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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2007/04/01
  • 出版社: 朝日新聞社
  • サイズ:20cm/420p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-02-250272-8

紙の本

悪人

著者 吉田 修一 (著)

保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、...

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悪人

税込 1,980 18pt

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商品説明

保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。【「BOOK」データベースの商品解説】

【毎日出版文化賞(第61回)】【大佛次郎賞(第34回)】幸せになりたかった。ただそれだけを願っていた…。保険外交員を殺害した男と、彼に出会った女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。悪人とはいったい誰なのか。『朝日新聞』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

吉田 修一

略歴
〈吉田修一〉1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。「最後の息子」で文學界新人賞、「パレード」で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞。

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みんなのレビュー524件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

悪人にも五分の魂

2007/07/05 02:09

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

事件が一つ起こったということは、悲劇が一つあったということは、被害者がいて加害者がいて、勝つものがいて負けるものがいる、ということだ。世界は対立する表裏一体の存在があって初めてつりあいよく運営している、そう考えると、自分は一体どっち側なんだ?という疑問がわいてくる。
どっち側であるにせよ、被害者・加害者・傍観者・関係者・・・一つの事件が起きた時そこから波紋のように広がる人間関係は果てしない。そしてその波紋の先に存在する人々すべてに生きてきた年月があり記憶があり場所がある。
「一人の人間がこの世からおらんようになるってことは、ピラミッドの頂点の石がなうなるんじゃなくて、底辺の石が一個なくなることなんやなって」(本文中より)
この作品はそんな当たり前のことを隈なく丁寧に、とても丁寧に切り取っている。
私は時代劇のその他大勢である「斬られ役」達にも人生があるはずだと常々おもう。
彼らだって好きで悪代官の下にいるわけじゃあるまい。悪者側に居たばっかりに、あっさり斬られて死ぬ脇役達。そんな彼らにも家族も友人も恋人もいる。
ともかく。「負組み・勝ち組」なんてコトバが流行っている昨今だが、自分は勝っているのか負けているのか、価値があるのか無いのか、ふと自分の立ち位置が不安になる作品だった。
乗るはずだったバスがバスジャックにあい乗客が死んだ時から、自分は当りをひける人間なのだと初めて感じた女、光代。
人に蔑まれ馬鹿にされても「たまるもんか」と何度も立上がる母。
娘を殺され、そう追い込んだ男に一矢報わずはとスパナを振りかざし復讐する父親。
幼少期に自分を捨てた母親に泣きつかれ、泣いて謝罪されたその瞬間から金をせびり、「加害者」側に変身した男。
約束をそっちのけにし他の男に走り去る女に一言謝らせようとして犯行に及んでしまった男。
「悪人」の周りには「負組」でありそこから必死に駆け上がろうともがく人間ばかりだ。そして彼らの心にはいつでも「私はここにいるのだ」「馬鹿にするな!」という言葉が沸騰している。
又同時に、寂しい淋しいとあえぐ人間ばかりでもある。
だれか話しを聞いて、見て、触れて、と。
「寂しさというのは、自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなんかもしれない」(本文中)
悪人=祐一は、殺人という罪を犯して初めて「誰かに聞いてもらいたい話」を持つことが出来た。皮肉にもそれは聞いてもらえたとたんに、また独りぼっちになるであろう話すなわち殺人の自供である。そんな寂しい男が、寂しい女とメールで出会い繋がりお互いを満たし得た。彼女(光代)は祐一の手を引いて警察から逃げた。ただ一緒にいたい、一人きりにしないで、と。そして私はこの人とここに居るのだと必死に存在を主張する2人の逃避行が始まる。
被害者側にも加害者側にも、勝組にも負組にも、味方と敵とがいて、憎しみも愛も半々、そうやって均衡が取れている、そうでなくてはいけない。そう「悪人」は感じているのだ。
だから彼はひたすら悪人であろうとした。
彼は被害者にはならなかった。ただただ、加害者という悪人であり続けることに徹したのだ。自分がすべて受け持ってこの均衡を守ってやるからと。
逃避行を斡旋した愛する女までも「被害者」にすることで守り抜いている。彼は悪人なのか?それはもう、彼にも彼女にも誰にも、どうでもいいことである。
ただ彼は負け組みではない。確かに己を貫いた勝ち組である、そう信じたい。
政治にも思想にも絶対多数が常識・正解とされる今の世に大切なものを投げかける作品である。

