駄に思えることも細かく描写しているところが面白かったです。