紙の本
市場の可能性を考える
2009/05/06 16:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:simplegg - この投稿者のレビュー一覧を見る
2007年3月に亡くなられた,スタンフォード大学教授ジョン・マクラミン氏の著作.この本が日本で出版されたのも2007年3月である.
これまで読んだ,経済学関連の本では,間違いなく一番面白いものだったし,一番有益だったきがする.(まぁそんなにたくさんの本は読んでいないけど)
市場原理には,無知ながら反発していたが,そんな自分に市場の可能性を,興味を引き起こしてくれるのには十分すぎるくらいの本だった.
この本は,市場,市場設計に関して経済学の最先端の理論(主にゲーム理論)を駆使して,網羅的に書かれものであるが,数式は一切使われていない.それでいて,市場設計の入門的教科書と思えるくらいにしっかりとした内容である.説明に使われる事例も,多種多様で,わかりやすく共感を持てた.
市場は適切に設計されているときは,アダム・スミスのいったような「神の見えざる手」のように,驚くべき効果を社会にもたらす.
ただし,“適切に”設計されればというように,万能ではないし,複雑さは市場設計の困難さを増加させる.
市場設計においては,人々のインセンティブをしかるべき方向へもっていく必要が生じる(ねずみをおびき寄せたいなら,チーズをおとりにする).インセンティブの経済学の話になると,人々の行動は,金銭的なインセンティブによってしかもたらされないのかという,嫌悪に満ちた反論があがることがある.これは分かる気もするが,少し的外れな反論だろう.
「新しい制度設計において,公共心や道徳心に満ち溢れたいわば理想的な人間像でなければ,機能しないような,方式を構想することは誤りである.」と何かの本で読んだ気がするが,市場設計においてもまさにその通りで,人々の道徳心に依存するようなものではいけないのである.
紙の本
稀な良書
2015/09/30 18:06
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投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミクロ経済学や応用経済学を学んで数式と図式で問題の答えを解けるようになってもなんかいまひとつなのである。
公務員試験問題も高校時代からの数学の練習問題みたいなもので解けても、まるでストンと落ちない。市場がわかるとはどういうことのんだろうか。
多くの本を狩猟のごとくあさってもである。稀にであえるそのうちの一書がこの本である。市場を創るとはどういうことなんだろうか。少し設計主義の匂いもあるけど、実際どう考えて作るのかを読んでわかるように書いてあるのだ。
この読んでわかるのが稀有なのである。それをマクミラン教授はできる稀な方である。
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市場と市場設計についての洗練された啓蒙書。
従来の教科書にない先端の市場設計をメインにというよりは、それに触れつつ、現在の経済学の知見を参照した、ずっと市場について語られてきたことがメイン。
情報や財産権、信頼、競争の大切さなどを各国の豊富な例を挙げて解説。読んでてとても楽しい。
内容は星5つだけど、値段が高いので4つに。
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色々な企業のケースがいっぱい出てきて
主に市場設計の工程を見ているものだったのだけれど
あまりピンと来るものが無かった。
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■目次
唯一の自然な経済
知性の勝利
地獄の沙汰も金次第
情報は自由を求めている
正直は最善の策
最高札の値付け人へ
サァ、いくらで買う!
自分のために働くときには
特許という困惑
なんびとも孤島にあらず
公衆に対する陰謀
草の根の努力
他人のお金を管理する人々
競争の新時代
空気を求めて
貧困撲滅の戦士たち
市場の命令
■レビュー
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市場は規制や支援によっていくらでも変化する性質のものでもある。だから、制度設計次第で市場参加者の行動は変わるし、その結果実現する効用の程度も変化する。じゃあ、市場がもっとも効率的に駆動するための制度はどんなものなのか、どんな条件をそろえたら市場の効用が高まるのかを追求するのがメカニズム・デザイン論。現実にも、周波数オークションや学校選択制度などに応用されています。
メカニズム・デザイン論自体は、情報の経済学やゲーム理論などの応用ミクロの分野を行動に応用した理論なので極めてテクニカルで抽象的なものなのですが、本書では数式は一切出てきませんし、イメージしやすい例題をもとにやさしく解説しているので経済学の素地のない人にも楽しめます。とはいえ、メカニズム・デザインの大御所の著書なので内容はとても充実。
効率的な市場を実現する要素はいろいろあるのですが、やはり情報の流通が重要な概念になるのだと思います。あらゆる業界が専門化、細分化されればされるほど、特定の情報は特定の参加者に偏在し、情報の非対称性は増幅される。そんな状況がプリンシパル?エージェント問題や逆選択が起こりやすくする、やがては市場取引自体を収縮させていく。
一方で、合理的な意思決定が行えるだけの情報が適切に流通されるのであれば、価格は適正な水準に調整され、より効率的な取引が実現される可能正が高い。もちろん、これだけでそのまま効率的な市場が実現されるわけではないけれど、情報の非対称性が効率的な取引を阻害しているよりは、望ましい状況が実現されることが考えられる。
制度設計と言えば大げさですが、たとえば人事制度をよりよい職務・待遇を求める従業員と有能な人材を求める各部門とが参加する市場と捉えれば、メカニズム・デザインを応用することが可能かもしれません。メカニズム・デザイン論自体まだ歴史が浅く、日本語で読める文献はごくわずかですが、これから新しい理論がどんどん生み出されて、どんどん現実に応用されていきそうな分野ですから、基本的な理論くらいはおさえておきたいところですね。
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[ 内容 ]
「市場」はどのように「設計」されてきたか、あなたの側にある、その成功と失敗。
教科書が教えない「市場」の原理。
新しい時代の経済学入門。
[ 目次 ]
唯一の自然な経済
知性の勝利
地獄の沙汰も金次第
情報は自由を求めている
正直は最善の策
最高札の値付け人へ
サァ、いくらで買う!