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紙の本

心が揺さぶられる、とか人間の見方が変わる、といった深い感動を呼ぶ作品ではありません。でも、面白い。被害者が、ただ被害を受けたというだけで、いい人間とは限らないことがよくわかります

2007/06/27 21:25

10人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

評判の本です。私は原則として朝日新聞は読まないし、彼らの報道も信じませんから、同じ会社から出る本も基本的には読みません。でも、ここまで騒がれる小説となると、気にはなる。ま、私は吉田のいい読者では、全くない。映画の原作を書いている人、くらいの思いしかない。読んだのも『熱帯魚』『ひなた』の二冊だけ。その印象も決してよくはなかった。
でも、この作品に関しては作家仲間がかなり褒めています。気になるんですねえ、面白い本だったら、意地張って読まないのは馬鹿だし。で、悩むこと数ヶ月、ま、いいか、って思いで手にすることにしました。結論を書いておきます。心が揺さぶられるような感動、頭を抱え込むような問題意識をもつことはありません。
でも、四時間で一気に読了。そう、面白いんです。これなら直木賞あげます、推理作家協会賞だってあげちゃう。
まず被害者です。福岡市内に暮らす保険外交員の石橋佳乃。今年の春、短大を卒業したばかりの21歳です。実家はJR久留米駅近くの理髪店。父は佳男、母は里子。家族との仲は悪くはありませんが、彼女は就職早々に職場に近い福岡市博多区千代にある平成生命の借り上げアパートに引っ越してしまい、父親はそれが不満です。
佳乃が家を出たのは、気が強いからだけではありません。親には話しませんが、出会い系サイトで知り合った男たち何人かと付き合ったりしていて、それを知られたくない、という思いもあるようです。でも何より、気楽に仲間と遊んでいたい、人が羨むような男と結婚して周囲に羨ましがられたい、それが大きい。そういう女性です。
彼女とつるんでいる友人は、短大時代の仲間ではなく、職場の同期です。一人は、かならずしも佳乃のいうことを信じていない谷元沙里で、もう一人がのんびりやの安達眞子です。佳乃は、自分の苗字があのブリヂストンの経営者の一族と同じ事から、周囲が親戚ではないか、と思い込むのを敢えて否定しないなど、二人に向かっても自分の本心や真実を伝えようとはしません。
佳乃が目をつけているのが増尾圭吾です。南西学院大学商学部4年生で、実家は由布院で旅館などを経営しているらしく、博多駅前に近いマンションを借り、アウディA6に乗っています。2001年10月半ば、佳乃たちと天神のバーで知り合い、ダーツなどをしています。その時、増尾からメルアドを訊かれたSのが佳乃で、彼女は二人の友人に「増尾とつきあっている」と嘘をついているのです。
加害者の名前は冒頭で明かされます。27歳の土木作業員・清水祐一がそうで、長崎市の郊外に、祖母 房枝と殆ど寝たきりの祖父 勝治と住んでいます。佳乃とは出会い系サイトで知り合ったものの先月二度合ったきりで、趣味といえば車。自分でチューンアップしたスカイラインが自慢ですが、彼には昔、実の母・依子に捨てられ、小学生の時から祖父母の手で育てられた過去があります。
話は三瀬峠で女性の絞殺死体が発見されたところから、佳乃、圭吾、祐一、そしてもう一人の女性を巻き込んで動いていきます。読者には明かされてはいたものの、周囲には見えていなかった被害者、被疑者の醜い姿、逃避行の過程で見えてくる真犯人の本心、娘の表の顔を信じようとする親の憎しみと、事実から目を背け責任を回避しようとする無責任。これは、現実の事件でも繰り返されているであろうことです。
それゆえに、読者は感動し涙するということはないでしょう。真実のみが見せる苦さに、ある人は目を背けるかもしれません。実際の事件に照らし合わせて物事を新たな目で見始める人もいるかもしれません。私は、大学生活を楽しく過ごしている長女に、思いを込めてこの本を渡しました。佳乃みたいな女になるな、圭吾のような男にだけは引っ掛かるなと。

