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紙の本
花嫁は薔薇に散らされる (キャラ文庫)
著者 佐々木 禎子 (著)
「今から君を私の花嫁として雇いたい」—アメリカに拠点を置く大企業の御曹司・理人から、逃げた花嫁の身代わりを依頼された、なんでも屋の美咲。誰もがかしずく精悍な美貌と経済力を...
花嫁は薔薇に散らされる (キャラ文庫)
花嫁は薔薇に散らされる
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商品説明
「今から君を私の花嫁として雇いたい」—アメリカに拠点を置く大企業の御曹司・理人から、逃げた花嫁の身代わりを依頼された、なんでも屋の美咲。誰もがかしずく精悍な美貌と経済力を併せ持ち、他人に命令を下すのに慣れた理人は、なんとNYにいる祖父のもとに美咲を連れていくと告げてきた!!しかも「花嫁の初々しさを演技指導してやろう」と初日から無理やり抱いてきて…。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
計算高い人間が偽装結婚に失敗するかどうかという問題はさておき
2007/04/20 17:43
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「なんでも屋」の美咲は、これから教会で式を挙げようとしている男性に花束とメッセージを届けるだけにしては、妙に報酬の高額な仕事を引き受けます。
ところが美咲が運んだ花束の送り主は、当日式を挙げる予定だった女性で、メッセージの内容は結婚のドタキャンを伝えるものでした。
いつまでも来ない花嫁を待っていた新郎の理人は、その場を取り繕うために、美咲に臨時の花嫁代行をしないかと持ちかけ、強引に押し切って承諾させてしまいます。
ウェディングドレスを着せられて初対面の理人と式を挙げてしまった美咲は、さらに「嫁」としてアメリカ在住の理人の祖父に面会する仕事を依頼され、なし崩し的に承諾。
情に薄く傲慢で計算高い理人は、アメリカ在住の祖父の過干渉と縁談責めをかわすための偽装結婚をする計画を立てていて、実のところ、ドタキャンした花嫁も、お互いに納得づくの偽装要員だったのでした。
仕事として「嫁」役を引き受けた美咲は、演技を成功させるために理人の生い立ちや家族に関する話を詳しく聞くのですが、そこから浮かび上がってくる寒々とした家族関係、特に祖父との間の確執に心を痛め、理人への仕事を越えた感情が育つに及んで、自分に出来ることはないかと考えるようになります。
理人の祖父という人物は、家族を失ったトラウマで人間不信のド偏屈となってしまった大富豪で、実のところ基本的性格が理人にそっくりなのですが、お互いに相手への愛情を素直に出す方法を知らず、計算尽くで駆け引きすることに終始するため、関係はこじれるばかりです。
このどうしようもなくねじ曲がっている祖父と孫は、人情豊かで誰からも愛される素直な「嫁」と出会ったことで、真っ当な人間味を取り戻していくことになります。
…などと説明すると、どことなく、バーネット作の「小公子」を彷彿とさせるような、道徳的感動大作風のお話のように思えてきます。老人は孫の両親である息子夫婦を事故で失い、「嫁」のほうも母に死なれて施設で育った天涯孤独の身の上で、人のために働くことに生き甲斐を感じている…なんていうところも、「小公子」のセドリックと祖父の境遇に、ちらほらとかぶっています。
けれどもこれはBL作品。老人の人間不信の元凶である元妻は不倫で出奔しているし、「孫の嫁」であるところの美咲はゆきずりの成人男子で、愛情のかけらもない偽装結婚で結ばれているにもかかわらず、「演技指導」と称する理人によって、強引に夫婦関係を結ばされてしまったり…。このあたりで、バーネット作品とは完全な異次元に入り込んでいます。でも読後、かつて無邪気だった子供のころに「小公子」を読んだ時と近い感動がわいて出ました。
蛇足ですが、作中の理人のように頭のいい人物が、恋愛や結婚を計算尽くで有利にコントロールしようとして大失敗する事例は、現実世界でも結構多いように見受けます。本当に賢い人間は、本心をさらして相手と向き合うタイミングを間違えないものだと思います。そういうことをちゃんと「教えて」くれるBL小説って、結構凄い……ような気がします。