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紙の本
スロウハイツの神様 下 (講談社ノベルス)
著者 辻村 深月 (著)
『スロウハイツ』二〇二号室。そこには、わたしたちの神様が住んでいる。人気作家チヨダ・コーキが暮らす『スロウハイツ』の住人たちは、平和な日々を送っていた。新たな入居者、加々...
スロウハイツの神様 下 (講談社ノベルス)
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商品説明
『スロウハイツ』二〇二号室。そこには、わたしたちの神様が住んでいる。人気作家チヨダ・コーキが暮らす『スロウハイツ』の住人たちは、平和な日々を送っていた。新たな入居者、加々美莉々亜がくるまでは—。コーキに急接近する莉々亜の存在が、不穏な空気を漂わせるなか、突如判明した驚愕の事実。赤羽環のプライドを脅かすこの事件は、どんな結末を迎えるのか…。環を中心とした『スロウハイツ』の環は、激しい衝突と優しい修復を繰り返しながら、それでもゆっくりと着実に自分たちなりの円を描いていく。未成熟な卵たちが、ここを巣立つ時とは。【「BOOK」データベースの商品解説】
人気作家チヨダ・コーキが暮らす「スロウハイツ」の住人たちは、平和な日々を送っていた。新たな入居者・加々美莉々亜がくるまでは。コーキに急接近する莉々亜の存在が、不穏な空気を漂わせる…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
辻村 深月
- 略歴
- 〈辻村深月〉1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業。「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞しデビュー。
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紙の本
HOMESWEETHOME
2007/03/24 10:43
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人気作家(コウちゃん)の小説に影響を受けて起こったネット集団自殺。彼の作品とブランドは見事復活を果たしたが、その影には一人の女の子からの励ましの手紙があり、その「コウちゃんの天使」は現れることはなかった。 時は流れて、強く脆く優しい不器用な環を中心に、アーティストの卵たちが自分の可能性と限界に苦悩しながら切磋琢磨しながらスロウハイツで時を過ごす。環が何者か、というのは薄々わかることだけど、彼女自身の人生描写と、たまらないほどの不幸とそれでも生きる懸命さ、読んでいるコッチが苦しくなる。
人間として人と人とが関係していく中で、心が崩れ、何かが崩壊し、切りつけられる痛みの中で大切なものを失くしてしまう。ことに大切な人がいればこそなおのこと、だ。
その時、もう一度再生するために、それでも生きていくために、自分のために、自分の大切な人のために、自分の大好きな人が幸せであって欲しいために、笑っていて欲しいために、
たとえそれが自分やごく一部のエゴであっても一生懸命に想う事が出来る。そして、許す事が出来る。その人のために、自分のために・・・それが結局、愛なんだって。そんなこっぱずかしいことをいうのもなんだが、それでもそこに辿り付ける。
それを確認させてくれたたまらなく嬉しい作品だった。
友人として、同士として、恋人として、どれもこれも中途半端なスロウハイツの卵たちと「神様」が傷ついたりボロボロになりながらも一生懸命生きている。そんなスロウハイツがきっと誰にでもあるのだと信じたい。
紙の本
苦しくてやさしい、現代のおとぎ話
2009/06/15 21:12
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
(あらすじ)
新進気鋭の脚本家・赤羽環は、譲りうけた一軒家を友人たちに格安で貸し、共同生活を始める。
ある事件のために筆を折り、その後再起を果たした人気作家チヨダ・コーキに、彼のマネージメントを一手に引き受ける編集者黒木、漫画家を目指す狩野、映画監督になりたい正義、正義の彼女で画家の卵である森永すみれ、環の親友である円屋。
まるでトキワ荘のようだと笑いをかわして始まるスロウハイツでの日々の辿りつく先は――?
若いクリエーターたち(またはその卵)が共に暮らすスロウハイツでの日々を、それぞれの視点を借りながら丁寧に追っていくお話。
『凍りのくじら』でも思ったけれど、この著者は本が大好きなんだろうなあ。本好きな人ならきっと共感できる、本が人に生きる糧を与えるという感覚をとても上手に描いています。
クリエーターを目指すだけあって(いやそれともクリエーターに限らず人は誰でも)、それぞれがそれぞれに抱える事情や想いがあって、それは時にぶつかり、焦燥に駆られ、衝突し、軋轢が生まれ、やさしい修復をくりかえし、「ゆっくりと、丁寧に、時間をかけて」送られる日々は、ここで暮らした人たちへの文字通りの贈り物だったのかもしれません。
登場人物たちの年齢設定によるのか、お話によるのか、デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』や『太陽の座る場所』ほどには自意識過剰ではなく、淡々と、けれど丁寧に掘り下げられていく人物描写も読んでいて心地よかったです。
それに環が幸せいっぱいとは到底言い難い人生の中で出会ってきた人たち、図書館司書のお姉さんや、駅員のおじいさんらの存在もよかったです。描写も最小限で、けれどこんな風に小さなさり気ない好意とも言えないくらいの好意が降り積もって、人を生かすんだと思わせてくれる。それを如実に感じさせてくれたのが最終章の「二十代の千代田光輝は死にたかった」でした。
作品の中には出てこなかった、そんな小さな小さな本人には見えないところで動かされる気持ちが、きっとそれぞれ他の人生の中にも存在しただろうし、私たちの人生の影にもあっただろうと思える。それはちょっとばかり切なくも心温まり、泣けることです。