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紙の本

何よりも2人の愛の強さに惹かれる!吉田修一の「悪人」。

2011/04/11 18:04

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 映画もいろいろと話題になった「悪人」を読む。とにかくこれは読後
感が圧倒的。究極のラブストーリーと呼びたくなる傑作小説だ。

 祐一と光代は携帯の出会い系サイトを通じて出会った。遊びではなく、
彼らは互いに自分を必要とする異性を強く強く求めていたのだ。そして、
激しく惹かれ合った。彼らが出会うのは実は第三章、すでに3分の1を
過ぎてからだ。第一章で語られるのは、福岡と佐賀の県境で起こった女
性の殺人事件について。被害者石橋佳乃のこと、その両親のこと、容疑
者の男たちのこと。祐一は佳乃とも出会い系を通じて知り合い、殺人が
起こった夜、彼女と会っている。第二章では祐一のこと、その生い立ち、
彼を育てた祖母のことなどが語られる。そう、祐一と光代は「事件」の
あとで出会うのだ。この出会い以降、物語はグンと熱を帯びてくる。付
き合い始めて、彼らが周囲に見せる「幸せそうな顔」、その描写が心に
残る。そして祐一は光代に事件の真相を語る…。「俺、もっと早う光代
に会っとればよかった」「ここで祐一と別れたら、私にはもう何もない
たい」、どうにも離れられない2人の逃避行が始まる。

 確かにこの愛は刹那的なのかもしれない。それでも、2人は激しく求
め合っている。この愛の強さに僕は何よりも惹かれる。「今の世の中、
大切な人もおらん人間が多すぎったい」と娘を殺された父親はつぶやく、
「これまで必死に生きてきたとぞ」と祐一の祖母は叫ぶ。話の終盤で2
人の老人が吐き出すこれらの言葉はこの物語を俯瞰するような強い思い
が込められている。

 少し古めかしいようなスタイルと全編九州弁で語られる言葉が物語を
際立たせる。タイトルを「悪人」としたことで、誰もが悪人であるとい
うような意図を作者が持っているようにも思うが、その点は自分はまっ
たく感応しない。ただただこの愛の姿に心を打たれるのだ。

ブログ「声が聞こえたら、きっと探しに行くから」より

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紙の本

人の持つ悪意について考えさせられる作品

2010/05/05 18:20

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る

初めて読んだ吉田修一作品。物語は、福岡市に済む保険の外交員、石橋佳乃が、出会い系サイトで知り合った、
長崎在住の土木作業員清水祐一に絞殺されて、福岡と佐賀の県境にある

三瀬峠に死体遺棄されてしまった事件を中心に展開して行く。
そこに様々な人間模様が絡まり、読んでいると、改めて人間の心理というのは一筋縄では行かないもんだ、

との思いを強烈に感じた。そもそも殺された佳乃からして、さほど面識もないボンボン大学生増尾に、
一方的な憧れを抱き、周囲に『付き合ってる』と嘘を付いている。

この増尾って奴が、全くどーしよーもないゲス野郎だとも知らずに…。
些細な見栄や嘘は運命を左右し、生命までをも脅かす事になる。事件の晩、

石橋佳乃は清水祐一と会う約束をしていたのにも関わらず、
待ち合わせ場所に偶然居合わせた増尾の車に乗ってサッサと何処かへ走り去ってしまう。

約束を簡単に破られ、小馬鹿にされた形の清水祐一。カッとなった彼も、慌てて2人の車の後を追う。
何かに導かれるように、三瀬峠で発生する殺人。増尾と清水、そして石橋佳乃との間に一体何が起こったのか?

時系列に沿って丹念に事件の輪郭や、事件に関わった全ての人逹の証言が浮き彫りにされていく。
個人的に自分が九州在住なのもあるが、凄い九州の土着的な、

ある意味で閉鎖的な人付き合いが的確に書かれていると思った。
例えば、石橋佳乃の通夜の席、親類縁者が陰でコソこそと佳乃の噂話

(『あの娘は男遊びの酷かったらしかね)をする場面等 は情景が目に浮かぶ位のリアリティーがあった。
後半になり、それまでビクビクと逃亡していた増尾は、事件のキッカケは作ったものの、