自分のために働くときには
特許という困惑
なんびとも孤島にあらず
公衆に対する陰謀
草の根の努力
他人のお金を管理する人々
競争の新時代
空気を求めて
貧困撲滅の戦士たち
市場の命令
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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「市場原理主義」に反対する人々は、市場の反対物は直接規制だと思い込んでいるが、経済学は市場をコントロールする技術を開発してきたのである。本書は、そういう制度設計の考え方をやさしく説いている。
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マーケット・デザイン、メカニズム・デザインの分野の研究をするにあたって、固い理論の本読むよりは読み物の方が面白いだろう、と思って購入。
「市場システムはそれ自体が目的なのではなく、生活水準を引き上げるための不完全な手段の一つである。市場は魔法ではないし、非道徳的なものでもない。市場は目覚ましい成果を生み出してきた一方で、うまく機能しないこともありうる。特定の市場がうまく機能するかどうかは、その設計にかかっているのである。」(第17章より)
うまく機能する市場を設計するにおいて、持つべき5つの重要だが基本的な特徴は、
・情報が円滑に流れること
・人々が約束を守ると信頼することができること
・財産権が保護されているが、過度に保護されていないこと
・第三者に対する副作用が抑制されていること
・競争が促進されていること
「ヤバい経済学」以後「インセンティブ」という言葉にはかなり気を遣うようになったし、進化経済学とか制度設計にもかなり最近興味がある中で、この本は自分の興味関心分野にかなり合った本だった。
制度設計の成功事例・失敗事例が豊富に含まれているし、学術的な参考文献もしっかり記載されているので、もう一回読む価値のある本。
例えば第14章の、カリフォルニア州における電力市場の規制緩和の失敗事例は、まさに今から日本の送発分離の話にドンピシャだし、第15章の経済改革に関するニュージーランドの成功事例、ロシアの失敗事例、中国の成功事例は、日本の今後の長期的な構造改革にあたって大事なケーススタディになっていると思う。
他にも、海洋市場の設計の事例とか、面白い事例はたくさんあった。
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メカニズムデザインの専門家による経済学で行われてる研究がどのように社会に貢献しているのかわかる良書。経済学者としての姿勢も示されており、経済学を学ぶものとしても考えさせられる。
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"市場"を考える本。市場経済についての新たな知見を与えてくれると同時に、潜在していた考えを言語化できた。市場に対する認識が改まった。
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経済学、特にミクロ経済学は抽象的であるが故に机上の空論だと誤解されがちである。この本はそういった誤解を解いてくれる。
現実世界に経済学が息づいていることを、数式を一切用いずに示している良書。
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流し読みする分にはとても面白い本である。
だが訳書で、ページ数も多いため、かなり読むのに苦労する。
市場設計をいかにすればよいかということが書かれている。
経済学に関心を持っている人に読んでほしい一冊である。
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市場及び市場設計に係る本。古今東西の成功・失敗してきた市場を例にとり、現代経済における市場においては、市場を如何に上手く機能させるかが一番実用的に重要な問題であり、市場抑圧や市場原理主義といった極論は意味が無いこと、また現在の市場主義は、他の方法よりもベターではあるがベストではないことを示している。
上で述べたことは基本的なことではあるが、「市場」に関する一番重要な「土台認識」を作るため、この本を読むのは非常に良いと思う。
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訳者あとがきにもあるように、テレビで自称有識者がいう「市場原理主義」批判が以下に底の浅いものであるかが、本書を読むとよく分かる。
なんでもかんでも市場が悪いとか、またはその逆に市場は万能だとか言うのではなく、重要なのはいかに適切に市場を設計するのかを考えることなのだ。
テレビの低劣な番組を見るよりも、本書を一冊読んだほうがいい。