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アグネス・ラムのいた時代 (中公新書ラクレ)
グラビア・アイドルたちが次々と誕生した1970〜80年代。アグネス・ラム、アグネス・チャンから吉田拓郎、泉谷しげる、キャンディーズまで、昭和のアイドル産業の輝きをお宝写真...
アグネス・ラムのいた時代 (中公新書ラクレ)
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商品説明
グラビア・アイドルたちが次々と誕生した1970〜80年代。アグネス・ラム、アグネス・チャンから吉田拓郎、泉谷しげる、キャンディーズまで、昭和のアイドル産業の輝きをお宝写真満載で綴る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
長友 健二
- 略歴
- 〈長友健二〉1932〜2006年。宮崎県生まれ。写真家。アイドルグラビア、ビデオ演出・撮影等で活躍。
〈長田美穂〉1967年奈良県生まれ。フリーライター。著書に「問題少女」他。
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もう一度あの場所へ
2008/06/24 11:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過日、時の防衛大臣が一九七〇年代後半のアイドルグループ「キャンディーズ」のさよならコンサートから三十年を記念した「大同窓会」に「駆けつけたいくらい」と発言して物議を醸した。大臣たるものアイドルごときに、ということなのだろうが、書評子はすごく好感をもてた。大臣は書評子より二歳ほど若いが、「キャンディーズ」というアイドルを共有することで、同時代を生きてきたという「同級生」的は思いである。それは大臣のことですから、日夜日本の防衛はどうあるべきかを考えているはずだけど、「同級生」だったとしたら、あまり突拍子もないことを思うはずもないだろうと安心している。むしろ、もしかして大臣は「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長にあこがれているんじゃないかと変な心配をしたりして。
アイドルがアルドルになるためにはいくつもの要素がある。プロダクションとしての営業戦略、レコード会社(あるいは雑誌社)の嗅覚、周辺の人々の同一化、等々。本書の「聞き書き」の対象となった、<大衆写真家>長友健二の仕事もその一つだろう。被写体としてのアイドルをどう撮るか、それ次第でアイドルの売れ行きが左右される。そう、アイドルとは商品なのだ。つまり、アイドルをとりまく周辺の人々は、その価値をどう上げていくかに深く関与する人々なのだ。だから、その商品価値がなくなれば淘汰されていく。アイドル自身の個性はそこでは優先されない世界だ。(本書の中で映画黄金時代のスターとの交流をまとめた章があるが、その時代ではスターの個性は尊重されている。つまりアイドルとは映画からTVへと移行するにあわせて登場した産物といえる。そして、TVが発信する情報の速度がアイドルの賞味期限を短くしていった構造が垣間見える)
そのアイドルを、例えば本書の表題となった「アグネス・ラム」や「キャンディーズ」のように同時代のキイワードとして共有できるのはどういうことか。かつて大宅壮一が「一億総白痴化」という言葉を生み出したように、TVはその量においても圧倒的な力を発揮してきたことの証明だろう。だから、鳥取県にいた防衛大臣であろうと大阪の郊外にいた書評子であろうと、同じアイドルを共有できることになる。そのようなTVの力に相乗りをするような形で雑誌のグラビアも、アイドルをアイドル化していく役目を担っていく。それは録画媒体をもたなかった時代の、重要なアイテムでもあった。あの時代の少年たちの部屋にどれだけ多くの「アグネス・ラム」たちがいたことか。
<大衆写真家>長友健二は、写真家としてどう評価されていくかわからないが、少なくともあの時代を明確に写し取った一人であるには違いない。「キャンディーズ」の「大同窓会」の招待状ともいえる新聞広告にこんな表現があった。「もういちどあの場所へ。もういちどあの気持ちで。ただ時が過ぎたのではない。そのことを証明しよう」私たちがあの場所に戻るために、長友の撮ったグラビアは大いに必要とされるだろう。そして、それこそが<大衆写真家>長友健二の勲章である。