殺人には関与していなかった事が分かる。が、このキッカケを読んだ時に無性に増尾という男を、
ぶん殴りたくなった。それ程に、このゲス野郎の中にある虚栄心や悪意は、

どーしよーもない悪人としての性質を持っていると感じた。
反面、真犯人?の清水祐一は、静かな狂気の持ち主とでも言うべきか言動も地味で、正直、

事件の後に出会った光代との逃避行でも、絶えず何かに怯えて、誰かに助けを求めているような性格の持ち主だ。
只、事件の全容が明るみに出た後の、彼の告白からは、人は愛を手にする為には、

どれだけでも優しくなれるし、残忍にもなれるんだなぁ、と切ない気持ちを感じた。
増尾と清水、2人のタイプの異なる悪人の姿や思いに触れ、その周囲に居る人達の事件への述懐を聴き、

様々な悪意が一人の人間を悪人へと落とすのか、それとも悪人はキッカケ次第で、
自ら悪人へと堕ちるのか、どちらなのだろうと、自分なりに真剣に考えた。

人間について深く考えさせられる傑作だと思います。オススメ致します!!

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紙の本

「悪人」吉田修一のひとつの到達点!傑作

2008/01/06 10:40

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る

書店へ行く楽しみのひとつは、
新刊の平積みをざっと眺めること。

分厚い新刊がこの今回の本、
手に取るとにやけてしまいそうになる、
好きな作家の新刊が
こんなにも厚いと
それだけで嬉しくなるからだ。


さて、読み終えてタイトルの「悪人」について考える。
世の中に確かに
ナチュラル・ボーン・キラーズみたいな
悪人も居るだろうけど、
殆どはその意味では善人というか、
悪人そのものっていう人は少ない。

そしてこの本では
追い詰められた揚げ句に
悪人となってしまう人間が描かれている。

この切ない感じはどうだ、
なんかやるせなく、どうしようもなく、
バカバカしく愚かだ。

読みながらも、心の中で
「ウワァー」と叫び出したくなる。
それ以外どうしようもないのだ。

この本を読んで
「共感した」とはなかなか言い難いだろう、
だって孤独な剥き出しの心が描かれて
ひとつ間違った方向へと疾走していくとき、
自分は果たして大丈夫かと考える、
大丈夫だよな、と思う。

でもここに描かれる美しい魂が
ほんの少しの偶然と狂気でとても残念な結果となるのは
何だか怖くて仕方ない。

誰かに必要とされたい、
誰かと何気なく笑っていたい、
週末を誰かと一緒に過ごす安心感。

何気ないものが、いくつもの危うい選択を
なんとか日常の範囲内で踏みとどまらせてくれているのだ
きっと。

「悪人」
心の中の「悪人」の種を意識しつつ
綱渡りしているのが現代の私たちなのかもしれない。

http://yaplog.jp/sora2001/

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紙の本

悪いのは誰か?

2007/09/10 12:38

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夢の砦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

形式に目新しさはないものの、一気に読ませる展開はさすがである。現代に生きるごくありふれた人々を描く力は、他の小説家をぬきんでている。この小説の中に「善人」は果たして登場するのか?すべては「悪人」ではないのか?とすれば、読者もまた「悪人」なのではないか?そんな問いを投げかけられているような気がする。

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紙の本

事故に近い事件

2009/07/11 18:30

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

悪人 吉田修一 朝日新聞社

 生々しい。舞台が九州、福岡、佐賀、長崎であり、九州生まれのわたしが知っている地名や行ったことがある場所が散在しています。西鉄バスのバスジャック事件が登場したりもして、九州弁の方言や若い女性たちのやりとりは、自分のいとことか、親族の話を聞いているようで、とはいえ、殺人事件の物語であり、複雑な心境で読み進めた長編となりました。
 物語全体は420ページとなっていますが、370ページ部分ぐらいで話は終結しています。最後の部分で小競り合いがあるものの、その部分の重要性は軽いものです。タイトルについては、「悪人」以外に適切な名付け方があったような気がします。
 福岡県久留米市の理容店娘、保険外交員の石橋佳乃さんが、長崎県の土木作業員清水祐一くんに殺害される内容となっています。ふたりの仲立ちは、性風俗産業であったり、清水くんの女性関係は、携帯電話の出会い系サイトであったりもします。
 道路にこだわる作者です。最初のうちの秘密は真犯人が見えないことにあります。冒頭、事件集結後の話として、犯人は清水祐一くんと断定されるのですが、殺害経過にはもうひとりの男性がからんできます。その男性の逃亡先が名古屋市で、これもまたわたしには身近で生々しい。
 被害者石橋佳乃さんの父親は、自暴自棄になって、名古屋市に逃亡していた男性を殺害するのではなかろうか。父親の立場にたってみると、いったい今までの自分の人生はなんだったのだろうかという自己嫌悪にも襲われるでしょう。いっぽう、清水祐一くんの逃避行につきあう光代さんの言動は不自然です。
 事故に近い殺人事件です。親族関係を混乱させる人物が何人か登場します。じっさい、そういう人物は、どこの親族関係にも存在します。
 犯人の清水くんは、母親に置き去りにされたこどもです。こどもを置き去りにする母親は、いつの時代にもいます。小さなこどもにとって、母親は自分を守ってくれる絶対的な存在ですが、母親は女性であり、女性は、こどもよりも恋人である男性を選択することがあります。されど、責める気にはなれません。こどもはいつまでもこどもでいるわけでもありません。親に依存せずに、自分で自分の理想とする家族をつくればよいのです。依存すると「怒り」だけが残ります。自立すればいいのです。

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紙の本

もはや動かしようがない格差の拡大社会と歪められる家族関係を通して人間の本当の値打ちとはなにかを問いかける。

2008/02/15 01:42

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

このところ家族の絆をテーマにした話題作を二作読んだけれど、いずれも作者が作り上げた抽象的、技巧的世界に読者をひきつけようとしただけの家族ものだった。『悪人』はそうしたキワモノではない。現代社会の家族のある断面を直視した著者がそこに生きる人たちのやりばのない怒りと寂寥感をリアルに伝えてくれる傑作である。リアルだというのは私の中にいくつもの関連する具体的イメージが浮かぶからである。善とは、悪とはなにか。家族とはなにか。大切にすべきものは。真実を歪めるものはなにか。

「悪人」という表題だが読んでいて浮かんだのが春秋・戦国期の中国のお話だった。
楚の人で正直者の躬というものがいたが、その父親が羊を盗んだときそれを役人に知らせた。楚の宰相は「こやつを死刑にせよ」と命じた。
父親の盗みの動機などは説明されていないただこれだけのお話である。「こやつ」とは躬を指している。この宰相の処断は孔子流儀であって国を滅ぼすものだ、と韓非子は指弾する。そうだろう。法律に照らして「悪人」が父親であるのは明らかである。内部告発が「奨励される」現代ではなおさら躬の行動は正しい。だが、それでいいのか。待てよ、といささか躊躇する心情がどこかにあるものだ。この場合、親と子の立場が逆転していてもかまわない。関係が夫婦であっても恋人同士、友人同士でもかまわない。そこにはお互いに相手を大切に思う心の通い合いがある。仁愛や信義、誠実の道理などはどうでもいいとなってしまった時代にあって、人間にとってそれがなくてはならないものだと思想する楚の宰相が躬の背徳行為を糾弾し「悪人」とする、この価値観を完全否定はできまい。『悪人』と表題したのはこのあたりに含むところがあるからだろう。著者は冷静にあるときは冷酷に、しかしやさしさのこもった眼差しで登場人物の「悪人ぶり」を描き出している。やさしい視線があるからだろう、物語はとても悲しいのだ。

殺人事件の被害者・石橋佳乃、短大卒20歳、博多にアパート住まいする保険外交員。みてくれで男を評価するが、そのみてくれのいい男には相手にされない女で小遣い稼ぎにあっけらかんとセックスをする。父母は久留米の床屋であるが商売はさびれゆく一方にある。被疑者・清水裕一・高卒、いくつかの職を転々とし今は土建作業員、27歳。幼くして母に捨てられ病弱の夫をかかえる祖母に育てられる。車になけなしの金を使うが、ファッションヘルスで女を買ってもまともに相手にされない。それほど人づきあいの下手な男。被疑者・増尾圭吾・大学4年生、実家は旅館経営だから金には困らない、女にも不自由しない。他人の不幸を笑い話にできるチャラチャラ人間でアウディを乗り回す。

詳細に述べられた家族関係から私は最近になって言い出された格差社会が実は親の世代から継承された再生産の産物であることに気づかされた。格差の被害者が加害者を親だと認識すれば家族の絆どころかそこには敵対関係しか見えてこない、ぞっとする世界だ。さらに親は加害者であることに気づかない、むしろいつまでも庇護者のつもりだからますます悲惨なことになる。著者は「格差社会」という言葉は使用していないがまさにその悲劇性の根源と広がりをなまなましく抉り出している。被疑者とともに逃避行を続ける女・馬込光代、高卒29歳。食品工場から転職し紳士服量販店に勤務、双子の妹と佐賀市郊外でアパート暮らし。主要登場人物では光代だけが屈託のないただ「普通」に生きているだけの女性だ。

光代も含めてコミュニケーションの手段は携帯電話の出会い系サイトだけ。自分の話を誰かに聞いてもらいたいと渇望していても聞いてくれる人がいない寂しさ。そして「寂しいということがどういうものなのか分っていない」若者たちである。そんな寂しさを経験したことのなかった私ではあるが、あまりにも寂しいと、いたたまれなくなるようにその寂しさを実感させられた。知らない世界だがそこに入り込んだ気分にさせてくれる、それが名作を読む醍醐味である。
寂しい、だから自分の話を聞いてくれる人・光代に巡りあった彼の喜びは大きかった。………とストーリーは展開していく。最近の「純愛」にはいろいろあるが携帯小説や軽口の「純愛劇画」とはまるで違う。これはいい歳をした大人が読んで目頭を熱くする本物の純愛小説でもある。

「大切な人、それはその人の幸せな様子を思うだけで自分までうれしくなってくるような人たい」。
それが親子であり夫婦であり家族であり、恋人であり友人であって、大切な人を大切にすることのできるかどうかで人間の本物の値打ちがわかるのだと私には思えるのだ。ところが
「今の世の中、大切な人がおらん人間が多すぎるったい。大切な人がおらん人間は………失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっちょる。自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を馬鹿にした目で眺めとる。本当はそれじゃ駄目とよ」。
殺害された娘の父親の慟哭である。この一言に込められた著者の存念の深いところに私は身震いを感じた。

地方経済の衰退、老人介護問題、老人相手のインチキ商法、マスコミ報道の無責任なども盛り込んでそれらが散漫にならずテーマにしっかりと組み込まれている。私は著者のデビュー作である『パーク・ライフ』の人物像には存在感を感じなかったものだが、キャッチコピーの「デビュー10年にして到達した著者の最高傑作!!」は掛け値なしにその通りだと思う。

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紙の本

李相日監督映画化原作

2018/05/25 04:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

複数の視点から映し出されていく事件の真相が印象深かったです。善悪二元論では捉え切れない、人間の心の不確かさが伝わってきました。

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紙の本

善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや

2008/04/26 00:33

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:つきこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

寂しいとはそういうことなのだろうが、誰かに何かをして欲しい登場人物がいっぱいで、どうしてそんなに寂しいのだろうと本当に寂しく思う。何かをして欲しい人がいっぱいのなか、明確にその期待に応えた人物がたどる運命がとても哀しい。本書は出会い系サイトがきっかけで起こる殺人を描いた群像劇。多数の人の証言から浮かび上がる、家族もあり、仕事もあり、決して周囲と断絶しているとも言えないにもかかわらず、堕ちてゆく人の姿がやるせない。

読了後、誰もが善と悪とに思いを馳せるようなこの物語、「悪人」という題名がとても意味深だ。この小説には悪人が登場しないという評を読んだが、そうだろうか。自分を省みることも高めることもなく他人を頼み、あげくに全ては誰かのせいで他人を奈落の底に突き落とすのは、環境だけの罪なのだろうか。普通の人なのだろうか。そこに手放しの共感は抱けない。けれど個人ではどうしようもないことがあることも知っている。そんな時、誰でも簡単お手軽コミュニケーションツールやシステムが、広い世界ではなくより深い孤独への入口となり得ることを本書は教えてくれる。

極限の形をとらなければ、何ものも知ることができない。そんな人たちを描いたこの作品に、感動と呼ぶにはもっと納まりの悪い、釈然としない気持ちでいっぱいになる。大きなカタルシスに浸るだけでなく、胸に爪を立てるような後味の悪さこそを、良さと評価したい。

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2007/11/28 12:47

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2007/04/28 15:16

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2007/05/03 19:54

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2007/05/26 18:01

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2008/02/11 16:18

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